経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

第13回 17歳高校生社長 衛星データで災害調査の効率化狙うーUNeX 伊藤拓真

UNeX 伊藤拓真

進撃のベンチャー徹底分析

シリコンバレーで起業し、ベンチャー企業や投資家に関する豊富な情報を武器に活躍するハックジャパンCEOの戸村光氏。本連載では、独自の視点から同氏が注目する企業を毎回取り上げ、その事業戦略や資金調達の手法などを解説する。

伊藤拓真
UNeX 伊藤拓真

挫折が高校時代の起業につながった

 今回紹介するのは、大阪の名門校、北野高校に在籍する高校2年生の若き学生起業家だ。弱冠17歳にしてUNeXの代表取締役を務める。同社は衛星データを利用した広域災害の損害調査を行うプラットフォームを開発している。親族が保険会社に勤めていたことから、2019年に東日本に大きな被害を与えた台風の際に損害の調査業務の多忙さを知る。また、災害が起こって3年近く経った今でも、十分な保証手当が支払われていないため、ブルーシートの家屋が存在する。その原因が災害後の調査の非効率さにあると考え、事業を開始した。災害調査を効率化し、より早く元の生活に戻ることができる社会を目指している。今回は伊藤拓真氏の創業経緯とこれからの挑戦に焦点を当てる。

1.独学でプログラミングを勉強。インターン応募は20社全落ち

 伊藤氏は名門高校に進学するものの、同世代で活躍する海外の起業家と出会い、これまでの高等教育の延長線上では、彼らには到底かなわないと考える。何から始めれば良いのかを試行錯誤する中で、プログラミングを独学で勉強する。半年の歳月を経てウェブサービスを独自で開発できるまでに成長。実家から通える関西のベンチャー企業へインターンの応募をするも、年齢を理由に20社全落ちをする。

2.世界で挑戦するため、レールから外れ、起業を決意

 年齢という制限から自身のスキルに見向きもされない現状に絶望を感じ、企業で働くことを断念。自身の力を最も理解しているのは自分であり、自身のスキルを有効活用するには、自分自身で会社を立ち上げるしかないと考え、起業を決意する。最初は個人事業主としてウェブ開発の強みを生かし、関西圏にある中小企業に制服を着て営業活動を行う。初めの3カ月は案件を獲得することができず苦戦。実際に営業にいった経営者からのアドバイスもあり、自分が不足している、セールスレターの書き方や営業時の立ち振る舞いなど、失敗をもとに反省と改善を繰り返すことで、案件の獲得に成功する。案件獲得後も、業務をこなす上でのコミュニケーションやプロジェクトをいかにスムーズに進めていくかなど、仕事に対する姿勢を案件をこなしながら学んでいった

3.学生向けサービスを開発するも市場が小さくピボット

 受託開発事業は安定して軌道に乗るものの、自身の経営スタイルがスモールビジネスだと気づく。このままでは当初目標としていた海外の同世代起業家と肩を並べることは難しいと感じて、それまでの受託開発をメインとしてきた方針を転換、自社サービス開発を開始する。

 自身が開発スキルを持っていたものの年齢制限でインターンシップの内定を獲得できなかった原体験の課題から、若者によりスポットライトがあたるような社会を実現したいと考えるようになった。そのためには若者へのキャリア教育と、採用条件に年齢制限がないベンチャー企業と即戦力の中高生をマッチングすることができるプラットフォームが必要と考え、事業を開始する。しかし、ピッチイベントで出会った投資家から、市場規模が小さすぎて投資ができないと断言され事業のピボットを決意する。

急拡大が期待できる人工衛星の市場

4.チャットワーク創業者からのエンジェル投資を獲得

 シリコンバレーにいる同世代の起業家と同じ土俵で勝負したい、人類の発展に貢献したいと強く思うものの、アイディアが定まらず苦悩する毎日。学校の壁の中に住んでいては、行動範囲が変わらず付き合う人も固定されるので、事業アイディアは出てこないと思い立ち、全国の経営者や投資家が集まるイベントに夜行バスで駆け巡る。多くの投資家に自身のアイディアをピッチするも相手にされない日々が続く。そんなある日チャットワーク創業者の山本敏行氏と出会い、事業プレゼンをしてエンジェル投資を獲得する。

5.衛星データで災害調査の効率化を狙う

 原体験として、幼少期から幾度となく体験し恐怖を感じた災害から日本を守りたいという思いで、衛星データで災害調査を効率化する事業を発案、開発を始める(22年6月をメドにサービスを開始する予定)。これまでは大手企業にしかできない事業領域だったが、人工衛星の打ち上げ費用は年々安くなっており、ベンチャーキャピタルから資金調達を受けるスタートアップが自社で人工衛星を打ち上げ、ビッグデータをもとに事業展開するケースは世界的にも増加している。5Gの世界が始まり、これまで会話しなかったモノとモノにコミュニケーションが生まれ、これまで以上にビックデータの活用が重要視されてくる中で、人工衛星の市場は急拡大すると見られる。

 伊藤氏の挑戦はまだ序章にすぎない。同社のデータ活用によって災害後に人々が、暮らしをこれまで以上に早く取り戻せる日がくることを願ってやまない。