マネジメント

圧倒的に稼げる人とそうでない人との違いは何なのか。事業における成功と失敗の分かれ道はどこにあるのか。本シリーズでは、幾多の修羅場をくぐりぬけてきた企業経営者たちを直撃し、成功者としての「原点」に迫っていく。

チーム経営で業績が飛躍

鉢嶺4

(はちみね・のぼる)1967年生まれ。千葉県出身。91年早稲田大学商学部卒業後、森ビル入社。3年後、26歳で起業し、ダイレクトマーケティング業を展開する株式会社オプトを設立。2000年に日本初のインターネット広告システム「ADPLAN」を開発・販売、04年にJASDAQに株式公開。13年東証一部上場。15年に持ち株会社に移行し、現在は同社の社長グループCEOを務める。

江上 起業して7年目から業績が大きく伸びたということですが、何が上手くいったのですか?

鉢嶺 それまでは、最大でも年間3億5千万円くらいの売上しかなかったんです。それが2001年に12億円、翌年に29億円、さらに翌年に48億円と、倍々で増えていきました。

 1つ大きく変えたのは、チーム経営の体制にしたことです。それまでは私が1人であっちもこっちもいろいろとやっていました。しかし、人には得手不得手があります。そこで、マネージメントが得意な役員、戦略を立てるのが得意な役員、守りが得意な役員など、4人の経営陣の役割分担をそれぞれ明確にしました。その体制で、3年後に売上30億円、利益3億円で上場する「333計画」に取り組もうと決めたんです。業績が伸びたのは、それからですね。 

 「333計画」を設定する前に、役員4人で合宿を行いました。そこで、それぞれの夢を語ったのですが、将来は作家になりたい、大学教授になりたい、不動産業を営みたいといった具合で、みんながバラバラだったんです。全員の考えを聞いたのは、その時が初めてでした。そんな話をする中で、まずはみんなでいったんオプトを上場させようと決めました。作家なら上場までのプロセスが題材になるし、大学教授なら教材にすることもできるし、上場すれば不動産事業のキャピタルゲインになる。こじつけでしたが、それぞれの夢が、上場によって実現に近づくじゃないかと。そのために4人でタッグを組んでやろうと話し合ったんです。

江上 なるほど。ところで、中小企業の経営者の中には、なかなか人材が集まらないという悩みを抱える人が多くいますが、そこは経営者が夢を語って、方向性を一致させる必要性がありますよね。

鉢嶺 中小企業だから人が来ないと言い訳するのは、ちょっと違うんじゃないかと思います。確かに、学歴などの面で一般的に優秀な人は大企業のほうが集めやすいと思いますが、本当にベンチャーマインドを持っている人は逆に大企業には来なくなります。むしろ上場前に来てくれる人のほうが、よほど自立心が旺盛だったりしますから。どんな会社であったとしても、そこにふさわしい人材でないと、戦力にはなりません。

江上 私も大企業にいたころは、同僚と飲みに行くと市場環境が悪いとか、この上司が悪いとかマイナスのことしか言わないので、外部の人とばかり一緒にいたのを思い出しました。成功する人はやはりプラス思考ですよね。

鉢嶺 成功する経営者にマイナス思考の人っているんでしょうか。私はいないと思いますね。

カリスマ性がないから人に任せる

鉢嶺5江上 今はグループ全体で何人くらいいるのですか。

鉢嶺 1600人ほどです。グループ会社は23社です。

江上 そこまで拡大すると、事業を任せる人材を決めるのが大変だと思いますが、選ばれる人に共通項みたいなものはあるんですか。

鉢嶺 やらせてみないと分からないので、難しいところですね。まず、人として信用できる人にしかお願いしませんが、それでも成果が出るかといえば、出ないことの方が圧倒的に多いのでホントにやらせてみるしかありません。ただ、成果が出るかどうかは、任せた後にすぐ分かります。

江上 そうなんですか?

鉢嶺 たとえばネット広告だったら「動画はやらないの?」とか、「SNSなら今はインスタじゃないの?」とか、そうした要望をした時の反応で、コイツは大丈夫かどうかというのがすぐに分かります。ただ、それを事前に見抜けるかといえば難しい。そうやって経営者を探して23年間旅してますね

江上 「経営者を探して23年旅している」というのは名言ですね。

鉢嶺 自分は1人で何でもできる方ではないので、できる人を探してどんどんお願いするスタイルです。

江上 経営者があまりカリスマ過ぎてもダメなんでしょうね。

鉢嶺 自分にカリスマ性はないです。「これをやりたい」と言っても、すぐに役員会などで否決されますから(笑)。

江上 役員の方たちは若いんですか。

鉢嶺 若いですね。社外取締役の方たちは50代、60代ですが、実務系は私と同年代の役員が一番年上で、一番若い役員は30代前半です。IT業界では普通だと思いますが。

江上 実は、私も最近若い連中と組んで仮想通貨交換業を始めたんですが、スピード感が全く違うことに驚いています。会話の中身も全然分からなくて、通訳を1人入れているほどです(笑)。

鉢嶺 ベンチャーの場合は、スピード感が特に重要ですから。

江上 これから起業したり成功したいと思っている人たちに、アドバイスするとすればどんなことですか。

鉢嶺 やはり、目標設定が全てでしょうね。心の底から何がやりたいかを決めることができたら、8~9割は勝ちだと思います。目標設定したら、あとはどうやって実現するかだけですから。ほとんどの人たちが、おそらく目標や夢に対して明確な期限を作れていないと思うんです。社員たちには、自分がやりたいことを年末年始に考えるように言っています。そうすれば、1年間を過ごす中で、常にそのことを考えることができます。そのプロセスがとても重要で、何も設定していないと何もない1年を過ごすことになりますが、一度目標を設定した人は、翌年に修正することもできます。

江上 若いうちに良い習慣を身に付けることが大切なんでしょうね。勝ちグセというか、目標設定して目標通りクリアする繰り返しが重要だと思います。

目標は2030年に1兆円

鉢嶺6江上 今後の大きな目標は何ですか。

鉢嶺 2030年までに、売上高1兆円を目標に掲げたので、すべてはそこですね。1兆円のうちの7千億円はマーケティング関連の事業で達成できると思います。

 とはいえ、広告だけではそこまでいかないので、企業のデジタルシフトをサポートする分野に力を入れていきます。今は人材のデジタル教育なども、請け負い始めているところです。こちらは、どちらかといえば労働集約型モデルになります。あと3千億円は、収益逓増モデルしかやらないと決めています。こちらのほうは高収益ですが、ゼロからやらないといけないので、投資を実行しているところです。あれもこれもではなく、基本的にインターネット関連ビジネスしかやるつもりはありません。

江上 たとえば、孫正義さんは継続課金制のビジネスモデルしかやらないと決めているようですが、鉢嶺社長は何かこだわりのようなものはありますか。

鉢嶺 プラットフォームビジネスはやっていきたいところですね。簡単ではありませんが。

江上 鉢嶺社長のように、自然体で上手く他人を活用できる人のほうが会社を大きくできると思います。本日はありがとうございました。鉢嶺登×江上治(前編)

(えがみ・おさむ)1億円倶楽部主幹・オフィシャルインテグレート代表取締役。1967年生まれ。年収1億円超の顧客を50人以上抱えるFP。大手損保会社、外資系保険会社の代理店支援営業の新規開拓分野で全国1位を4回受賞、最短・最年少でマネージャーに昇格し、独立。著書に16万部突破『年収1億円思考』他多数。

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