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「リーダーは企業変革を主導しコアビジネスは社員へ託す」―石黒不二代(ネットイヤー グループ社長)

石黒不二代氏(ネットイヤー グループ社長)

外資系企業にいるさばけた女性リーダーの空気感をまとうのは、デジタルマーケティングを手掛けるネットイヤーグループの石黒不二代社長だ。その石黒社長が考えるリーダーシップとは、「企業が変革するための仕掛けを考え、仕組みを作ること」。2019年にネットイヤーグループとNTTデータが資本業務提携した背景には、デジタルマーケティング業界の成長に向けた変革の必要性があったという。聞き手=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2020年3月号より転載

石黒不二代氏プロフィール

石黒不二代(ネットイヤー グループ社長)

いしぐろ・ふじよ 愛知県出身。名古屋大学経済学部卒業後、ブラザー工業、スワロフスキージャパンを経て、米スタンフォード大学ビジネススクールに留学。MBA取得後はシリコンバレーでコンサルティング会社を起業、1999年にネットイヤーグループのMBO創業に参画し、2000年から現職。経済産業省・産業構造審議会委員などの公職も務めている。

女性リーダーの現状に対する石黒不二代氏の考え

女性の意識変革も重要

―― 石黒社長は1999年からネットイヤーグループを率いており、女性リーダーの先駆的な存在です。日本の女性リーダーの現状についてどう考えていますか。

石黒 企業の役員や管理職の30%ほどを女性にしようとする動きがありますが、私は女性に下駄をはかせてリーダーにすることを推奨するよりも、まずは女性が自らの意識を変えること、もう一段上に行く女性が増えることを希望しています。

 日本女性の社会進出は増えてきましたが、トップとなると急に少なくなります。学生時代までは男性も女性もすごく平等に競争しているにもかかわらず、学校を出て、いざ仕事をする段になると、なぜかそれまでとは状況が変わってしまう。

 雇用の現場では、確かに女性に対する差別はありましたが、それだけではなく女性側の遠慮もあったと思います。女性の責任というか、意識の責任もあるのではないでしょうか。

 女性も遠慮しないで、もっと自信を持てばいい。産業界は相変わらず男性が主役です。しかしどんな分野であっても、自分が得意で好きなことであれば、堂々とリーダーシップをとっていけばいいんです。

お茶くみも通常業務もこなした新入社員時代

―― 石黒社長は、社長になる前から自信を持って発言されていたのでしょうか。

石黒 自分で「自信を持つ」と言ってしまうと、やや偉そうで語弊があるかもしれませんが、そうですね。

 私が大学を卒業した頃は、ほとんどの企業は四大卒の女性を採用していませんでしたので、就職活動はせずに大学卒業後はアルバイトをしました。8カ月間アルバイトをした後に入ったブラザー工業は、純粋な日本企業ではありましたが、売り上げの大半が海外市場でした。

 ですから上司はみんな海外経験者で、開かれたマインドの人が多かったということもあり、あるいは私が言いたいことを言っていたからかもしれませんが、高く評価してくれていました。

 当時はお茶くみなんかもしていましたね。面倒だなと思いながらも、他の業務も男性社員と同じようにやらせてくれたので、その中で普通に仕事をしていただけです。

―― 普通の業務に加えて、お茶くみもしていたとは。やることが多いですね。

石黒 でもやっていましたよ(笑)。中途ではありましたが、四大卒の女性は私が初めての採用でしたので、人事部としても私をどう扱えばいいのか分からなかったようです。 短大卒の女性の先輩と一緒にお茶くみとか始業前の机拭きとかをしながら、男性に交じって普通の業務もしていました。でもそれもいいのではないでしょうか。それほど時間もかかりませんし、きれいになって気持ちいいですし。

石黒不二代氏のリーダーシップのスタイルとは

NTTデータとの資本提携で目指すデジマ業界の変革

―― 石黒社長が考えるリーダーシップとはどのようなものですか。

石黒 「自分たちの事業を伸ばしていく仕掛けを考えること」がリーダーの重要な役割だと思っています。普段のオペレーション、コアビジネスの成長は社員に任せていますが、企業が変革していくための仕掛けを考え、どんな仕組みを作っていくかは、まさにリーダーシップです。

―― ネットイヤーグループは2019年2月にNTTデータとの資本業務提携を発表し、TOB(株式公開買い付け)を経てNTTデータの傘下に入っています。この提携も企業変革のためのものですか。

石黒 そうですね。この資本業務提携の背景には、もう10年以上前から思い描いてきた、「デジタルマーケティング業界を統合していかなければならない」「この業界を変革する必要がある」という考えがあります。

 デジタルマーケティング業界には小さな会社が多く存在しています。弊社の売上高は年60億円前後、それほど大きな会社でもありませんが、それでも業界の中では大きいといえるくらい本当に小規模な会社ばかりです。

 提供するサービスも非常に細分化されていて、ウェブサイトのSEO対策やバナー広告、リスティング広告の他にも、eメールマーケティング、SNSマーケティング、アプリやPOSデータの活用など多岐にわたります。お客さまにとっても分かりにくく、すべてを理解したうえでベンダー選定や予算配分するのは非常に難しい状況です。

 業界を良くしていくためにも、絶対に統合するべきだと考えていました。今回の提携は、私たちの会社、そしてデジタルマーケティング業界を変革させていくための判断です。

大きな決断は長い間考えてフレームワークで整理する

―― 今後はどのような取り組みを進めていこうと考えていますか。

石黒 これからは、これまで提供してきたサービスを含めて、お客さまの経営・マーケティング・ITを横断した包括的なデジタルマーケティングサービスを提供できる、国内トップクラスの企業集団を目指します。

 NTTデータとは、流通・小売りの分野を中心に、プロジェクトを動かしていこうと話し合っています。この分野ではPOSデータも重要になります。私たちはウェブやデジタルのデータは扱えても、POSデータを扱う仕事はできませんでしたが、そこは反対にNTTデータの領域であり、そこでのシナジーも出せるはずです。

 また、デジタルマーケティングの一つ一つの案件規模はどんどん大きくなってきていますが、私たちの体力には限界があります。そこはNTTデータの協力を得ながら進めていければと考えています。

―― NTTデータとの提携では、リスクも考慮されましたか。

石黒 NTTデータは、60億円前後の私たちネットイヤーグループと比較して非常に大きな2兆円企業で、公共や金融の分野に強く、とても真面目で愚直、きっちりと仕事をする企業文化を持っています。

 そういう会社と一緒に仕事をすると、意思決定やプロジェクトのスピードが遅くなるというリスクがありました。しかし10年以上この業界をウオッチしてきて、私たちの成長速度や成長サイクル、力量なども見ながら、統合するべきだなと判断しました。

―― 大きな決断をする時、石黒社長はどのように心を決めているのでしょうか。

石黒 経営には本当に多くの変数があります。変数が多過ぎるから、みんな迷います。私も迷います。でもそういう時はシンプルに、ビジネススクールで学んだようなフレームワーク、つまり基本に戻るしかないと思っています。

 また、すぐには決断せずに、時間をかけて考えるようにしています。1回考えて、もう1回考えて、そしてもう1回考えて……。最後に「一番大事なのはこれだな」となれば、こういう時に適しているフレームワークはこれだから、これに従って物事を進めようと決断します。

社内はフラットな関係で「社長」とは呼ばせない

―― 社員の皆さんとはどのような関係を築いていますか。

石黒 社内は割とフラットな関係です。社員には「社長とは呼ばないように」と言っています。「石黒さん」「不二代さん」とか、あとは創業時からいる社員からは「不二代」と呼ばれたりもします。

 私のデスクがある部屋はいわゆる社長室のように見えるかもしれませんが、私の部屋だと決めているわけではありません。私がコンフィデンシャル情報を電話で話すこともあり、危険だからと言うことで囲われたという感じです。でも囲われるのもあまり好きではありませんので、透明な壁にして、外からも中からもお互いが見えるようにしています。

 また、この部屋の中には打ち合わせできるテーブルがありますが、社員がいつの間にかここで打ち合わせをしたりしていて、私が部屋に入りづらいなんてこともあります(笑)。

―― これから社員の皆さまと、どんな組織を目指しますか。

石黒 デジタルマーケティング業界は、変化のスピードがとても速いですので、企業としてもどんどん変わっていかなければなりません。成功体験にしがみつかずに、自ら変わっていく組織でありたいです。

 新しい知識を求め、理解し、次のステップにいくような人たちが集まれば、企業はどんどん活性化し、サステイナブルカンパニーになります。それが世界を変えていくんだという意識を、社員とともに持ち続けたいと考えています。

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