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自治体に特化したサービスで強み エネルギー事業が好調―ホープ

ホープ社長兼CEO 時津孝康

自治体に特化したサービスで注目を集めるホープが、エネルギー事業で急成長している。将来はブランド力を生かし、地方公務員と直接つながり情報共有するプラットフォーム戦略も描いている。

ホープ社長兼CEO 時津孝康
ホープ社長兼CEO 時津孝康(ときつ・たかやす)

反対多数の中、決断したエネルギー事業が急伸

── エネルギー事業を中心に業績が好調です。

時津 自治体に特化した広告、エネルギー、メディアの3事業で、昨年度の売り上げは前期比3・7倍の約144億円、営業利益も10倍以上増えて10億円を超えました。中でも市町村に電力を小売りするエネルギー事業が好調で、昨年度は約100億円を売り上げ、3年後には約400億円を見込んでいます。市役所などに加えて、小中学校や市民病院といった市町村向けの電力小売り市場は1兆円規模とされ、売り上げ目標達成は十分可能と考えています。

── スタート時は社内で反対も多かったとか。

時津 2018年にある社員が「わが社で電力小売り事業ができるんじゃないか」と発案したとき、ほとんどの役員、幹部は反対し懐疑的でした。発電コストが安い電源を持つ大手電力会社やその関連会社に勝てるわけがない、やる意味があるのかと(笑)。私の信条は「反対の中にチャンスあり」です。反対がこれほど多いと逆に手応えを感じて、トップ判断としてゴーサインを出しました

── その後も困難が多かったとか。

時津 キャッシュフローが大変でした。電力の供給実績がないと自治体から保証金を求められるケースがあったり、日本卸電力取引所(JEPX)で電源を調達する際の預託金が必要だったりしました。

 入札に成功し、契約は取れたのにお金の準備ができない。普段はコミュニケーションが取れていると信じていた銀行が、リスクを嫌い、融資を渋るケースが相次ぎました。一方、事業内容や将来性を理解し、融資に協力してくれる銀行もあるなど、はっきり分かれました。危機を乗り越えられたのは当時融資してくれた担当者、銀行のおかげです。

── 自治体のエネルギー事業というと一般的に敷居が高いですよね。

時津 創業時より自治体に特化した仕事をしているので信用とブランド力があり、入札に呼んでもらいやすいのは強みです。新たな社員を採用して対応しているわけでなく、広告事業で働いていた社員をシフトして対応しています。加えて一般企業や家庭への営業ではなく限られた自治体に経営資源を集中できますから、コストを抑え価格勝負ができます。

 20年10月にエネルギー事業専門の子会社を設立しました。これから自治体もSDGsに配慮したクリーンなエネルギーを求めるトレンドが強まるでしょうが、一方で供給する電力全てをクリーンエネルギーで発電できる会社はなく、仮に誕生しても電力コストは高くなるでしょう。

 自治体はコスト削減を求められていますから、すぐさま全てをクリーンエネルギーに切り替えるとは考えにくい。ただ環境への配慮は求められていますから、今後はこの研究とともに、柔軟に対応できる組織が必要と判断して新会社を立ち上げました。

広告事業は利益追求メディア事業は拡大へ

── エネルギー事業と対照的に広告事業は苦戦した時期もありました。

時津 経営判断ミスです。18年度、売り上げこそ前期より増えましたが営業利益は上場以来初の赤字となりました。広告事業は自治体の広報紙などの空きスペースを広告枠として販売しますが、当時は大きな自治体をカバーできていたのに、多くの社員を採用し、小さな自治体の営業にまで踏み込みすぎました。「小さな池にクジラを投げ込んだ」わけです(笑)。

 さらに仕入れや営業といった機能別組織で拡大路線を走ってきましたが、セクショナリズムの弊害が目立つようになりました。そこで抜本的に組織を改編して事業部制を導入した結果、粗利益や販売管理費などを社員一人一人が意識するようになり、改善策の一つとして機能するようになりました。

── 自治体職員に直接情報を届けるメディア事業を強化していますね。

時津 他の自治体の情報を提供する無料情報誌『ジチタイワークス』の発行を17年に開始し、現在1788自治体に配布しています。官民連携の先進事例や情報発信方法などのコンテンツを充実させ、自治体と取引したい企業の広告を掲載しています。広告の中には公務員向けの婚活紹介会社などもあります。

 売り上げは現在、全体の1%ほどですが利益を求めていません。まずはこの存在を多くの自治体職員に知ってもらい、双方向の関係を構築したい。弊社と自治体、さらにその先にいる約332万人の職員とつながるプラットフォーマーになりたいんです。人口減少や財政難、コロナや地震・水害といった危機対応、厳しい環境の中で自治体職員が求める情報を把握し、民間の知恵や製品を結び付けて、両者が利益を得る仕組みを進化させたいと思っています。

無料情報誌『ジチタイワークス』
無料情報誌『ジチタイワークス』
会社概要
設立 2005年2月
資本金 3億1,514万円
売上高 144億700万円
所在地 福岡県福岡市中央区
従業員数 167人
事業内容 自治体に特化したサービスを展開
https://www.zaigenkakuho.com/