政治・経済

201708TOYAMA_P01

(とやま・かずひこ)1960年生まれ。85年東京大学法学部卒。在学中に司法試験合格。92年スタンフォード大学経営学修士(MBA)取得。ボストンコンサルティンググループを経て、2003年産業再生機構に参画、COO就任。解散後、経営共創基盤(IGPI)を設立、現在に至る。

インターンシップ有識者会議の結論の問題点

 先日、文科省の「インターンシップに関する調査研究協力会議」が、採用に直結するインターンシップを学業の妨げとして認めない方向で結論をまとめると報じられた。

 私は経済人として4千人の従業員を抱える企業グループのトップであり、またいくつかの大学で講義を持ち大学経営の顧問を務め、何より大学生の親でもある。その立場からは、笑止、下劣、「恥を知れ」としか言いようがない結論だ。

 報道によると、経済団体やら大学やらの「有識者」の先生方の結論らしいが、いったいこの人たちはどんな「見識」をお持ちなのか。

 多くの大学生と接している実感として、今どきの大学生の多くは、インターンシップなど存在しなかった私たちの時代よりはよく勉強している。私は経済同友会の副代表幹事を務めているが、経済界のおエライさんたちの学生時代の思い出話の多くは「いかに勉強しなかったか」武勇伝だ。加えて、インターンシップが明確に採用と直結している米国の大学生がよく勉強することも周知の事実。

 昔も今も、日本の大学生の勉強量が欧米より少ないのは、大半の大学および教員の無為無策、無能怠慢が主因である。

 もし、大学での学業が、学生自身の将来にとって真に価値あるものと実感させられれば、インターンシップに関係なく、日本の学生も欧米のように必死に勉強するし、わが国でも既に実現している大学がある。今回の結論は問題のすり替えである。

冨山和彦氏の考えるインターンシップの必要性

 終身雇用や年功制が崩壊していく厳しい時代に、少しでも自分に合った会社や職種に就職したい学生の切実な願い。そして採用力に乏しく深刻な人手不足に悩む中小企業やベンチャー企業における採用直結型インターンシップへの強いニーズ。大企業で正社員として働く勤労者の割合は長年にわたり減少傾向で、今や全体の2割くらいにすぎない。

 単なる「お勉強」目的の学生を受け入れる余裕がない中小・ベンチャー企業に採用直結型インターンシップを認め、学生とのマッチングの機会を増やすことは、日本の経済社会全体にとって大きな意味を持つ。中小企業の多い地方経済の活性化、地方創生にもプラスに働くだろう。学生の側から見れば、採用に直結しているからこそ、真剣勝負で仕事に向かい合うし、本当の勉強にもなる。

 リアルな仕事現場から学べる社会の現実、人間性の現実のほうが圧倒的に真の「リベラルアーツ」に近い。

 実際、インターンシップに参加する学生の本音は「就職活動」そのものであり、企業の本音も「採用活動」なことは誰だって分かっている。報道されている有識者会議の結論の破廉恥性は、こんなあからさまな「大人の嘘」を、これから就職活動を行う未来ある若者たちに公然とついていることにある。

 明確に宣言しよう。私どもの会社、経営共創基盤は今年も採用活動の一環としてインターンシップを行います。結果的に採用に至らなかった学生さんたちにとっても、どの大学のどんな経営学の講義にも負けない価値ある学びを保証します。来たれ前途有望なる若者よ!

 

【冨山和彦】氏の関連記事一覧はこちら

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[特集 新しい街は懐かしい]

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る