経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

アイデア出しの技「云い出し」と「云い換え」って?―加藤昌治

【連載】『考具』著者が教える、自ら企画し行動する社員の育て方(第3回)

皆さま、こんにちは。加藤昌治です。社員あるいは部下の方々から「アイデア入りの企画」を出しやすくする環境マネジメントを実践的に考える本連載。第3回は、「アイデアをたくさん出すのはわかった。ではどう出せばいいのか」がテーマ。キーワードは「云い出し」と「云い換え」です。(文=加藤昌治)

加藤昌治氏のプロフィール

加藤昌治
(かとう・まさはる)1994年広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(CCCメディアハウス)、『発想法の使い方』(日経文庫)、ナビゲーターを務めた『アイデア・バイブル』(ダイヤモンド社)のほか、新著『仕事人生あんちょこ辞典』(共著:角田陽一郎。KKベストセラーズ)など。

今回も、まずは読者からのご質問と前回の復習

質問:前回の記事で、「アイデアって単なる選択肢」とか「選択肢だから、できるだけたくさん出した方がいい」というのは理解できたのですが、実際「アイデアを出す」にはどうすればいいのでしょうか?

質問:部下に「アイデアを出せ」と指示したら、「出し方を教えてください」と言われてしまい、答えられませんでした。どう答えればいいのですか?

 そうですよね。「アイデアを出せ」って、かなり抽象度の高いオーダーです。自分自身の十ウン年前を思い出しても、最初全然ちっともできませんでした。でも、できるようになります。つまり部下の皆さん、実は全員「出せるポテンシャル」はお持ちです。アイデアを思いつく能力(?)は天性のモノではありません。練習次第で、結構良い感じにできるようになります。しかしながら「やったことのないことは、すぐにはできない」のも事実。

 ということで、今回は「アイデアを出しやすくする方法:個人版」がテーマです。ちなみに、「アイデアを出しやすくする方法:複数人数版」は次回の予定です。

 最初に、「アイデアって何だっけ?」ですが、こちらはジェームス・W・ヤングの名著『アイデアの作り方』(CCCメディアハウス)の定義を援用します。それは、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである」。

 もっと言ってしまえば「組み合わせでしかない」ものであり、さらにワタクシ的に補足すると、既存の要素とは「体験・経験・知識」です。この知識には市場データや競合データなども含みます。既存の、つまりすでに知っていることは、皆さんの部下で人生経験ゼロ、仕事上の経験ゼロな方はまずいないでしょう。だからやり方を知っていれば、そして(ちょっと)練習すれば、いくらでもアイデアはあるし、出ます。

アイデアの出し方には、「云い出し」と「云い換え」がある

 「アイデアを出す」は、①体験や経験など既存の要素を「思い出す」、②思い出した既存の要素を組み合わせる、③組み合わせた「アイデア」を描き出す、という3ステップ構造になっています。

 この大原則の下、個人技としてのアイデアの出し方には2種類あります。まずこれを整理しておきましょう。1つ目は「云い出し」の技、2つ目が「云い換え」の技です(「云う」の漢字表記は個人的な趣味主観によるものです)。この2つの技をそれぞれ使う、あるいは連続して使うことで、アイデアという選択肢をたくさん生み出すことが可能になります。ただし、前回も言及したように、この時点ではまだ単なるアイデアなので、その全てが素晴らしいわけではありません。

 まずは「云い出し」。これは、白い紙(あるいはデジタル上で)、自分が思いついた、思いついちゃったアイデアをスケッチして描くことです。自分の中から出てきたアイデアを書き留めるので「云い出し」になります。これはA案、B案、C案……といったイメージで、自分の脳裏にすでにある経験・体験などアイデアの素を組み合わせる工程ですね。

 続いて「云い換え」。こちらはA´(ダッシュ)案。さらにA´´案、さらにさらにA´´´……´案まで含みます。B´案、C´案についても同様。もともとのA、B、Cから派生して生まれるアイデアです。

 「派生するってどういうこと?」と思われた皆さん、アイデア(スケッチ)を改めて見てみると、アイデアはいくつかのパーツによって構成されていますよね。第2回の記事(「アイデアは大雑把でいい。『質より量』でいい」)でサンプルとして示した「毛筆なホワイトボードマーカー」というアイデアは、「毛筆」「ホワイトボードマーカー」というパーツによって構成されています。

 「云い換え」とは、こうした構成要素を「わがままに、他の要素に置き換える/入れ換える」あるいは「描いてない要素を、わがままに付け足す」「描いてある要素を削除してしまう」こと。これが「云い出し」のA案に対してA´案と記載している所以です。「云い換え」のアイデアは、元ネタである「云い出しアイデア」がないと始まりません。それもあって、アイデア出しの基本技は「云い出し」になります。わがままについては、第1回の記事(「『企画』と『アイデア』は同じモノではありません」)を参照。

 今回は「云い出し」の技(の練習方法)について詳しく解説していきます。

「云い出し」の技――「属性列挙法」を覚えよう

 ここでようやく発想法の出番です。これは身体とアタマの動かし方、あるいは道具を使って、自分の記憶から既存の要素を引っ張り出す方法・組み合わせる方法です。ちょっと面倒なのは、道具と部下の皆さんとの間には相性があること。どうもしっくりこないな……があるんです。

 この辺がスポーツの道具だったり、英会話教材と似ているところです。それぞれきちんと開発されていると思うのですが、実際に使ってみるとピタッとハマったり、ハマらなかったりします。なので、上司の皆さんとしては、「絶対使える発想法だから、全員これでやってみて!」はちょっと乱暴です。2つか3つは予習をしていただいて、人や場合によって道具を使い分けていただくと、うまくいくケースが増えます。

 そのための道具について代表的な「属性列挙法」をご紹介します。なお、属性列挙法以外にもたくさんあります、道具。とても紹介しきれないので、書籍などを当たっていただけますと幸い。拙著では『考具』『発想法の使い方』、お手伝いした本に『アイデア・バイブル』などがあります。またYouTubeなどにもいろんな方が発想法について解説している動画がありますよ。

ステップ1:課題の「属性」を書き出す

 では、「ホワイトボードマーカーの新商品を考える」という例で始めます。まずアイデアを出す時の鉄則の1つが、「具体的にする」こと。お題自体をバラバラにすると、アイデアが出やすくなります。

 ステップ1として、課題の「属性」を書き出します。超ベーシックなところからいくと、下記のようになります。

・名詞(的属性)──全体、部分、材料、製法

・形容詞(的属性)──性質

・動詞(的属性)──機能

 このように、「ホワイトボードマーカー」を属性ごとに分割して書き出します。こちら発想作業前の準備段階。ちょっと面倒ですが、ここで少々時間を使うと、後が楽になる構造です。2時間使う必要はありませんが、5分だと短い。15~20分は使ってみてください(特に慣れないうちは)。また、このリストアップ、部下の皆さんにも協力願うのはありですね。少しかみ砕くと、以下の質問に対して答える要領で、できるだけ多く要素=アイデアへの補助線をリストアップする作業です。

・名詞的属性=モノ・ブツとして見るとなんと云える?

・形容詞的属性=五感で感じたことを言葉にしてみたら?

・動詞的属性=機能とか働きの側面で捉えたらどういうものになる?

●名詞的属性の例

●形容詞的属性の例

●動詞的属性の例

※図版は『発想法の使い方』(日経文庫)より転載

 こんな感じで、見ての通りの順不同です。補助線なので、厳密さは必要なし。あるいはこの「属性」はどこに入るのかなと迷うケースもあるでしょうが、直感で入れてもらって結構です。また、全部使えるかどうかはまだわかりません。だからここも「できるだけたくさん」あった方が考える側にとってはありがたいです。

 余談ですが、いわゆる機能的性能が均質化する傾向にある市場(の商品・サービス)においては、「形容詞的属性」や「感性的価値」が商品開発や販売促進施策におけるアイデアのヒントになることが多くなる可能性大です。機能的にはほとんど同じだけど、ちょっとした見た目や商品名が違うだけで売れ行きが違ったりします、の裏返しです。

 属性の分け方は他にもたくさんあります。

・性質的属性──内容、構造、色、形、手触り、音、味、香り、空間、密度など

・プロセスの属性──マーケティング、製造、販売、機能、時間など

・社会性の属性──責任、政治、タブーなど

・価格の属性──製造者、卸売業者、小売業者、消費者にかかるコストなど

・生態環境の属性──環境に良い、あるいは悪い影響など

ステップ2:書き出した属性をヒントにアイデアを出す

 ステップ2として、書き出した属性をヒントに、実際にアイデアを出します。出したアイデアは、忘れずに「アイデアスケッチ」として描き留めます。

 例えば、「丸いボディ(のホワイトボードマーカー)」とか、「六角型ボディ」「三角型ボディ」「ぶっとい軸」「細い軸」「軸がない?」……「マウスがマーカー的になっている」など。

 最初はいたってフツーのアイデアでOKです。しつこいですが出てきたアイデアで、「使えそう」なものは残念ながら少ないです。部下の皆さんが「数を出すのに慣れる」トレーニングになる、と考えてたくさん出す。忘れないで欲しいのは、自由に、わがままに出すこと。まだ企画ではないので、後でいくらでも丸められますから。

 「個別の属性×問いかけ」1つにつきアイデア1つ、である必然性もまったくありません! 2つでも10個でも。反対に「1つも思いつきません……」もあります。それはそれでOK。遠慮なくスルーしてください。また、アイデアをツラツラ出していると、急にポンと跳んだアイデアが思いついちゃうこともあります。それ! それが欲しい! 一切の制限なしにわがままになってみてください。

 「考えるはスポーツ」です。これを読みさえすれば誰でもすぐできます! と断言できるものはありません。練習と実践で磨いていくのみです。今回は一例としての「云い出し」技――属性列挙法のご紹介でした。次回はアイデアの出し方の「後編」に当たる、「云い換え」技についてご紹介します。

※本連載では読者の皆さまから加藤氏へのご質問もお待ちしております。質問は全て加藤氏にお届けします。その質問、送ってください!

質問送り先:企画編集担当・大澤osawa@keizaikai.co.jp(タイトルに「加藤氏連載の質問」とご明記のうえ、本文に「質問内容」と、記事の感想なども頂けたら嬉しいです)