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「ペイドライバー」と揶揄されるランス・ストロールの今後に注目

二宮清純の「スポーツ羅針盤」

「カネでシートを買った」と陰口をたたかれるランス・ストロール

 カネだけでは勝てないが、カネがなくては、なお勝てない。モータースポーツの戦績は軍資金にほぼ比例するといわれている。

 そんな中、3月26日に開幕したF1グランプリ。ひとりの新人ドライバーに注目が集まっている。

 ランス・ストロール。カナダ出身の18歳だ。昨季はF3王者となり、今季F1にレギュラーシートを得た。

 F1での戦績はまだパッとしない。開幕から3戦連続でリタイアし、ようやく4戦目のロシアで初完走(11位)を果たした。

 第3戦のバーレーンでストロールと接触したカルロス・サインツ(スペイン)は「まだ、まわりが見えてないんじゃないか」と語っていた。

 ストロールが所属するのはウイリアムズ。1966年の創立以来、これまで9度のコンストラクターズタイトル、7度のドライバーズタイトルを獲得している。

 その名門チームにストロールは持参金として8千万ドル(約82億円・昨秋当時)を支払ったと言われている。これはウイリアムズの年間運営費の約55%にあたる。「ヤツはカネでシートを買った」と陰口を叩かれるゆえんだ。

 業界では知られた話だがストロールの父ローレンスはファッションブランド「トミーヒルフィガー」の大株主。フォーブス誌の2017年世界長者番付では総資産26億ドル(約2960億円)で782位にランクしている。ちなみに米国大統領ドナルド・トランプは35億ドル(約3994億円)で544位だ。

ランス・ストロールは「ペイドライバー」の評価をどう覆すか?

 これをハンドルを握る御曹司は、どう考えているのか。

 「批判はボクには全く関係がないこと。確かにボクの家はおカネ持ちで、それは否定しない。いくら才能があってもおカネがなければ(この世界では)チャンスは掴めないんだ」

 開き直っているわけではない。これは本心だろう。同時に、モータースポーツの世界の現実でもある。

 ストロールほどではないにしろ、いわゆる「金でシートを買った」例は、いくらでもある。

 例えば昨季、ドライバーズランキング7位のセルジオ・ペレス(メキシコ)。弱小チームのフォース・インディアで101ポイントを獲得した実力派だが、11年にF1デビューした際には、母国の通信企業テルメックス社の支援を受け、1千万ドル(約8億2千万円・当時)をチームに提供。これによりシートを得たと言われている。

 時代を遡れば、F1で通算7度の世界チャンピオンに輝いた「皇帝」ミハエル・シューマッハー(ドイツ)。彼が91年にジョーダンからデビューした際には、15万ドル(約2100万円・当時)の持参金付きだった。

 F1の世界では資金力でシートを得るドライバーのことを「ペイドライバー」と呼ぶ。若干、軽蔑のニュアンスが込められているが、力をつければ、自ずと雑音は消えていく。

 カネ持ちドライバーの真価が問われるのは、これからである。

(にのみや・せいじゅん)1960年愛媛県生まれ。スポーツ紙、流通紙記者を経て、スポーツジャーナリストとして独立。『勝者の思考法』『スポーツ名勝負物語』『天才たちのプロ野球』『プロ野球の職人たち』『プロ野球「衝撃の昭和史」』など著書多数。HP「スポーツコミュニケーションズ」が連日更新中。最新刊は『広島カープ最強のベストナイン』。

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