創業以来、経費削減サービスを手掛けてきたCITVが現在、最も注力している事業は旅費などの料金を割安で提供するMecha-Tok(メチャ得)のサービスだ。会員になれば家族も使える優れもので、法人は経費削減と同時に社員の福利厚生向上にもなる。年内中の100万会員達成を目標に掲げる同社の戦略を倉住強一郎会長に聞いた。聞き手=清水克久(雑誌『経済界』2024年8月号より)
倉住強一郎 CITV会長兼CEOのプロフィール
異業種の会員が連携し合う“顧客共有型商業協同組合”
―― 賃貸マンション向けの「インターネット無料サービス」を開発して話題を集めましたが、今、急速に伸びているメチャ得とはどんなサービスですか。
倉住 今では当たり前となったマンションのインターネット無料サービスもそうですが、私は多くの経営者に向けて常に経費削減と同時に売り上げ、利益を伸ばすことができるサービスを模索していました。このインターネット事業では10万人を超えるネット利用者の会員がいたので、アライアンスを組みたいという要望がたくさんありました。いろいろなサービスがありましたが詳しい内容を理解して顧客に説明できなければなかなか契約に結び付きません。そこで2021年12月に始めたのが、卸価格か相当な割引でサービスを提供できる事業者を一堂に集めて、相互に利用し合うメチャ得という月額の会員制サービスです。
従来型のアライアンスは契約できたらその都度、手数料を取る形でしたが、メチャ得に参加した事業者は卸価格で販売します。いわば異業種の〝顧客共有型商業協同組合〟みたいなものです。これは単なるコスト削減だけでなく、各社が自社のお客さまに対してこのメチャ得のサービスを誘導することで一つの新規サービスとなり差別化ができることで、同時に顧客基盤が一挙に増えるメリットがあります。
メチャ得のお得感は分かりやすいので各事業者が顧客を積極的に集客し、それを共有することができました。その結果、当社1社では難しかった顧客開拓が短時間で実現できました。当社が頂くのは月額880円の会費(ベーシックプラン)のみで、会員は仲間の事業者へ直接営業できるようにした、今まではなかった全く新しい仕組みです。
―― 具体的にはどのようなお得感がありますか、
倉住 代表的なのは新幹線料金、飛行機代、高速料金、ガソリンが旅行業者価格で提供されます。会員はビジネス利用でもプライベートでも何回も利用できます。新幹線の東京・博多間はグリーン席で1泊の宿泊代を付けて往復で1万円から1万5千円は安くなります。航空券はANA限定で全国一律1万5500円。Peachでは新千歳・那覇間往復で、しかも2泊の宿泊代込で2万8300円です。月に1回、新幹線を利用するだけで月額880円会費の年間会費の元が取れます。
そのほかには電気・ガス料金の削減や保険、資産運用などのコンサルティング、物販(車、OA機器、スーツ、ペット料金)、医療(保険内、自由診療)など、新しいサービスをどんどん増やしています。
また、会員特典として同居家族には無料の交通傷害見舞金保証や一定規模以上の会社に義務化されたストレスチェック費用の無料化もあります。他にも社会保険料をクレジットカードで支払いができるサービスも準備中で、会社や経営者はもちろん、社員やそのご家族にもメリットが大きいサービスがたくさんあります。
―― このようなサービスが生まれたきっかけは何ですか。
倉住 食べたり、飲んだり買い物をするときに、どこが安くておいしい店かをスマートフォンで探すのがとても面倒に思え、当社独自で便利なサイトを作ろうと思い、調べるうちに、旅行会社では新幹線や飛行機代金をディスカウントできるにもかかわらず、手間ばかりがかかって儲からないことを知り、これに利益を乗せないで卸価格で販売すれば喜ぶ企業は多いと思いつきました。
新幹線の利用実績を調べて確信に変わりました。現在、東京・博多間の利用者は毎月1800万人いて、このうち1200万人がビジネスユーザーです。この中から100万人を取り込んで月額880円の会費を取れば、年間で売上高は100億円を超えます。会費を払えば1回の利用で880円の年会費の元が取れると計算する人が1割はいると思うので、これはメチャクチャお得だと考えてメチャ得というサービス名にしました。
サービス開始2年半で34万会員。年内に100万会員を目指す
―― サービスの利用手数料でなく、月額の会費制にした理由は。
倉住 経費削減や福利厚生サービスの会社はその都度、料金を取るところが多いですが、当社は顧客共有型のプラットフォームなので、自社の売上高を増やせることが最大の強みです。月会費880円のベーシックプランの他に、サービスを限定した660円のライトプランと330円のプラスプランがあります。ストック型のビジネスなので先行投資が必要ですが、会員数が一定のラインを越えてくるとほとんど退会しないので、安定収益が見込めます。
―― 会員はどんな属性の人が多いのですか。
倉住 法人契約の場合は役員や営業職員に使わせるケースが多いですが、その場合、法人が全部管理することになるのでメリットが出にくくなります。基本は個人に紐づいているサービスなので、個人契約にすると家族も使え、プライベートの旅行で夫婦2人で東京から大阪に1泊で旅行するだけで約3万円安くなります。日本人もよく使っている外資系の格安サイトには卸値で提供される旅行業者向けのものがあり、それをうちの会員が利用できます。
―― 会員数はどれだけ増えていますか。
倉住 最初は中々理解してもらえず無料キャンペーンなどを打ちながら少しずつ増えていきましたが、今は会員の参加企業が自社にもメリットが大きいことを理解して積極的に推奨してくれて伸びています。
大きな転機となったのが、法人向け通販を展開している大手文具メーカーとの取引です。同社の傘下の代理店にメチャ得を売ってもらっています。通販は運賃がかかることがネックでしたが、法人顧客は会員になればすぐにメリットを得られるので喜ばれています。同社がもっている7千の代理店には21万社の法人顧客がいるので、そこに新たなコスト削減サービスとして提供することで、インパクトのある差別化要因になります。
―― メチャ得のサービス開始から2年半ですが、会員数は。
倉住 現状で34万人ですが、年内には100万人を超える見込みです。短期間で大きく増えた背景には、傘下に販売代理店網を持っている会員企業が積極的に普及させてくれたことがあります。メチャ得は経費削減と福利厚生になると同時に、新たな顧客を獲得して業績を伸ばすことができるプラットフォームであり、会員企業の業績拡大に貢献できると確信しています。