地元資本の住宅メーカーとして九州で建築棟数トップクラスを誇るシアーズホームグループHD。顧客と社員双方の満足度を高めることで、コロナ禍でも成長を続けている。
成長戦略のカギは顧客と社員の満足度向上
2019年末に完成した新本社ビルを訪ねると、2階中央部にある本格的なカフェスペースが目を引いた。ネーミングは「TSUDOI(集い)カフェ」。香り豊かなコーヒーやお茶を社員が自由に楽しめる。
「お客さまが満足する家づくりには営業、設計、インテリアコーディネーター、工事などの各担当が垣根を越えて集い、コミュニケーションを取ることが大切ですから」と丸本文紀社長。フロア全体も仕切りのないオープンスペースだ。
「Smart Growth」(賢明なる成長)を掲げる住宅メーカーのシアーズホームグループHDの業績が好調だ。20年4月期の売上は約193億円、4年前は約100億円だから急成長といえる。現在、グループ全体の社員数は約450人。今後、毎年40~50人採用する計画がある。
丸本社長は「地元資本の住宅会社としては、九州でナンバーワンになったと思います。3年後には300億円、いずれ1千億円を目指します」と力を込める。成長し利益を上げてこそ、雇用を増やし、顧客サービスを充実でき、税金を納め、スポーツ支援などの地域貢献も可能となる「Smart Growth」を掲げる理由がよどみない。
同社の強みは分かりやすい住宅のラインナップにある。高気密・高断熱や自由設計の高級住宅、省コストタイプ、低価格の建て売りなどお客さまの資金計画に沿って500万円単位で柔軟に提案できるのだ。「松竹梅戦略」と名付け、他社が入り込む隙を与えない。「熊本では圧倒的シェアとなった。次は魅力的な市場である福岡で一番になりたい」と語る。
福利厚生を充実させ仕事では甘えを許さない
同社では社員の人間力への期待も大きい。「社員が幸せを感じて初めて、お客さまに幸せな住宅を提供することができる」という考えに基づき社員満足度を重視。
①福岡、熊本それぞれ平均年収より1~2割多い所得、②完全週休2日制や有給休暇取得促進、③いい仲間、職場づくり、④適正、公正な人事評価の4つの柱を掲げて整備している。
「住宅は契約し、建て終えてからが本当の仕事」との理念も徹底している。新築住宅が完成すると、施主は親族や友人、地域の人たちを招いて自慢する。住宅そのものに加え、「営業マンを自慢されてこそ本物の営業。そのために数カ月単位でなく、10年、20年の付き合いができる営業、会社でなければならない」と丸本社長は言い切る。
住宅と営業の評価が高ければクチコミで新たな仕事につながる。CS専門部署を設け、担当営業マンが定期的に訪れ、苦情や問題がないかの聞き取りができているかをチェックしているという。「所得も高く休みもあるが、甘やかすことはしない」という方針が、昨年856棟、これまでに約5500棟以上の施工という数字に表れている。
次世代の経営者育成に向け持ち株会社を設立
コロナ禍で住宅施工に影響はなかったのか。その問いに丸本社長は、「初期段階で対応できました」と即答。対面での営業は難しいと予想してパソコンを150台ほど用意し、住宅購入に関心のある方々に配布した。リモート営業である。使い方が分からないお客さまには、その度に営業マンが足を運び丁寧に説明を重ねて信頼を得た。今期は10%以上の売り上げ増を見込んでいる。
居住に関わる事業にも積極的に挑む。福岡市の博多駅近くに19年滞在型ホテルを2棟開業。来年には東京ディズニーランド近くの葛西駅に同タイプのホテルをオープンさせる予定だ。「家族連れが部屋で食事を楽しめるホテルを目指した」と話す。
M&Aで住宅リフォーム会社と左官工事などで高い技術を持つ2社をグループ傘下に加えた。大工などの職人不足への危機感が強く、大工見習の社員採用も始めた。「熊本県の大工の平均年齢は60歳くらいで、激減する恐れがある。大工や左官などしっかりした職人を抱えて自社で施工できる組織にできれば、いずれ大きなアドバンテージになるはず」と準備を怠らない。
19年2月、持ち株会社シアーズホームグループHDを設立し、主力のシアーズホームなど計9社を傘下に置く。「将来に向け次世代の経営者を育成しなければならないと決断しました。成長し規模を拡大し、やる気のある若い人材に高い地位を与える。企業の活力を育み続けるために不可欠です」。
10年、20年先の経営環境の変化を見据えながら、成長戦略を着実に進めている。
会社概要 設立 1989年1月 資本金 1億円 売上高 193億円 所在地 熊本県熊本市南区 従業員数 450人 事業内容 住宅建築事業、住宅リフォーム事業、公共工事事業、不動産事業、環境事業 https://searshomegroup.co.jp |
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