歴史や伝統だけでは評価はあがらない
東京のみならず、日本の観光業、ホテルの活況をけん引するインバウンド客。今年、順調にいけば2500万人近くまで伸びるといわれている。彼らは当然のごとく、日本に来れば宿泊する施設が必要になるのだが、いったいどのような視点でホテルを選んでいるのだろうか。
例えば、ホテルには格付けがある。フォーブストラベルガイドによれば、最高の5つ星にはマンダリン・オリエンタル東京、パレスホテル東京、ザ・ペニンシュラ東京の3ホテルが輝いた。もちろん、こうした格付けも1つの基準だ。しかし、ホテルは多種多様であり、格付けだけではすべてを網羅できない。そうした中、宿泊施設の判断に強い影響を及ぼしているのが口コミだ。
世界最大の口コミサイトであるトリップアドバイザーは、世界45の国と地域、28の言語で、月間利用者数は世界で3億7500万人以上を誇る。
そのトリップアドバイザーが昨年末、外国人に人気のホテルを発表した。東京のホテルは、1位、2位を含め20位以内に15のホテルがランクイン。その中でも外資系ホテルの健闘が目立つ。コメントを見てみると、コストも十分に含めた眺望や立地、そして働くスタッフのサービスレベルの高さに集中している。例えば2014年は1位で、15年が2位のマンダリン・オリエンタル東京は、ハードへの賛辞とともにスタッフの「気遣い」について賞賛の言葉が並ぶ。また異国の地で言葉が通じる語学力も重要な評価につながっている。と同時に、伝統あるホテルであろうがコストに見合わなければ厳しいコメントが並ぶ。
東京の日系ホテルではパレスホテル東京の9位を筆頭に、東京ステーションホテル、帝国ホテル東京が続く。さらにザ・ゲートホテル雷門、庭のホテル、ホテル龍名館東京もランクイン。特に、庭のホテルと龍名館は、もともと旅館が出発点であることで、日本的なサービスと和の雰囲気を味わえるホテルとして人気が高いようだ。面白い理由としては、庭のホテルは水道橋が最寄りの駅で、立地の面で利便性にハンディがあると考えてしまうが、「欧米人の方は歩くのが苦にならない方が多く、逆に歩いて秋葉原や東京駅など、どこにでも行ける立地だと高い評価を受けているようです」(トリップアドバイザー広報・東氏)。
ラグジュアリーホテルも布団も両方楽しむ
かつて日本人が初めての海外旅行で日系ホテルが安心と思っていたように、海外のお客さんにとっても「なじみあるホテル」は安心できるようだ。ミレニアム三井ガーデンホテル銀座は、銀座の中心地であり歌舞伎座の近くといった立地も大きな武器になっているが、シンガポール資本のミレニアムブランドであることも、外国人比率が常時7割を超えている理由の1つだという。「個人で予約されて来られるお客さまが多いのですが、ミレニアムのブランドで安心される方は多いですね」と、杉本裕司宿泊支配人は語る。
ほかにも、「ポイントサービス」という実利を目当てにホテルを選ぶ人も多い。ホテルのポイントや提携航空会社のマイレージと提携しているかが重要なようで、日系のホテルが外資系のブランドと提携したり、リブランド化したりすることで、ビジネス客を中心に宿泊層もまたガラリと変わることがあるのだそうだ。
一方で、せっかく日本に来たのだからと、日本らしさを味わいたいと思う人も多い。「例えば、東京に1週間泊まるとしても、日本らしさを感じたいと旅館に泊まる方は多く。例えばザ・リッツカールトン東京と下町の旅館といった組み合わせも珍しくありません。比率で言えばホテル5泊、旅館2泊といった感じでしょうか」(東氏)と、どうしても畳に布団よりもベッドが楽なようで、あくまで和式は経験のためといった場合が多いようだ。
都内の旅館では谷中にある12室の旅館「澤の屋」がアットホームな雰囲気で人気があるそうで、主人の澤功さんは観光庁が選ぶ「観光カリスマ」にも選ばれている。
日本への旅行も2度目、3度目ともなれば泊まるホテルで冒険する人も増えていくだろう。その選択の裏には必ず口コミやSNSがあるはずだ。
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