マネジメント

顧客のニーズを元に設計、施工会社の選定から、施設運用までをトータルで支援するCM(コンストラクションマネジメント)、PM(プロジェクトマネジメント)の専業会社。顧客の事業拡大に貢献する“施設参謀”として建設産業の新たなプラットフォームの創造を目指す。

事業戦略と施設戦略を融合し、企業価値の向上へ

201803YAMASHITAPM_P01

株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツ代表取締役社長 川原秀仁(かわはら・ひでひと)

 日本でも近年、CRE(企業不動産)戦略という言葉が聞かれるようになったが、山下ピー・エム・コンサルタンツ(山下PMC)は20年以上も前から最先端のCMとPMのノウハウを蓄積させ、この分野のリーディングカンパニーに成長した。

 建物は発注者の意向に沿って正確に造ればいいという時代が続いたが、今はそれだけでは不十分だ。企業における建設プロジェクトとは、立派な施設を造ることが目的ではなく、そこから付加価値の高いサービスを生むことにある。最新鋭の設備を取り入れた建物でも、企業の事業戦略と合致しなければ、建物の価値は大きく毀損される。竣工してそれで終わりではなく、同社は施設の運用にまで長期にわたってサポートする。

 創業メンバーでもある川原秀仁社長は「当社の特色は、まずお客さまの意向を徹底的にヒアリングし、お客さまの事業戦略を、具体的な施設戦略に落とし込みます。施設戦略は企業の収益を最大化するため、事業戦略と融合することが肝心なのです。そのために新たな事業戦略創りにも参加し、その具現化に向けCM、PMで推進します。戦略立案の言いっ放しではなく、実現に向けて最後までお手伝いします」

 不動産を活用して企業価値向上を目指すCRE戦略においても、クライアントが求めるサービスにはワンストップで対応する。これまで手掛けた案件は本社屋から研究施設、物流施設、宿泊施設、スポーツ施設など、1300件以上に上り、現在は1案件平均50億円のプロジェクトを同時に180件抱えている。近年のビッグプロジェクトには総事業費約1500億円の武田薬品工業湘南研究所がある。世界中の研究機能を集約した複雑な施設で関係する設計、施工会社も多岐に渡ったが、これをわずか4年で完成させた。

 「新規事業の創出をはじめ事業戦略を一緒に考えてほしいという要望が増えています。新規事業ですから建物も従来の発想では駄目で、金融ならフィンテック、メディアならネット配信などに対応する施設の在り方や事業戦略も提案しています」

 業界大手の山下設計から分離して発足した同社は、最初から新たな事業領域を創造することが求められた。旧来の発想にはなかった新たなイノベーションを生むための複雑な施設づくりの課題解決が使命だったともいえる。現在のスタッフは122人、その多くはキャリア採用でPMとCM業務を担当している。前職は名だたる組織設計事務所で取りまとめ役を経験したメンバーをはじめ、ゼネコンの設計部門、企業の施設発注者などさまざまな領域のプロが集まっているという。

 「経験豊富な人が多いですが、“施設参謀”という理念を理解して行動できるようになるには数年かかります。過去のノウハウを蓄積した膨大なオリジナルの教育実践ツールもあるので、座学とOJTを通じてスキルを高めていきます。また、数々のビッグプロジェクトを経験したベテランも“賢人”としてメンバーに加わり、スタッフのさらなる成長に役立っています」

建設業界の改革を進めて、日本を社会先進立国に

 川原社長は、「日本はものづくりばかりに過剰に重きを置いてきた。高品質という言葉は必ずしも物質を示しているだけではない。優れたサービスこそが収益を高め、価値を生みだしていることを認識すれば建設業界に新たなバリューチェーンを導入することができる。単なる市場調査に収まらないマーケティングを徹底し、高品質を全うするために社員一人一人がアイデアを実現化するためのスキルを地道に磨き続けることが重要だ」と述べる。

 同社は構造物を含めた目の前に見える「モノ」という固定観念に捉われた建築業界に、新たな価値を提供しようとしている。その1つがIoTやAI等の最新技術を駆使した「コネクテッドファシリティ」という新たなプラットフォーム創りだ。1つの建物が多くのセンサーを持ちビッグデータを集めてマーケティング戦略を生みだしていくという構想だ。

 「5年前に提唱して以来、最近になって大手の建設会社にも理解者が増えてきました。1社のモデルとして終わるのではなく業界全体でシェアしながらプラットフォーム化し、現在ではなく、未来の顧客が満足するような構想を先回りして提供し、実現していきたいですね」

 川原社長の構想は、日本の高度成長を牽引してきた産業界の主役が、ものづくりの輸出産業から大きく変わろうとしている現状を踏まえたものだ。国際収支を見ると、今の日本は貿易収支型から、海外の子会社からの仕送りで成り立つ所得収支型の先進国に変わった。とすれば大きなパラダイムシフトで次世代の主役も変わっていくはずである。既存産業の構造改革と、イノベーションを生む新産業の育成が求められる。

 「新時代を“社会先進立国”とすれば、その実現のため、何ができるのかを常に考えています。まずは建設業のバリューチェーンを合理的なものに変えて先進産業に変革するよう努力しますが、それだけではなく日本の産業界全体の改革に貢献したいと思っています」

 

株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツ

  • 設立/1997年12月1日
  • 資本金/5000万円
  • 従業員/122人
  • 事業内容/施設建設に関するPM(プロジェクトマネジメント)・CM(コンストラクションマネジメント)業務全般、事業創造・戦略立案業務
  • 所在地/東京都中央区
  • 会社ホームページ/https://www.ypmc.co.jp/

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

バーチャル空間で開催される会議や音楽ライブなどに、3Dアバターで参加できる画期的サービス「cluster」を生み出したのは、元引きこもりのオタク青年だった。エンタメの世界を大きく変える可能性を秘めたビジネスで注目を浴びる経営者、加藤直人氏の人物像と「cluster」の展望を探る。(取材・文=吉田浩)加藤直人・…

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年1月号
[特集]
平成の事件簿

  • ・[イトマン事件]闇勢力に銀行が食い荒らされた戦後最大の経済事件
  • ・[ダイエー、産業再生機構入り]一代で栄枯盛衰を体現した日本の流通王・中内 功の信念
  • ・[ライブドアショック]一大社会現象を起こしたホリエモンの功罪
  • ・[日本航空経営破綻]親方日の丸航空会社の破綻と再生の物語

[Special Interview]

 高橋和夫(東京急行電鉄社長)

 「100周年に向けて、オンリーワン企業の強みを磨き続ける」

[NEWS REPORT]

◆かつてのライバル対決 明暗分けたパナとソニー

◆経営陣に強い危機感 富士通が異例の構造改革断行

◆売上高1兆円が見えた ミネベアミツミがユーシンを統合

◆前門の貿易戦争、後門の技術革新 好決算でも喜べない自動車各社

[特集2]経営に生かすAI

 「人工知能は『お弟子さん』
日常生活が作品になるということ」
落合陽一(筑波大学准教授)

ページ上部へ戻る