マネジメント

1751(宝暦元)年に誕生したタキヒヨーは、今年で創業265年を迎えた。この間、数多くの危機がありながら、それを乗り越え、いまなお発展を続けている。その秘訣は何か。滝一夫社長に聞いた。

まずは社員にやらせてみる

―― 前2月期決算は売上高、営業利益ともに前々期を上回りました。

 われわれのビジネスはBtoBです。アパレルメーカーへのODMや専門量販店などに商品を納めています。その商品が売れなければ、次の取引はありません。量販店は商品の在庫回転率が命ですから、絶対に売れると自信の持てる商品ニーズをいち早くつかみ、製品化しなければいけません。つまり、店頭で消化できるヒット商品をどれだけ生み出せるかがタキヒヨーの存在価値だと考えています。

 ただし、足元の状況は厳しい。当社の場合、1年前に為替予約を入れています。そのため円高が進んでも、すぐには原料費には反映されません。ところが他のアパレルメーカーの中には、そこまで長期の為替予約を入れていないところも多い。そうなると、円高の恩恵を製品価格に反映することができる。そこと競争するには価格で負けるわけにはいかないため、当然、当社の利益率は落ちてしまう。その落ち込みを売り上げでカバーしなければなりません。

20161018TAKIHYO_P01

(たき・かずお)1960年生まれ。86年3月ニューヨーク州フォーム大学卒業後、ワールド入社。90年3月タキヒヨーに入社、百貨店事業部、テキスタイル事業部を経て、2004年取締役就任。08年常務を経て11年社長に就任。(写真/美崎政雄)

―― タキヒヨーは今年で創業265年です。その間には大きな危機もあったと思います。それを乗り越えて存続し、今なお発展し続ける秘訣はなんですか。

 常に新しいことをやり続けることに尽きます。20年前のタキヒヨーは、卸問屋でした。でもそのまま卸問屋を続けていたら、生き残ってはいなかった。20年前には問屋無用論が言われ始めていました。そこで当社も専門量販店への商品供給へと、意図的にシフトした結果が今日につながっています。

 要は、世の中がこれからどうなるか、常に見て、準備をしておく必要があるのです。逆にひとつのことにこだわっていたら、環境が変わった場合、その変化についていけません。

―― 最近始めた「新しいこと」を教えてください。

 商品部と販売部を分けたことです。以前は商品部が販売も担当していましたが、両方をやるのは無理があります。そこで分けたのですが、それによって今までとは違うマーケットが開拓できるようになりました。もうひとつ、商品部はデニムやカットソーといった具合にアイテムごとに縦割りになっていて、それぞれが量販店などに営業をかけていた。でも売り場の立場で考えると、上から下までセットで揃えたい。販売部はそこに対して一括で提案することができる。そこに新しいビジネスチャンスがあります。

―― 新しいことをやり続けるためには何が必要ですか。

 進化や変化をしなければ存続できないことを繰り返し社員に言うと同時に、社員がやりたいと思うことをやらせてみることです。面白そうだと思ったらとにかくやらせる。むしろここでは管理しない。仮に失敗したところで、最初の段階なら損失もタカが知れています。それならやらせたほうがいい。

 そのためには評価方法も変えなければなりません。例えば全く新しい事業で100の目標を立てたのに30しか達成できなかったとします。事業としては失敗かもしれないけれど、ゼロを30まで伸ばしたことを評価する。これが逆に損を出したことを叱責したら、新しいことをやろうとしなくなり、今の延長線上でしか物事を考えなくなってしまう。これでは進化も進歩もない。失敗することによって課題もはっきりするわけですから、失敗を評価することも大切です。

突破口を開き撤退を決断する

―― トップの役割はなんでしょう。

 社員がやりたいことをやれる環境を整えると同時に、時には突破口を開くことです。今秋、アメリカで商品供給が始まりますが、これは私がトップセールスして決めたものです。こういう先例をつくると、続く者が出てくる。今、海外の別のアパレルとの間で商談が進んでいますが、これも私の知らないところでプロジェクトチームができていた。こうやって会社全体が動き出します。

 それともうひとつ大事なことは撤退の決断です。先日「BERARDI」というブランドの事業を終了しました。3年間にわたり展開してきましたが、将来にわたり採算を取るのが困難なことから決断しました。このような撤退の決断はトップにしかできません。

―― 歴史の重みを感じるときはどういうときですか。

 会社の歴史が長いということは、取引先との歴史も長いということです。歴史があるからこそ、苦しいときには助けてくれる。もちろんその逆もある。それにアパレルの世界でタキヒヨーの名を知らない人はいません。これはありがたい。だからこそ、今後も歴史をつくり続けていく。そのためにも新しいことをやり続けることが重要なのです。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メーン銀行との付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

金利引き上げの口実とその対処法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件に学ぶ 不祥事対応のプリンシプル

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

「ブラック企業」という評価の考察

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

コミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

所得税の節税ポイント

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

固定資産税の取り戻し方

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

部下の感情とどうつきあうか

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

“将来有望”な社員の育て方

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年7月号
[特集]
社会課題で儲ける!

  • ・総論 グローバリズムとどう折り合いをつけるのか
  • ・なぜ、よしもとは社会課題と向き合うのか 大﨑 洋(吉本興業共同代表取締役CEO)
  • ・茶葉から茶殻までバリューチェーン全体で価値を創造する 笹谷秀光(伊藤園顧問)
  • ・持続可能な経営は、持続可能な地域が支えている キリンホールディングス
  • ・人生100年時代の健康問題に取り組む ファンケル
  • ・世の中に貢献する中で商売を広げていく ヤマト運輸
  • ・社会課題を解決する金融モデルは、懐かしい過去に学ぶべき 吉澤保幸 場所文化フォーラム名誉理事

[Special Interview]

 芳井敬一(大和ハウス工業社長)

 創業のDNAに立ち戻り、オーナーの教えを伝承・実践

[NEWS REPORT]

◆史上最高益でも原価低減 豊田章男の「原点回帰」

◆成長戦略再考を迫られた富士通の苦境

◆市場規模はバブル前に逆戻り 規模より知恵を問われるビール商戦

◆7兆円M&Aを仕掛けた武田薬品の野望とリスク

[特集2]

 オフィス革命 仕事場を変える、働き方が変わる

ページ上部へ戻る