政治・経済

日本の会員制リゾートの市場を開拓してきたリゾートトラスト。今では全国に46カ所のリゾートホテル等があるが、従来の「エクシブ」シリーズに加え、「離宮」や「ベイコート倶楽部」といった、1ランク上の施設を展開。その会員権は最も高いもので税込み4千万円を超えるが、売れ行きは好調だ。会員権を求める人はいわゆる富裕層の人たちだが、今、日本の富裕層は何を求めているのか。伊藤勝康社長に聞いた。

リゾートトラストの購買層の中心は今も昔も60代

201803RESORTTRUST_P01―― リゾートトラストでは、「エクシブ湯河原離宮」など、老舗旅館跡地での高級リゾート開発も行っています。会員権は最もグレードの高いタイプで3千万円を超えていましたが、売れ行きもいいらしいですね。ほかの施設の会員権販売も好調で、消費が上向いているひとつの象徴のように思えます。

伊藤 2017年を振り返ると、消費は徐々に上向いているように思います。当社の会員権売り上げも順調です。ただし、要因は消費動向の変化だけではありません。11年の東日本大震災の影響で、一時、開発がストップしたことがあります。そのため、当社の新規会員権の販売も延期されてしまっていました。それがようやく発売にこぎつけることができたため、お待ちいただいていたお客さまに受け入れられたということもあると思います。施設がオープンする前に会員権は4割売れているのが通常ですが、湯河原を筆頭に、最近開業したものは6割以上が売れていました。それもあって、会員権販売が活況を呈しているのではないでしょうか。

―― この1年で平均株価も大きく上がりました。その影響も大きいのではないですか。

伊藤 1億円以上の金融資産を持つ富裕層が日本には120万世帯います。リーマンショック後には80万世帯にまで減りましたが、10年近くかけてここまで戻ってきました。富裕層の方々の資産に株が占める割合は大きい。株価がどん底の7千円台から直近の2万3千円前後にまで上がれば、それだけ資産も増える。それがリゾート会員権の販売につながっているところはあるでしょうね。

―― 購買層に変化はありますか。

伊藤 それはあまり感じませんね。リゾート会員権の販売を40年以上にわたって行っていますが、中心的購買層はずっと60代です。これはほとんど変わりません。恐らく今後10年間は変わることがないと見ています。

 ただし、08年にオープンした東京ベイコート倶楽部や、先日、募集を開始した横浜ベイコート倶楽部(20年7月開業)などの都市型会員制リゾートとなると少し状況が異なります。こちらの購買層は、従来の会員制リゾートの購買層よりも10歳程度若くなっています。やはり都会にあるために、仕事とリゾートライフが両立できるところが魅力のようです。

―― 若い人というと、どんな人たちが購入されているんですか。

伊藤 IPOなどによって資金的余裕を持てた人たちが多いようです。あくまで一般論ですが、若い人の多くは、将来の生活設計に不安を感じていますから。

リゾートトラスト 伊藤勝康社長が感じる世代間の距離の変化とは

―― 40年の経験を通して、購入者の意識の変化は感じますか。

伊藤 親と子、あるいは祖父母と孫といった世代間の距離が、昔より離れているような気がします。昔の人は、自分たちは我慢しても、資産を子孫の世代に残そうという気持ちを強く持っていました。でも今の人たちは、まずは自分たちが楽しむ。そのためにリゾート会員権を購入、利用されています。しかも会員権があれば家族全員で施設を利用して、楽しい時間を過ごすことも可能です。

―― 昔の人は自分は楽しまずに子孫に美田を残していたのに、今の人は一緒に楽しむわけですね。

伊藤 そういうところはあると思います。その一方で、老後も子どもたちに頼ろうとは思わない。介護されるにしても自分たちで何とかしようという意識が強い。

 それと昔と今で圧倒的に違うのは、60代、70代の方たちの活動量です。大変アクティブな方々が多い。アンケートを取ると、ほぼ全員が年に一度は海外旅行を楽しんでいます。しかも一番人気はイタリアです。

―― 今後の展望はいかがですか。

伊藤 会員制リゾートという市場は、われわれが先陣を切って40年以上の歳月をかけてつくってきました。一流の施設をつくり、一流のおもてなしを体験していただく。そういう楽しみ方があることを、ようやく多くの方々に知っていただけるようになりました。旅をするよりも、リゾートでゆっくりとくつろぐことを楽しむ人が増えてきました。その傾向は今後もしばらくは変わらないと思います。

―― ということは、リゾートトラストの成長は今後も続いていきそうですが、その一方で人口減少が急速に進んでいます。いずれ購買層の人たちも減ってきますから、事業環境は厳しさを増していきます。

伊藤 今後とも会員を増やすために力を注いでいきます。でも、いまや当社の会員数は17万人となりました。ここまで増えると、分母が大きくなったため、多少、会員が増えてもそれほど大きな伸び率にはなりません。ですから会員を増やすと同時に、会員1人に使っていただくお金を増やすために、新しいサービスを提供していこうと考えています。

 リゾートトラストが開発するリゾートは、基本的に東京・名古屋・大阪の3大都市圏から2時間以内で行けるところです。都会に住む人たちが気軽に行けるものが大半です。でも先ほど申し上げたように、皆さん海外旅行も楽しんでいます。ですからわれわれが海外に出て、日本から海外に行く会員の方々に利用していただく。

 当社は14年に、ハワイの「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」を取得しました。「ザ・カハラ」は、アメリカの大統領をはじめ世界のVIPが利用する名門ホテルです。ここで得たノウハウをもとに、世界中に「ザ・カハラ」を展開していきます。その第1弾として、横浜ベイコート倶楽部に併設して開業します。そしてこれを会員の方々が訪れることの多い地域、例えば東南アジアのリゾートなどに展開することを検討しています。

リゾートトラストのサービスを提供する視点とは

―― レジャー以外の事業も増えてきました。

伊藤 会員の方々の健康のために、メディカル事業にも力を入れています。そのひとつがグランドハイメディック倶楽部で、全国に8カ所あります。民間医療機関としては日本で初めてPETを設置するなど、高度な医療検診を行っています。さらには万が一のための治療サポートや予防医療・健康サポートも提供しています。また、快適で安心できるシニアライフを送っていただくため、介護付き有料老人ホームを運営しています。つまり、リゾートトラストの会員の方々が、生涯、快適で健康的な生活を送るためのサービスをさまざまな形で提供しています。今後も内容を充実させるだけでなく、メニューも増やしていこうと考えています。

 会員の方1人が、1年間に当社の施設で使う金額はおよそ50万円です。でもリゾートとベイコート、あるいはリゾートとグランドハイメディック倶楽部などのように、2つ以上会員権を持っている人は100万円以上、ご利用されています。ですから、新しい事業を開拓し、それを既存会員の方々に利用していただければ、当社の業績も伸びていきます。

―― 新しいサービスへの進出は、どんな視点で決めているのですか。

伊藤 われわれが会員制リゾートという市場を開拓できたのは、常に会員とわれわれの目線をできるだけ近づけ、感覚を一致させる努力をしてきたからだと思います。会員の方々が何を望んでいるか、常に心掛ける。だからこそ、会員の方々が新規の会員を紹介してくださるのです。

 メディカル事業も同じです。たぶん、ほとんどの人が、われわれが検診や医療分野を始めるとは思っていなかったでしょう。けれど会員の皆さんの声を聞き、同じ目線で考えると、この事業は必然でした。

 先ほど申し上げたように、アクティブな高齢者が増えています。65歳の定年を迎えても、皆さんお元気です。この方々に、まずはエクシブなどの会員になっていただく。でもいくらアクティブでも、健康への不安は皆さんお持ちです。その人たちの不安を解消するサービスを提供することで、会員の方々の満足度は上がっていきます。これが一番大切です。そしてそれを追求することで、われわれも事業の幅が広がり、成長へとつながるのです。

 

【政治・経済】の記事一覧はこちら

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る