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ロボティクスの最先端技術で次世代の電動車椅子を開発 LIFEHUB 中野裕士

LIFEHUB 中野裕士

二足立ちでエスカレーターにも乗ることができる、次世代の椅子型モビリティを開発中のLIFEHUB(ライフハブ)。ロボティクスをはじめとした最先端テクノロジーによるモビリティ開発で、これまでの常識を覆し、「人類の身体的な制約からの解放」というミッションを実現していく。中野裕士CEOにこれからのビジョンを聞いた。文=垣内栄 写真=西畑孝則(雑誌『経済界』2022年12月号より)

LIFEHUB 中野裕士
LIFEHUB 代表取締役CEO 中野裕士 なかの・ひろし

次世代のモビリティ製品で人間の脚の機能を進化させる

 「ロボティクスの技術を人が不自由を感じていることに役立てたいんです」と語るLIFEHUBの中野裕士CEO。

 大学院を卒業後、日立で自動車制御システムの開発を手掛けた後、次世代モビリティベンチャーで製品開発に携わるなど、モビリティ分野でキャリアを積んできた。

 2020年に東京都主催のビジネス・コンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY」にエントリーしたことで、出資者が現れ、取締役CTOの野宮和洋氏と2人で昨年起業したばかりだ。

 「次世代のモビリティ開発に当たって、まずは困っている方の役に立つ製品を作りたいと考え、車椅子の課題を解決することにしました。バリアフリーという環境が整うのを待っているのではなく、モビリティを開発することで、足の不自由な方が健常者と同じような生活ができることを目指しています」と中野CEOは話す。

 現在、同社のエンジニアは10人に増え、プロトタイプを製作中だが、製品の正式なリリースに向けて、機能開発とプロダクト開発も並行している。

販売は2023年末を目標さらに世界展開も視野に

 現在開発中の次世代の椅子型モビリティは4輪の電動車椅子だが、前輪が上方向に動き、椅子の高さも上がって、後輪だけで車椅子を支えることができるのが特徴だ。

 人間の脚の機能である「歩く、立ち上がる、段差を乗り越える」といった動作を実現できるようになるので、車椅子のままエスカレーターにも乗ることも可能だ。

 車椅子の人はエレベーターを利用するが、エレベーターの台数が少なかったり、混雑していたりすると、「他の人が乗れなくなってしまう」と申し訳なく思うケースもあるという。

そのため外出が億劫になってしまう車椅子ユーザーのためにも、エスカレーターに乗れる車椅子の開発を考えるようになった。

 「座った状態から約50㎝立ち上がるので、高いところにあるものを自分の手で取ることもできます。車椅子に乗っていても、自分の足で移動しているような感覚で日常生活を送れるようになるでしょう。洗練されたデザインも意識し、『最先端のモビリティに乗っていてカッコいい』と思われるような車椅子にしたいんです。もちろん車体や座席の色も選べます」

 実際の走行テストはこれからだが、AIやセンサーを搭載し、衝突を未然に防ぐなど、自分で操作しなくても、安全性が高まる機能も備えている。

 国内での具体的な商品化は23年末を目標にしており、25年には世界での販売を目指す。

 「ファーストモデルは1台400万円程度、300台の販売を予定しています。既に欲しいというお客さまの声も頂いていて、医療機関からの問い合わせもあります。国内での販売の後は、グローバルモデルを世界に向けて販売していくことを考えています」

 自動車の世界で考えると、次世代の椅子型モビリティは高級車といった位置付けであり、今後は顧客獲得を目指した積極的な営業活動も始める予定だ。

身体拡張分野の商品も開発人材を増やしIPOを目指す

LIFEHUB 中野裕士2
LIFEHUB 中野裕士

 LIFUHUBでは、車椅子だけでなく、ロボティクスの技術で身体の機能を進化させる製品の展開も考えている。

 「機械の身体を創造し、全ての人が自由で豊かな生活を送れるよう、例えば今ある腕の機能が拡張するような製品の開発も思い描いています。そして将来的にはIPOも視野に入れています」

 同社の技術を使って、新しい価値を生み出せるパートナー企業も募集中だ。

 「例えば、テーマパークや百貨店を移動できるモビリティがあれば、お客さまが疲れずにその場を楽しむことができます。広い工場内でモビリティを採用すれば、作業の効率化を図ることができるのではないでしょうか」

 現在は「部品が手に入りやすい」という秋葉原・御徒町エリアのオフィスで設計から開発まで行っており、そのためのエンジニアは常に募集している。

 ロボティクス、システム制御、AI、電気・電子など、大学院卒の知識が求められるが、どこにもない新しい商品を生み出すことにやりがいを感じられる職場だ。

 「障がい者と健常者の壁がなくなる世界を私たちと一緒に創り上げてくれる人に応募していただきたいですね」

 ライフスタイルが変わるような革新的なモビリティ製品の誕生が待ち望まれている。

会社概要
設  立 2021年1月
資 本 金 2億9,700万円
本  社 東京都台東区
従業員数 14人
事業内容 身体拡張デバイスの研究開発・関連サービスの提供、モビリティ製品の研究開発・関連サービスの提供、医療・福祉機器の研究開発・関連サービスの提供、機械の設計・開発に関する事業
https://www.lifehub.co.jp/