テクノロジー

安倍晋三首相の「携帯電話料金の高止まりが家計を圧迫している」という発言もあり、「格安スマホ」が注目されている。既に新規参入が相次ぎ、激戦の格安スマホ市場だが、日本のSIMフリーの先駆けであるコヴィアは“モノづくり”の姿勢を貫いている。 文=本誌編集委員/井上 博

日本で初めてSIMフリー端末を開発したコヴィア

アマゾンで人気のSIMフリー端末「covia CP-L42A」

アマゾンで人気のSIMフリー端末「covia CP-L42A」

 通信キャリアから通信回線を借り、格安な通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)各社は、SIMカードに低価格なSIMフリーのスマートフォンをセットで販売する「格安スマホ」に力を入れている。OCNやニフティなどのプロバイダーから、流通大手のイオン、ECサイト大手の楽天、レンタルビデオ大手CCCまで「格安スマホ」に参入している。

 この格安スマホの端末は中国のファーウェイ、ZTE、台湾のASUSなど海外の大手通信機器メーカーが多く、日本のメーカー、特に大手企業ほど出遅れている。その中で「covia」ブランドのスマホを開発、販売するコヴィアは、日本で初めてSIMフリー端末を開発、その先駆けとして知られている。

 「格安SIMは今やモバイル市場全体の3~5%を占めるまでになり、その受け皿となるSIMフリー端末の市場も拡大しています。キャリア3社が独占してきた日本市場が、海外の大手メーカーが世界で販売するSIMフリー端末の最小ロットの販売が見込める市場となってきたのです」と、コヴィアの神代敏彦社長は説明する。

 同社は、スマホのOS、アンドロイドのバージョン1・5に対応したSIMフリー端末を開発した実績を持ち、子ども向けタブレットのOEMメーカーとして大手玩具メーカーや玩具小売のプライベートブランドとして提供してきた。

 低価格なスマホやタブレットの多くは、モバイル機器の一大生産拠点である中国のシンセンで製造されるが、その品質は工場によって大きな違いがある。同社のような通信機器に精通したOEMメーカーが間に入らないと、品質に厳しい日本市場向けの商品としては難しい。

 「スマホやタブレットなどの通信機器は、総務省の技術基準適合証明(技適)がなければ国内では使用できません。技適は当然ですが、MVNO向けのSIMフリー端末を初めて開発した当時は、実際の通信網に乗せるために必要なテスト『IOT』(inter-operability testing)が通ることを求められました。このIOTが、海外製の低価格な端末が日本市場に参入する際の大きなハードルでした」

 同社は、IOTが通ったSIMフリー端末を開発する中で致命的ノウハウを蓄積し、信頼性の高い「covia」ブランドとして販路を拡大してきたのである。

荒れるSIMフリー市場の中で新しい販路を開拓する“モノづくり”の姿勢

「SIMフリー市場は、これから伸びていきます」と語る神代社長

「SIMフリー市場は、これから伸びていきます」と語る神代社長

 「IOTが通らなくても、技適を取得すれば販売できるのが今のSIMフリーです」と神代社長。そのせいか、ここにきてSIMフリー端末を販売するベンチャー企業のトラブルが出てきた。設立からたった2カ月で全17種24製品のデザイン家電を発売したと話題となったUPQが、先月発売したSIMフリー端末「UPQ Phone A01」に技適マークの番号に誤りがあり、全品回収が発表された。しかも技適の正式な認定を前に製造工場から出荷され、販売されていた。また、「freetel」(プラスワン・マーケティング)が発売したSIMフリーのガラケー「Simple」は発売3日で完売したが、非アンドロイドOS端末の未成熟さがユーザーを混乱させている。今やSIMフリー端末は、ニュースサイトを利用したマーケティングを重視しているようだ。

 「話題先行と取られがちなベンチャー企業ですが、当社の端末はスペックと価格のバランスのとれた非常に完成度の高いものになっています。このままマーケティングを強力に推し進めながらニーズに的確にあったSIMフリー端末の投入を続けていければ、市場はますます拡大すると期待しています。格安スマホユーザーにとって一番大切なことは使用目的によって端末を選ぶことだと思います。通話やメール、SNSのメッセンジャーだけであれば十分ですが、ネットワークゲームをストレスなく遊びたいとなると低価格のスマホでは難しいと思います。当社としては、通話品質やネット接続の安定性など通信機器として必要とされる品質を優先した端末を今後も発売してきます」

 今後、同社はアンドロイド端末を業務用にカスタマイズした製品の開発にも力を入れていく。それは今までのスマホやタブレットの開発の実績を生かした形でもある。

 「以前から、内線専用端末やハンディーターミナル、オーダー端末などにカスタマイズのニーズが多く、端末としての性能、WiFiなど通信環境も整ってきた今、業務用のカスタマイズの市場が大きくなっていくはずです」と神代社長。

 同社が本社を構える新横浜は、昔からIT、通信業界を支えてきたメーカーが多い場所、その“モノづくり”の姿勢はコヴィアにも引き継がれている。

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