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「個々の社員が持つ力を最大限に引き出したい」―戸田泰子(理化電子社長)

戸田泰子氏(理化電子社長)

2020年に設立60周年を迎える理化電子の戸田泰子社長は、27歳だった15年に父から同社を引き継ぎ、それから約5年がたった。半導体検査装置などの製造・販売を手掛ける同社の年間売上規模は10億円超、約120人の社員を抱えている。その組織の若きリーダーとして、戸田社長はどのような信念を持っているのだろうか。聞き手=唐島明子 Photo=佐藤元樹(『経済界』2020年3月号より転載

戸田泰子氏プロフィール

戸田泰子 理化電子社長

とだ・やすこ 1987年生まれ、東京都出身。高校1年生の時に米国へ2年間留学。上智大学卒業後、PwCジャパンに入社しコンサルタント業務に従事。その後2013年に理化電子に入社、15年3月に社長に就任した。

戸田泰子氏が語るリーダーとしての信念

リーダーとしての振る舞いと課題

―― 27歳だった2015年に理化電子を継いで社長に就任し、それから4年たちました。リーダーとして何か変化したことはありますか。

戸田 就任当時からこれまで、社員が接しやすいように、私としてはフレンドリーで常に寄り添えるように振る舞ってきました。

 ですが、いつも社員目線で「そうですよね、大変ですよね」と言ってばかりでは組織にとって良くありません。あるミッションを与えられた社員が、そのミッションを達成できなかった時には、事情をくんで理解を示すよりも、できなかったという結果に対してある程度の厳しさを持って接することも必要なのではないかと。私は厳しくするのは全然得意ではないのですが、それが今の自分の課題です。

「老舗ベンチャー」に込めた思い

―― 社長に就任した頃、戸田社長は「『老舗ベンチャー』に生まれ変わりたい」と仰っていました。それは今も変わりませんか。

戸田 変わりませんね。老舗ベンチャーに込めた思いは、海外ではスタートアップが社会を揺るがす存在になっていますが、日本でそれと似た立ち位置になれるのは、中小企業だという考えにあります。

 日本の中小企業には、老舗として積み上げてきた技術力やサービスなど、信頼をともなう地盤があり、それは大きな強みです。さらに身動きがとりづらい大企業とは異なり、スタートアップのようにフットワーク軽く、早い意思決定ができる良さもあります。地盤を持つ日本の中小企業が、スタートアップのようにスピード感あふれる動き方ができれば、世の中を席巻できるはずです。

 今まで大企業の下請けをしていた中小企業が、そこから一歩踏み出し、自分たちの技術を生かして世界に挑戦するようになると、日本がまた活性化されると思います。

―― 老舗ベンチャーの考えは社員に浸透していますか。

戸田 新入社員については、ベンチャーマインドが強い人を多く採用していますが、既存社員の間では、恐らくまだまだですね。しかし、そこはあまり押し付けていません。

 私としては、既存社員は老舗の部分を守ってくれる人たちだと考えていますし、個人個人が目指したい姿や生き方を大事にしたいです。今のままで何の変化もなくていいという人もいますが、それはそれで毎日のルーティン作業をやってくれる大切な存在です。

 一方で新しいことにチャレンジしたい、変化したいという人に対しては、どうすれば実現できるか一緒に考えたい。組織は両方いてバランスが取れるものですから、いずれの存在も大切です。

―― それは社員の多様性を尊重することにもつながりそうです。

戸田 日本の学校教育は、みんなが同じようなスキルを身に付け、一定水準のレベルを担保するようなところがあります。しかしこれから世界で日本がプレゼンスを高めていくには、「個が持つ力をいかに生かすか」がキーワードになると思います。

 日本で言っている多様性は、性別、人種、LGBT、障害の有無のように、スペック的な側面が強いですよね。しかし真の意味での多様性は、スペック的な多様性では取り上げられない、いわゆるマジョリティに属するような人たちの中に存在する内的な多様性をどう引き上げ、それをどう容認し、どう応援するかを意味すると私はとらえています。

 経営者として、マジョリティに属するかもしれない個人が、今以上に輝く環境や仕組みを作っていきたいですね。

理化電子トップとして戸田泰子氏が目指すもの

―― 事業面では、今後どのような方向に導こうと考えていますか。

戸田 これからの世の中においては、何をするにおいてもボーダーレスだと思います。日本は島国であるため、国外に出ていくことについてハードルを高く感じることがありますが、それはとてももったいない。

 特に私たちが扱っている半導体の分野では、海外展開は必須ですし、海外でのプレゼンスをもっと上げていきたいです。国境の垣根がないような動き方が理想ですね。

―― 国内での取り組みはいかがですか。

戸田 私たちは現在、社員120人ほどのそれほど大きくない会社ではありますが、「社員の人たちが活躍しているよね」と言っていただけるような会社にしたいです。

 個人的には、日本人が持っているポテンシャル、魂に持っている力はとてつもなく大きいけれども、それが今は生かされていない状態だと感じています。理化電子の社員、そして日本人がもっと活躍できる世の中にできると考えていす。会社の枠を飛び越えてしまっているところがありますが、日本を元気にしたいという思いがとても強くあります。

 理化電子という会社のトップである立場を生かしつつ、起業しようとしている人の後押しをしたり、社会に対して何かゲームチェンジャー的なメッセージを発信していきたいです。

 また航空宇宙業界や福祉・医療業界など、国内のスタートアップ企業とは、いろいろとお話をさせていただいています。お金を入れるという形での関わり方は私たちの規模ではなかなか難しいですが、共同研究などで協力できればと。私自身はリーダーとしてはまだ成長過程ですが、模索しながら信念は変えずに進んでいきたいです。

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