【連載】勝てる! 最強営業組織のつくり方
TORiXの高橋浩一です。第3回の今回は、前回の記事「勝ちパターンをつくるには、まず『接戦』状況を見極めよ」をもう少し掘り下げつつ、営業組織で勝ちパターンを活用する際に留意するべきこと、進捗確認する際に見るべき点について説明していきます。まずは営業メンバーの目線を揃え、勝ちパターンを共通言語化することからです。(構成・文=大澤義幸)
高橋浩一氏のプロフィール
組織内の目線を揃え、勝ちパターンを共通言語化する
前回の記事(「勝ちパターンをつくるには、まず『接戦』状況を見極めよ」)では勝ちパターンのつくり方についてご説明しました。もっとも、これを使って営業組織、営業メンバーが成果を出すには、組織内のマネージャーやメンバーの目線を揃えることが必須の条件となります。
例えば、現状が見えていないなら「見える化しよう」、人材が育っていなければ「人材育成しよう」、目標達成力が低ければ「目標を達成できるようコミュニケーションを取ろう」という状況になります。しかし、ここで目線が揃っていないと、成果を出すための力の入れどころがずれてしまいます。何でもかんでも見ようとして、ツールを結局使いこなせなかったり、どんな人材育成をするかという焦点を絞れなかったり、目標を達成した人しか褒められないコミュニケーションを取ることで、上位者2割以外はなかなか成果が出ない、という状況になります。
私が経営者の皆さまからよく頂く質問があります。1つ目は「営業メンバーが成果を出すために、いつ何をするのが最もインパクトがあるのか」。ここに絶対の正解はありませんが、もしこの答えがメンバーによってバラバラであるなら問題です。頑張っているのに成果が上がらないメンバーと、マネージャーの目線が異なるようでは改善のしどころも変わってきます。
よくあるのが、マネージャーがメンバーを指導する際に、カレンダーの商談予定ばかりを気にしてしまうことです。確かに頑張っても成果の出ない原因の一つに、活動の量・件数が少ないという問題があります。しかし、成果は量だけでつくられるものではありません。この固定概念があると、「とにかくアポを入れよう」という抽象的なアドバイスで終わってしまいます。
よく頂く質問の2つ目に「日々の営業活動で、メンバーはどうしたらマネージャーから褒められるのか」があります。この評価基準については、目標を達成したり大型受注をした時にマネージャーがメンバーを褒めるのは当然ですが、これらは日常的に発生するイベントではありません。裏を返せば、それ以外の時はまったく褒めないことになり、メンバーのモチベーションが上がりません。
このような状況に際して、営業組織内の全員が同じ回答ができるようであれば、成果も変わってきます。これが勝ちパターンの「共通言語化」です。5W1Hで考えていきましょう。
前回の復習、勝ちパターンは5W1Hでつくる
前回の復習になりますが、弊社の場合、勝ちパターンは5W1Hに照らして、①どんな場面の、②どのタイミングで、③誰に対して、④何を、⑤どんな風にやると成果が出る。⑥なぜなら~だから、という構成で考えています。
これを具体的な行動に落とし込んでいくと、①初回訪問直後の、②2日以内のタイミングで、③カウンターパートのお客さまに対して、④要件整理を記載した1枚紙を、⑤メールで送った後に電話で「網羅感・具体感・優先順位」をすり合わせ、修正版をすぐに再送する。⑥なぜなら、無形商材のコンサルティングにおいては、お客さまが「数々の認識のズレ」を過去に体験してきているから、となります。
これも繰り返しになりますが、勝ちパターンは「強制指示」ではなく、「うまくいかない人へのアドバイス」という位置づけで考えていきましょう。
重要フェーズのどこで「停滞」しているかに注目
アラートダッシュボード上で見ていきます。弊社の場合、商談の全てのステータスで頑張るのではなく、商談の「提案中」(ステータス2)の「要件整理済」(フェーズ4)で頑張るという共通言語があり、そのフェーズ4前後(フェーズ3「ニーズヒアリング済」、フェーズ5「案件BANTCH特定済」)に注意します。特に注目したいのが、この辺りのフェーズでの「停滞」です。
例えば、弊社のようにフェーズ4を重要フェーズとする場合、その前の3から4への移行の際に停滞している案件や、4から5へと進まない案件を確認していきます。すると、勝ちパターンを実行する上で、どこで何に躓いているかが明確になります。逆に5,6,7辺りで停滞が見られれば、勝ちパターンを実行するフェーズは過ぎているが何らかの問題が起きていると判断できます。弊社では特にフェーズ3以降のメンバーの行動を「見える化」しています。これにより、勝ちパターンの実行度合いがわかります。
先ほど誤った評価基準の設定の仕方について触れましたが、マネージャーはこのフェーズの前進(商談の進展)について褒めるようにすれば、メンバーも商談を前に進めることをより強く意識するようになります。
理想的なのは、フェーズを前進させていることが、勝ちパターンの定石を踏んでいるという状態にすることです。「商談を前に進めていきましょう」という号令を掛けて、「きちんと前へ進んでいるか、を追いかけている状態」こそが、「勝ちパターンの実行度合いを確認している状態」なのです。
これにより、メンバーは自分が今、何をやるべきなのかが明確になります。うまくいっていない人はうまくいっている人を参考にできます。やるべきことがわかっていてもスキル不足でうまくいかない人には、商談のお手本動画を制作するなどして、マネージャーから「これを見て勉強しましょう」「この動画のとおりにできるかロープレのテストをしましょう」などと指導できるようになります。
勝ちパターンが明確になると、勝負どころがわかる
重要フェーズ周りのフェーズアップや停滞に注目し、勝ちパターンが明確になってくると、勝負どころがわかってきます。意外と多いのが、商談の終盤を勝負どころと考えている人です。これは先方の意思決定者と会うところを勝負どころと捉えているためですが、実際にはそんなに簡単に意思決定者には会えません。意思決定者と会えるかどうかは、その前の商談の進め方で決まります。
本当の勝負どころは想定しているよりも前(中盤辺りまで)であることが多いものです。にもかかわらず、勝負どころを過ぎたことに気づかずに、プレゼンの提案書作成に時間をかけたり、価格が高いと言われてマネージャーに値下げの承認を取ろうとしたり、一生懸命頑張っている人がいます。失注が確定していて負け戦になっているかもしれない時に、いくら頑張っても成果にはつながりません。
先ほど弊社の例を挙げて、「商談の全てのステータスで頑張るのではなく、商談の『提案中』(ステータス2)の『要件整理済』(フェーズ4)で頑張るという共通言語がある」と話しました。営業組織としていつどこで何をやるべきかがわかれば、勝負どころに集中できるようになります。全方位的に全てのことを頑張るのは非現実的なので、ポイントを絞って行動する必要があるのです。
ここから勝敗の要因を集計・分析していくことで、勝ちパターンが正しいかどうかを検証します。これが営業組織を強化するための組織学習です。