経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

ハワイのデザインに惹かれ移住。ビジネスの問題点を解決するブランディングデザインで展開する―クニ・ヤマモト(クラレンス・リー・デザイン代表)

イゲット千恵子氏

成熟社会を迎え、子どもの教育、就職、働き方など、さまざまな面において、これまでのやり方が機能しなくなってきた日本。難病を抱えながら息子とともにハワイに移住し、事業家として成功を収めたイゲット千恵子氏が、これからの日本人に必要な、世界で生き抜く知恵と人生を豊かに送る方法について、ハワイのキーパーソンと語りつくす。

(クニ・ヤマモト)大阪府出身。日本のデザイン会社でアートディレクター、グラフィックデザイナーとして活躍したのち、2005年にハワイに移住。クラレンス・リー・デザイン副社長兼アートディレクターとして日本関連のクライアントを担当。創業者引退後の07年から社長兼アートディレクターを務める。ハワイ最大のデザイン賞「AAF Pele Award」(アメリカ広告協会主催)を10年連続で受賞、「AIGA Hawaii’s 5-0 Design Award」(アメリカ・グラフィックアート協会主催)を4回連続受賞、全米のデザイン賞「HOW Interactive Design Awards」を14、15年連続で受賞するなどの実績を残す。15年にはハワイ地元企業の商品を統一ブランドで展開する「111-HAWAI PROJECT」も立ち上げる。

クニ・ヤマモト氏とハワイのデザインとの出会い、ビジネスを始めるまで

ハワイ独特のビジュアルデザインに惹かれる

イゲット 何年前にハワイにいらっしゃったのですか?

ヤマモト 14年前(2005年)なので15年目かな? もともと大阪出身で、大阪のデザイン会社に勤めていました。旅行でハワイに来た時に、いろんな言語や文化が入り乱れたハワイの独特なビジュアルデザインがすごく面白いなって。

 2回目に来た時に、知人のツテで会ったのが創業者で先代のクラレンス・リーというハワイのデザイン界の巨匠でした。彼は3年前に亡くなりましたが、当時、そろそろ引退するという流れで、クラレンス・リーのあとをひきつぐ予定で移住しました。彼の下で働いて、2007年からは代表を務めています。

ビジネスとデザインの融合、ストイックなものづくり

イゲット クラレンス・リーさんの作品には、以前から興味を持っておられたのですか?

ヤマモト あの時代の人たちは職人なので、デザインやものづくりに対する考え方、取り組み方が全然今のデザイナーたちと違いました。

 ビジネスとうまく融合するようなデザインや、ストイックにものづくりをやっていく姿勢などが、今のわれわれのフィロソフィーの原点にもなっています。そんな彼のプロフェッショナルな面に惹かれてこの人は本物だと感じ、彼の作品からも多くの勉強をさせていただきました。

イゲット スタッフも外国人だったのでしょうか?

ヤマモト 当時のスタッフは、クラレンスを尊敬して付いてきたメンバーでした。ハワイでも各分野で3本の指に入るようなディレクターやデザイナーたちがいましたね。様々な人種の個性的なクリエイターばかりでしたので、 彼らを束ねていくのはとても大変でした。

 5年くらいは片言の英語で踏ん張っていましたけど、ある時期から人種や文化や言葉の違いは関係なくなりました。本当に細かな難しい話をする時には、バイリンガルのスタッフにうまく通訳してもらっていますが、大事なのは、言葉よりも思いだということを 学ばせていただきました。

イゲット 今はどういった方たちを雇っているのですか?

ヤマモト デザインの仕事もサービスもビジネスデザインの時代になってきて、いくら優秀ですごくいいデザインを作れる人間をヘッドハンティングしても、考え方が違うのであればもう無理なので、何回も挫折しました。ある時期からは、徹底して育てる、新卒で採って一からたたきあげていくという方針に転換しています。

クラレンス・リー社のブランディングデザインとビジネスとは

クライアント企業がデザインに求めるもの

イゲット クライアントからのオーダーで、コンセプトや希望が漠然としている場合はどのように対応するのですか。

ヤマモト まず、ビジネス内容はもちろん、事業の目的や考え方を 全部聞き出して、クライアントも気付いていない問題点を導き出し、それを解決するデザインを生み出しています。それが、我々が掲げるフィロソフィーの一つである 「ビジネスを成功へ導くデザインを提供する」ということに繋がると思っています。

 クライアントの多くがロゴやコーポレートアイデンティティを持っていなかった時代には、みんなロゴを持とうという流れから、コーポレートアイデンティティが生まれ、企業の価値を高めていくという動きがありました。

 それから、ブランディングデザインの時代に移り変わり、競争相手との差別化や、いかに付加価値をつけるか、ブランドイメージを作っていくかという時代になりました。ですから、ブランディングデザインを経営戦略や事業戦略に生かすという方向へのニーズが増えてきましたね。今後は、こういったビジネスデザインの時代に 間違いなく突入していくと考えています。

イゲット ビジネスコンサルも含めてということですよね。

戦略、ビジネス内容、目的によってデザインを変える

イゲット ハワイでビジネスをされている方だけでなく、他の国のクライアントもいるのですか?

ヤマモト アメリカ本土か日本ですね。最近はスカイプなど、直接会わずとも仕事ができる環境なので、ハワイに関係ない企業から引き合いがきて、仕事をさせてもらうパターンもあります。日本企業のアメリカ進出のためにアメリカ市場に合わせたリブランディングをやらせていただく機会も増えてきましたね。ほとんどのクライアントがハワイに進出しているか、ハワイに何らかの関係のある企業です。

イゲット パッケージデザインだけではなく、他のデザインも手掛けるのでしょうか。

ヤマモト 基本的にうちが手掛けるのはブランディングデザインです。会社や商品、施設など、どういったものにもブランドがありますよね。これらのブランドイメージを作るためのロゴやカラー、ビジュアルなどのコアとなるデザインを行い、それらをガイドラインにすることから始まります。

 そのブランドイメージを形成するガイドラインをベースにして、例えば、店舗ビジネスなら店舗のサインや店内の空間グラフィックに展開するし、自社商品のパッケージデザインから、集客や販促のためのパンフレットや広告などの印刷物、ウェブサイトなどのオンライン関係まで、全てをトータルに制作しています。クライアントのお客様が目にする全てのものを統一したコンセプトの元でデザイン展開することがブランド構築の重要なポイントとなります。

 要するに、クライアントのビジネス内容や事業戦略、目的によって、作るものが全く変わってくるんです。良い商品やサービスが溢れている今の時代は、見た目のかっこいいものを作るだけでは意味がなく、ブランド力を高めるために必要なあらゆることをデザインしていくというのがわれわれの仕事だと考えています。

ブランディングデザインの力を活かす「111-HAWAII PROJECT (ワンワンワン・ハワイ・プロジェクト)」

ハワイへの貢献と恩返しを目的としたプロジェクト

 

イゲット クニさんたちが手掛けている「ワンワンワン・ハワイ・プロジェクト」というのはどのようなものですか?

ヤマモト 創業50周年(2015年)の時に、われわれの力を活かしてハワイに貢献、恩返しできるようなことを何かしようというのが企画のスタートでした。

 ハワイには中小零細やファミリー企業が多いじゃないですか。小さなビジネスだけど良いものづくり、良い商品を作っているので、そこをサポートできるしくみができたらと。そこで、通常はバラバラになっている小さなブランドを、一つの「ワンワンワン・ハワイ」という統一ブランドで、商品開発のお手伝いから商品化、販売までします。

イゲット ご当地ブランドみたいなものですか。

ヤマモト そうですね。商品の売り上げを、ハワイの環境文化の保護活動に役立てる仕組みを作ることで、地元のものづくりをサポートして、メイド・イン・ハワイ自体の価値を高めていきます。ハワイのリピーターは、ハワイの為に何かしたいという思いの人が多いので、商品を買うだけでハワイに貢献できるという仕組みを提供しています。

イゲット 「ワンワンワン」はどういう意味なのですか?

ヤマモト 地元企業の価値を高めて消費者、観光客が喜んで、それが地域社会をよくすること。3者がウィンウィンでハッピーになるというのが、ワンワンワンのコンセプトです。統一ブランドの元で商品開発して、ダイヤモンドヘッドの頭をした犬「ダイヤモンド・ヘッドック」というキャラクターを作り、商品パッケージに このキャタクターの印が付いていたらハワイ支援商品ということがわかるようになっています。

イゲット うちもオリジナルのお茶持っているのですが、ここのブランドに入れてくださいとなったらどういう流れになりますか?

ヤマモト まず申込書に記入していただいて、法的な条件をクリアしていたら書類審査します。ハワイのメーカーさんの場合、一から商品開発するコストは掛けられないので、既製商品をプチリニューアルします。そしてワンワンワンというブランドでPRを行い、知名度を上げてオリジナル商品が売れるようにしていきます。

日本人が選ぶランキング「ワンワンワン・ハワイアワード」とは

ヤマモト 昨年からスタートしたのが、このワンワンワン・ハワイアワードです。日本人がオンラインでハワイのレストランやショップをランク付けするハワイランキングを立ち上げ、ハレクラニでみんなタキシードを着て授賞式を行いました。こちらのメディアが主催するアワードは、広告主が賞を勝ってしまったり、ローカル視点で「ちょっとどうかな」というものがあります。なので、完全に日本人が選ぶランキングにしようということになりました。

イゲット どれくらいの投票数があったのですか?

ヤマモト 去年は1年目で約2万5千票位でした。票数に応じて、ハワイの団体に寄付する金額が変わるという形式をとっています。ハワイ企業はまだまだサービスが悪かったりするので、サービスや品質の向上を図り、日本人視点のランキングとすることで地域活性化させようというのが狙いです。

協賛していただいたスポンサーから、ハワイ航空券が当たったり、ハレクラニ宿泊券が当たったりと、投票者にもメリットがあるようにしています。

イゲット どうやって広めているのですか?

ヤマモト これはハワイ州観光局の公認プロジェクトとして活動してます。今、日本の国内で、年間200件くらいハワイイベントがあるらしいので、そうした場所でハワイ州観光局のブース内に投票所を設けてもらっています。

 今年は日本のテレビ番組、「ハワに恋して!」と連携して、番組内で投票を呼び掛けてもらっています。あとは昨年の結果をランキング本にして、日本の書店で売っています。投票期間、ハワイで盛大な授賞式、その後にランキング本の出版、という流れをワンサイクルでやっています。

ハワイは世界的に見ても面白い場所。デザイン大好きだからずっと働きたい


イゲット
 クニさん自身もデザインをしているのですか?

ヤマモト 現役でやっています。自分でもの作り、会社の経営や組織作り、こういうボランティア系の仕事もやっていると時間がなくなってきますが。

イゲット ずっと働いてる感じですか?

ヤマモト デザイン大好き人間なのでずっと働いても苦痛ではないですね。

イゲット 後継者は育てていらっしゃるんですか?

ヤマモト たたき上げで育ててきたデザイナーが、優秀なディレクターとなり、今では経営側に入り、ヴァイスプレジデントをやってくれています。パートナーみたいな関係でやってますが、私自身もまだ20~30年は頑張りたいですね(笑)。

イゲット 人生100年時代ですからね(笑)。ハワイで働くのと日本で働くことの大きな違いはありますか?

ヤマモト う~ん、なんでしょうね。ハワイはのんびりした環境だからこそ、努力しないとうまく行かない。でも人の何倍も誰にも負けない努力をしていたら道が開けるという部分はありますね。ハワイは世界的に見ても面白い場所だと思いますし、いろんなデメリットもありますが、自分の考え方次第で日本よりも 大きくプラスに変えることができる場所だと実感してます。大きな違いということでは、日本で働いてた時よりもストレスを感じないことかもしれませんね。ハワイの温暖な気候や風、常に大自然に触れることができる環境は、我々のようなクリエイターにとっては 良いアイディアを発想しやすくなるので、仕事の拠点にするには最高の場所だと思います。

(いげっと・ちえこ)(Beauti Therapy LLC社長)。大学卒業後、外資系企業勤務を経てネイルサロンを開業。14年前にハワイに移住し、5年前に起業。敏感肌専門のエステサロン、化粧品会社、美容スクール、通販サイト経営、セミナー、講演活動、教育移住コンサルタントなどをしながら世界を周り、バイリンガルの子供を国際ビジネスマンに育成中。2017年4月『経営者を育てハワイの親 労働者を育てる日本の親』(経済界)を上梓。

イゲット千恵子氏の記事一覧はこちら

経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る