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「絶滅危惧種」の伝統産業は越境ECで活路を開けるか

「クールジャパン」という言葉はもはや使い古された感がある。特に行政がそれを前面に打ち出して地元の商品などを売ろうとすると、「自分大好き感」が際立ってしまい逆に「クールではない」と見られてしまうこともあるのが今のご時勢だ。「日本」を全面的に打ち出して製品を販売する戦略は、この先厳しくなっていくだろう。

だが、そんなことも言っていられないのが伝統産業の分野である。日本全国で伝統工芸品などの製造に携わる人材は年々減り続け、「絶滅危惧種」となっているものも珍しくない。 京都市長の門川大作氏はこう語る。

「日本文化の危機」と訴える門川大作・京都市長

「日本文化の危機」と訴える門川大作・京都市長

「例えばかつては約2万人もいた京都の西陣織の職人は今や1千人程度。京都のタクシー運転手が観光客に西陣織についてかなり詳しく説明していて流石と思ったら、その運転手は文化財クラスの仕事ができる西陣織の職人だったという話がある。生活が苦しいから仕方なくタクシーの運転手をやっている」

西陣織に限らず、似たような状況は全国のさまざまな伝統産業で見られるという。伝統と技術に裏打ちされたブランドがあれば黙っていても注文が入った時代と違い、今は自ら打って出なければ廃業を待つのみだ。

こうした状況を背景に、イーベイ・ジャパンは自社のオンラインマーケットを通じて、地域の伝統工芸品をはじめとする製造・小売業の海外展開を支援するプロジェクトをスタートさせた。

第1弾として京都を対象にフォネックス・コミュニケーションズ、ペイパル、中小企業基盤整備機構、京都商工会議所などと組んで、伝統産業の越境EC(国境をまたぐEコマース)を開始した。年々増加する訪日観光客を、越境ECの顧客に転換しようという狙いだ。たとえば、日本で伝統工芸品の魅力を知った観光客が、自国に帰ったあとでもイーベイの特設サイトを通じて商品を購買できるようにする。

これまでは、海外に商品を売ろうにも伝統産業に従事する業者にはその環境が乏しかった。ましてや、個別に海外と取引する語学力もノウハウもないところがほとんど。イーベイ・ジャパンでビジネス開発部長を務める岡田朋子氏は

「日本人には良いと思われていても、外国人には知られていない商品がまだ多数ある」と、期待を込める。

商品は海外向けだからと言って安売りはしないという。ただ、日本で伝統産業が廃れた背景には、「殿様商売」的な側面が敬遠されたことも否定できない。日本のマーケットは頭打ち、ならば海外に活路を、というわけだが、果たしてどれだけの外国人に「日本の伝統工芸品」の価値を評価してもらえるかが勝負となる。

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