経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

不動産競売流通協会代表理事、青山一広【「不動産のプロ」を育成し競売不動産市場の発展を図る】

不動産競売流通協会代表理事 青山一広氏

消費者が安心して競売不動産を取得できるインフラづくりを行う不動産競売流通協会。青山一広代表理事は資格試験や勉強会の運営を通じて、「不動産のプロ」を育成。会員企業をサポートしながら、競売市場を不動産のセカンドマーケットに育てている。

【不動産競売流通協会;競売不動産市場の発展のため資格の運営で不動産のプロを育成する】

一般社団法人不動産競売流通協会代表理事 青山一広(あおやま・かずひろ)

一般社団法人不動産競売流通協会代表理事 青山一広(あおやま・かずひろ)

「かつての競売不動産市場は法律の不備から落札物件に暴力団が占有するなどダーティーな側面が強い上に、一般消費者は参加しづらいという不透明な点が数多くありました。現在では、法改正が進み、暴力団による占有トラブルがほぼ皆無になりました。インターネットにより物件情報が公開され、一般消費者が参加しやすい状況が整い、競売市場はオープンでクリーンになっています。私たちは協会活動を通じて、買受人、債務者、不動産会社がウィンウィンウィンになれるように努めています。欧米のように競売物件を当たり前に売買できる市場をつくりたいですね」(青山一広代表理事)

不動産競売流通協会(FKR)は、競売市場を健全にする目的から全国の不動産業を含む約370社の会員向けに勉強会や支部会を開催。知識・実務面のスキルアップやネットワーキングを手助けしている。

また、競売をめぐる安心・安全な取引環境づくりが求められる中、FKRは独自の「競売不動産取扱主任者資格」試験を運営している。資格の特徴は競売関連の法律やルールについて学ばせるだけではなく、購入者への助言や代行に必要な知識の習得を促す点だ。2011年の実施開始からこれまで約1万数千人もの受験者と約4500人の合格者を世に送り出した。受験者は不動産業従事者が半数以上を占めるほか、金融機関従事者が2割弱、士業が1割弱となっており、業界内外での認知度を高めている。

「競売不動産取扱主任者資格」は17年に、日本不動産仲裁機構におけるADR(裁判外紛争解決手続)調停人の基礎資格に認定された。これによって、資格保持者は競売購入のアドバイスだけでなく、非弁行為とされる占有者への立ち退き交渉もできるようになった。物件明け渡しのトラブルが起きた場合、話し合いによる解決で手数料を得ることができる。

【不動産競売流通協会;競売不動産市場の発展のため、消費者向けの競売不動産セミナーを定期的に開催】

現在、競売不動産市場は金融機関の返済条件緩和などの影響を受けて、出品物件数が減少基調をたどっている。16年の出品物件数は約2万9千件と5年前の半減以下となった。

しかし、“競売予備軍”といわれる、住宅ローンの条件変更件数は増加の一途をたどっており、金融庁による17年6月の発表では41万1千件に達した。最近では、年間約5万件ずつとハイペースで増えている。今後は競売・任意売却案件が増加する可能性を無視できない。宅建業法でカバーできない2つの市場の取引環境を健全にしながら、会員企業に業務の幅を拡大してもらう構えだ。

青山代表は「資格を取得することによって、一般の不動産に加えて競売、任売物件を取り扱えるようになります。これは非常に画期的なことです。今以上に私たちが皆さんへ資格受験を呼び掛けることで、市場全体の活性化につながるでしょう」と自信を見せている。

現在、FKRは事業者に限らず、一般消費者へのサポートにも力を注いでいる。消費者向けの競売不動産セミナーを定期的に開催することで、啓蒙活動を行う。また、08年には不動産競売物件の会員制ポータルサイト「981.jp」をオープンした。裁判所が公開している競売物件情報(BIT)にFKRが詳細なデータを付け加えて公開している。購入意欲の高い消費者に対して、全国の会員が利用者の競売参加を支援する仕組み。一般会員は約8万人で、投資家がうち7~8割だ。

また、「981.jp」内には「競売不動産トラブル窓口」を開設している。消費者は落札後に「空き家のはずなのに占有者がいる」「購入した住宅が事故物件だった」「業者にだまされた」といった悩みや困りごとに直面するケースがある。FKRのスタッフがサイトのフォームから寄せられた相談に対してメールで回答している。深刻な相談はほとんど寄せられていないが、サイトの存在を通じて安心感につなげたいという。

「私たちは不動産取引に関わる全ての方にハッピーになっていただきたいと考えています。その中でもダーティーに思われがちな競売マーケットがクリーンな取引環境になるように、『981.jp』を消費者の不安解消や取引円滑化のツールとしてご提供しています。手間ひまは掛かりますが、急がず、焦らず、地道にやっていきます」(青山代表)

FKRは18年12月で設立10周年を迎える。青山代表は協会の機能強化を踏まえて、「10年の節目を迎えるにあたり、私たちの活動の第1弾とも言うべきものが完成形になりつつあります」と一定の手応えを感じている。

メニュー拡充を通じて、日本の不動産事業者が欧米のようにエリートの専門家として扱われるべく社会的地位を高めたい考えだ。

「競売物件市場を不動産のセカンドマーケットに育てるため、どの地域のどんな競売物件でも公正かつ安全に取り引きできるような環境を全国に広げたいです」と意欲を燃やしている。

一般社団法人不動産競売流通協会

  • 設立/2008年12月
  • 事業内容/不動産競売物件情報の分析と公開、会員等に対するセミナー・研修といったサービス業務、「競売不動産取扱主任者資格」試験の実施など
  • 所在地/東京都港区
  • ホームページ/http://fkr.or.jp/

【マネジメント】の記事一覧はこちら

経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る