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コロナ禍を乗り越えた今、DXやGXを推進し、地域経済の足腰を強化して未来志向の産業振興を目指す 鈴木直道 北海道知事

鈴木直道 北海道知事

北海道を代表する食や観光産業は、コロナ禍の最悪期を乗り越えて急速に息を吹き返してきた。さらに半導体製造関連企業のラピダス社の進出は道内経済活性化の起爆剤として期待が高まっている。北海道では昨年「北海道経済活性化基本方針」を策定、さらなる発展に向けて取り組みを強化している。(雑誌『経済界』「攻勢に転じる北海道特集」2024年4月号より)

鈴木直道・北海道知事のプロフィール

鈴木直道 北海道知事
北海道知事 鈴木直道
すずき・なおみち──1981年埼玉県生まれ。99年東京都庁入庁(2010年退庁)。08年夕張市へ派遣。10年内閣府地域主権戦略室へ出向、夕張市行政参与。夕張市長(2期)を経て、19年4月北海道知事就任。

再生可能エネルギー導入支援やゼロカーボンの担い手育成へ

 新型コロナウイルス感染症が5類へ移行し、社会経済活動が活発化するとともに、エネルギー問題や地球温暖化、食料安全保障など、日本全体が大きな課題に向き合う中、本道経済のさらなる活性化はもとより、日本、そして世界の発展に向けて、北海道が果たす役割はこれまで以上に重要になっており、エネルギー、デジタル、食や観光といった本道が有するポテンシャルを最大限発揮し、価値を押し上げ、北海道の確かな未来を創る取り組みを果敢に進めていくことが必要です。

 こうした中、道では、エネルギーについては、2020年3月、国に先駆けて50年までに、温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「ゼロカーボン北海道」を打ち出すとともに、昨年には、総額100億円規模の「ゼロカーボン北海道推進基金」を設置し、GX投資の促進に向けた官民連携のコンソーシアム「Team Sapporo-Hokkaido」を設立するなど、中長期的な視点に立って、太陽光、風力、中小水力など全国随一のポテンシャルを活かした、地域における再生可能エネルギーの導入支援や、環境・エネルギー産業の振興、ゼロカーボンを担う人材の育成など、環境と経済の好循環を目指した取り組みを加速しています。

ソフトバンクも進出、「北海道データセンターパーク」を推進

 デジタルについては、次世代半導体の量産製造を目指すラピダス社の工場建設が千歳市で進む中、道では、同社が目指す25年のパイロットライン稼働、27年の量産開始というスケジュールに向け、国や千歳市などと緊密に連携しながら、スピード感を持って取り組んでいます。

 また、近年、本道では、首都圏との同時被災リスクの低さや冷涼な気候、豊富な再生可能エネルギーといった優位性に着目し、データセンターなどを設置する動きが進んでおり、昨年11月には、ソフトバンク社が苫小牧市に日本最大級のデータセンターを建設することを発表しました。道では、こうした動きをさらに加速させるため、本道への再生可能エネルギーを活用したデータセンターとこれらを利用するデジタル関連企業等の誘致・集積を図る「北海道データセンターパーク」を推進しています。

アドベンチャートラベルを普及させ観光立国北海道の再構築を

北海道庁 赤れんが庁舎
北海道庁 赤れんが庁舎

 食については、わが国最大の食料供給地域として、食料安全保障に寄与するため、輸入に多くを依存している小麦や大豆、家畜の飼料などを増産し、海外産との置き換えを進めるなどの取り組みを着実に進めています。

 また、道産食品のさらなる消費拡大に向け、22年度に過去最高の売り上げを更新した北海道の公式アンテナショップ「北海道どさんこプラザ」を国内外に18店舗を展開するとともに、ホタテをはじめとした道産水産物の消費拡大に向けた「食べて応援!北海道」キャンペーンの展開などに取り組んでいます。

 観光については、コロナ禍を経て、海外との直行便が再開し、インバウンド需要が回復している中、昨年9月には、アジアで初めて「アドベンチャートラベル・ワールドサミット北海道・日本」をリアル開催し、欧米を中心に64の国と地域から世界のツアーオペレーター・メディアを中心とした約800人にご参加いただき、本道の雄大な自然やアクティビティ、豊かな自然に育まれた多彩な食、そして、アイヌ文化など独自の歴史・文化といった本道の魅力を国内外に広く発信するとともに、質の高いツアー商品の造成や国際的にも評価されるガイドの育成といったアドベンチャートラベルの普及・拡大に取り組むなど、観光立国北海道の再構築に向け取り組みを進めています。

 コロナ禍を通じて起きた変化が、本道への追い風ともなっています。テレワークなどの定着に加え、BCP(事業継続計画)対策として、地方への移転によりリスク分散を図る企業が増加しており、民間の調査によると、首都圏から北海道へ本社を移転した企業は、コロナ前の17年から19年の3年間と20年から22年の3年間を比べると28社増加し、その増加数は全国1位となりました。

半導体・デジタル関連産業の育成強化で持続的な成長へ

 今後は、こうした歩みをさらに加速し、産業や人、投資など、国内・世界から活力を呼び込み、地域の力を高めていくとともに、安心して住み続けることのできる地域づくりを進めてまいります。

 昨年7月に策定した「北海道経済活性化基本方針」を踏まえ、社会経済情勢の変化に機動的に対応し、長期化する価格高騰などによる道民生活や本道経済への影響緩和に向けた経済対策に取り組むとともに、エネルギー、デジタル、食や観光といった本道のポテンシャルを最大限発揮するなどして、DXやGXの推進をはじめ、北海道ブランドのさらなる磨き上げと戦略的なプロモーション、足腰の強い地域経済の構築と未来志向の産業振興、さらには、未来を支える人づくりなどの取り組みを推進していきます。

 また、ラピダス社の立地を契機として、半導体の製造、研究、人材育成等が一体となった複合拠点を実現し、その効果を全道に波及させていくための指針となる「北海道半導体・デジタル関連産業振興ビジョン」を取りまとめ、各般の施策を戦略的に推進するとともに、新たな「北海道食の輸出拡大戦略」を策定し、輸出先国・地域の多角化や品目の拡大などさらなる輸出拡大に取り組んでいきます。

 道としては、地域や関係団体・機関と密に連携しながら、本道経済が力強く、持続的に発展し、北海道をさらに前へ進めるため全力で取り組んでまいります。