
格差社会と向き合う日本人全体の課題
『あなたがもし残酷な100人の村の村人だと知ったら』(経済界)は、依然として売れ行き好調である。
最近の傾向としてうれしいのは、中学校などでのまとめ買いが入っていることだ。教育関係者に注目され始めている証左で、この傾向がもっと広まってほしいと思う。
私が子どもたちにもっと読んで貰いたいと思うのは、この本の後半において「これからの生き方」をテーマに編集しているからである。
第2部「これからは3つの資本で生きのびよ!」はまさにそれであり、その生き方の基本的考え方としてまとめたのが、附録「なぜこんな国になったのか?」である。言うまでもなく、ここでの読者対象は主に若い人たちだ。彼らには、この2つの章で私が言っていることに対して、真剣に議論してもらいたいのだ。
これからの日本、といったときに、いちばん子どもたちにとって問題となるのは、格差社会との向き合い方ということになるだろう。
日本の格差は、サラリーマン社会において顕著だという点に特徴がある。そこでの格差は、正規社員と非正規社員の甚だしい所得格差となって表れている。日本では働く人の8割強がサラリーマンだから、この状況は、ほぼすべての、働く日本人の問題だと言って過言ではない。
無一文になっても自分という財産がある
実は、正規社員も安泰な立場にあるわけではなく、サービス残業などの奴隷状態はいよいよ強まっていくし、リストラもいつあるかわからない状況にある。だから切迫した状況に置かれているのは、正規も非正規も変わりがない。
そういう日本で、どう生きたらいいのか。それへの回答が、第2部で語られている。
ここで私が反語的にテーマとして語っているのは、皆さんお金お金とうるさいが、人生で、お金はどこまで重要なのか、ということだ。お金探しよりも大切な生き方はないのか、という問いである。
所得の大きな違いによる格差社会も、正規社員も含めたサラリーマン社会の息苦しい状況も、畢竟するにお金と自分の関係に収れんするはずである。このことを現実的な生き方として、どう考えていくかであろう。
私は、第2部で、まず哲学者アランのこんな言葉を、冒頭に置いている。
「金儲けのうまい人は、無一文になっても、自分自身という財産を持っている」
ここで「金儲け」と「財産」が、対置的に使われていることに注意してほしい。
咲くべき場所をもう一度考えたい
金儲けは技術である。一方財産はストックだ。金儲けという技術に秀でている人も、技術であるからには失敗もあって無一文になることがあるが、それでも自分という財産は普遍だというわけである。
フローの価値である「金儲けの技術」よりも、不変の価値である「自分自身」を貴重なものとせよ、とアランは逆説的に語っているのだ。
そしてその自分自身を含めた「人間関係」。それを、お金よりも上位に置いて、生き方を考えよう。私が第2部で訴えているのは、これである。
とかく自分自身よりも、お金(儲け)を上位において生きていこうとするものだが、それは天地を逆にするような愚策だ。それが分かれば、この自分を(友人など人間関係とともに)活き活きとさせていく生き方に、自ずと目が向こうというものである。
正規・非正規を問わず、不遇な現状に悩んでいる人は、今の世界でお金を得ていくことが正解なのか、考えてみるがいい。置かれた場所で咲く、だけが自分の生き方なのか、ということだ。咲く場所を、もう一度考えるべき状況に今の日本はあるのではないか。
[今号の流儀]
お金より人間関係を上位におけば新しい生き方が見えてくる。
好評連載
年収1億円の流儀
一覧へ起業して得られる経験・ノウハウ・人脈は何ものにも代え難い。
[連載]年収1億円の流儀

[連載]年収1億円の流儀
なぜ両親との縁を切り、破天荒ともいうべき人材採用をしたのか。
[連載]年収1億円の流儀
人をうまく使うには、相手の立場に立つことだと16歳の身で悟った。
[連載]年収1億円の流儀
人生の成否はDNAで決まっている。要はDNAの使い方だ。
[年収1億円の流儀]
儲かるからではなく、「楽しいから」やる、と言い切れるか。
銀行交渉術の裏ワザ
一覧へ金利固定化の方法を知る
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)
定期的に銀行と接触を持つ方法
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)
メーン銀行との付き合い方
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)
金利引き上げの口実とその対処法
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)
融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける
元榮太一郎の企業法務教室
一覧へ社内メールの管理方法
[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)
タカタ事件に学ぶ 不祥事対応
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)
「ブラック企業」という評価の考察
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)
コミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)
女性の出産と雇用の問題
温故知新
一覧へ[連載] 温故知新
「もっと、利益の上がる業界にしていこう」
[連載] 温故知新
金持ちだけど下品な日本人――小山五郎×長岡實
[連載] 温故知新
忙しい時のほうが、諸事万端うまくいく――五島昇×升田幸三
[連載] 温故知新(第19回)
最大のほめ言葉は、期待をかけられたこと--中條高德
本郷孔洋の税務・会計心得帳
一覧へ税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」
[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)
グループ法人税制の勘どころ
[連載] 税務・会計心得帳(第17回)
自己信託のススメ
[連載] 税務・会計心得帳(第16回)
所得税の節税ポイント
[連載] 税務・会計心得帳(第15回)
固定資産税の取り戻し方
子育てに学ぶ人材育成
一覧へ意欲不足が気になる社員の指導法
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)
人を育てる「言葉」とは?
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)
女性社員を上手に育成するコツ
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)
部下の感情とどうつきあうか
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)
“将来有望”な社員の育て方
ビジネストレンド新着記事
注目企業
一覧へワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)
昨今、事業拡大や後継者対策などを目的とした企業同士のM&Aが増加している。同様にウェブサイトのM&Aが活発化している事実をご存知だろうか。サイトの売買で売り手にはまとまったキャッシュが、買い手にはサイトからの安定収益が入るなど、双方に大きなメリットがもたらされている。大手ITグループから個人事業主まで幅広い…

新社長登場
一覧へ「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡
創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

イノベーターズ
一覧へ老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治
フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

大学の挑戦
一覧へ専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長
2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

企業eye
一覧へ不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事
ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…
