経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

脱炭素化社会へ、アジア圏での 再生エネルギーグローバル企業へ― Abalance

Abalance取締役CEO 龍 潤生


Abalance(エーバランス、東証二部上場)は、太陽光発電を中心とするグリーンエネルギーの総合カンパニーだ。創業時から「社会課題の解決」を企業ビジョンとして掲げており、現在は脱炭素化社会の実現に向けESG(環境対応、社会責任、企業統治)に基づいた経営を実践し、SDGsにも積極的に取り組んでいる。

Abalance取締役CEO 龍 潤生(りゅう・じゅんせい)
Abalance取締役CEO 龍 潤生(りゅう・じゅんせい)

変化する社会に対してグリーンエネルギーで支援

 アジア圏における再生エネルギーのグローバル企業を目指している同社が最も注力している領域は、太陽光発電事業だ。同事業の第1ステップは、FITによる設備認定済太陽光発電所を自社保有して安定収益を確保することだ。販売対象も含めた開発案件も数多くあり、国内の太陽光発電所の発電量では上場企業の中でもトップクラスを誇る。

 第2ステップは、蓄電池やソーラーパネルの増産、そして風力やバイオマスを含めたグリーンエネルギーの領域を広げること。さらに仕上げとなる第3ステップは、アジア圏やアフリカにおける再生エネルギーマーケットで圧倒的なプレゼンスを確立することである。持ち前の技術開発力に加え、龍潤生CEO以下の経営陣がアジア圏で豊富な人脈を持っているのも強みになっている。

 日本のエネルギー政策は2011年の東日本大震災を機に、グリーンエネルギーの推進に大きく変化した。龍CEOは「東日本大震災や今のコロナ禍など、社会に大きなインパクトが起こった時に重要なことは、そこでの教訓を無駄にしないことです」と言う。

 日本は50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロする目標を掲げており、そこで一層、注目されているのがグリーンエネルギーだ。

ベトナムの太陽光パネルメーカーを連結子会社に

 この数年で太陽光発電のモジュールの価格は10分の1以下になり、発電効率も上昇している。Abalanceでは、太陽光パネルを生産するベトナムのVSUN社を連結子会社化し、生産体制を強化した。同社は、日系企業としては太陽光パネル、モジュールの生産量ともに最大だ。その連結効果でAbalanceの売上高、利益が急増し、株価はこの1年で6・5倍に急騰した。

 「株式市場から高い評価を受けることも大事ですが、何より今は再生エネルギーによって地球環境保護に貢献する事業を行い、それが企業価値を高めるウインウインの関係を構築したいと思います」

 同社では昨年、経常利益の3~5%を社会貢献に使うことを決めた。その一環として、新型コロナの影響でマスク不足が社会問題化した昨年春には、病院などの医療関係機関や福祉施設に大量のマスクを寄贈した。さらに、東京・品川区にある本社ビルのロビーでは、スタッフが無償でマスクを配布したという。

 Abalanceは今後、売電事業を強化する。そのために当面、太陽光発電の発電量を年間100メガワットに増やすことが目標で、これは国内の発電会社の中でトップ20に入る規模だ。

 「国が50年の温暖化ガス削減目標を達成するためには、太陽光発電で500ギガワット保有することが最低条件だと思います。政府が立てた方針を実現するのはわれわれ産業界です。当社は当面、1ギガワット保有を目指し、50年には8ギガワットを達成したいですね。もし実現できれば、国の消費エネルギーの1%程度になります」

Abalance取締役CEO 龍 潤生

導入コストが下がった太陽光発電にチャンス

 創業以来、時代の変化に対応しながら成長しているAbalanceだが、その原動力は、一貫して変わらない企業理念だ。

 「グリーンエネルギーで社会に貢献しよう、という想いで創業しました。それは今も変わっていません。東日本大震災やいまだに終息が見えないコロナ禍など難しいこともたくさんありましたが、この15年間やってきたのは、企業理念を実現するために必要なことだけです。やるべきことは変わっていない。それはこれからの30年も変わることはありません。重要なのは、理念を従業員全員が共有していることです。全員がブレることなく目標に向かって一丸となって事業に取り組んでいけることが、当社の原動力であり、推進力だと言えます」

 この1年、そしてまだまだ続くと思われるコロナ禍だが、それも改革のチャンスと捉えている。従来、太陽光発電は電力供給が安定しない、割高だと言われてきた。しかし、太陽光パネルの製造原価はこの10年で15分の1にまで下がり、工事費を含めて従来の3分の1程度の投資で太陽光発電を導入できるようになっている。現在の逆境はグリーンエネルギーの普及、発展にとって大きなチャンスかもしれない。Abalanceは新しい時代のフロンティアになろうとしている。

会社概要
設立 2000年4月
資本金 8億171万円(2020年12月11日現在)
売上高(連結) 235億円(2021年6月期見込)
所在地 東京都品川区
従業員数 グループ日本国内105人(ベトナム現地1,200人)
事業内容 グリーンエネルギー事業、建設機械事業、IT事業
https://www.abalance.jp/

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