ワークフロープラットフォーム「acomo(あこも)」を昨年リリースし、「テレワークトップランナー2023総務大臣賞」を受賞したプログレス。フルリモート×フルフレックスをベースとした働き方で、心理的安全性を高めるコーチングを導入し、盤石なチームづくりを実践する。 (雑誌『経済界』2024年12月号「総力特集 強い組織の流儀」より)
採用面接もリモートで代表が社員の地元へ出向く
「日本を元気にするためには国内の99・7%を占める中小企業のIT支援が必要」と考え、アクセンチュア時代の上司、同僚とITコンサル会社を起業した室伏勇二社長。しかし、中小企業を訪問するうちに、IT化の遅れが思った以上に深刻であることが分かった。
「エンジニアをもっと採用し、支援しなければならないと考えました。その矢先にコロナ禍が始まったため、クライアントのリモートワークを支援しながら、自社もフルリモートで働ける会社を立ち上げたのです」
経済産業省によると2030年に日本国内のITエンジニアは最大で79万人不足すると算定されており、都内近郊に特化した採用では競争に勝てない。しかしリモートワークであれば日本全国からエンジニアを集めることができる。
「直接顔を合わせることなく、円滑なプロジェクト運営を行い、かつ品質の高いシステムをつくることができれば、社会に進歩をもたらすと考えました」
面接もリモートで行い、内定後は代表や役員が自ら地方まで足を運び、社員と顔合わせをするという。
「ご本人はもちろん、ご家族の方も安心され、歓迎されることが多いです。今年は地元訪問企画も予定しており、3カ月程度かけて全社員の地元へ赴き、様子を見て相談や希望を聞いて回ります」
同社はフルリモートのみならずフルフレックス制度も採用し、1日の労働時間8時間のうち好きな時間帯で勤務できる。入社3年以内の定着率は91・6%、育児休業取得率は女性が100%、男性が67%と高いのも特徴だ。設立4年目で社員は100人を超えた。
「従業員が幸せになると、顧客も幸せになる」という循環関係として捉えており、まずは起点となる従業員のワークライフバランスと仕事とキャリアを最大限会社側でフォローし、従業員は顧客への価値提供に注力している。
自社プロダクトである、開発者のためのワークフロープラットフォーム「acomo」は、社員が伸び伸びと楽しくつくったことで、自信の持てるものが完成し、顧客に喜ばれる製品となったという。
「自社プロダクト開発を経験しているからこそ得られるシステム開発力や技術力、お客さま向けの事業で発揮しているコミットメント力や推進力によってシナジーが生まれ、多くの信頼を頂いています」
コミュニケーションガイドで離れていてもチーム力を強化
一方、フルリモートでオンサイト以上の価値を提供するのは簡単ではない。リモートワークでチームの成果を出すために、細やかなコミュニケーションが必要だと室伏社長は考えている。そのため「前向き・感謝・受容」という価値観を掲げ、コミュニケーションガイドを策定した。
「例えば生産性を落とさないために『依頼された仕事は前向きに受け取り、仕事完了に対しては大いに感謝』『コミュニケーションすることは一つの仕事』といったルールを設けています。一人で作業していても孤独を感じず、所属意識や貢献感を高めてもらえるよう力を入れています」
さらにアドラー心理学を基盤とした1on1コーチングを取り入れ、社員の心理的安全性を高める取り組みも行っている。
「社外CCOが否定せずに話を聞いて口外もしないので、社員が安心して意見や悩みを打ち明けられます。1on1コーチングによって離職率を下げ、生産性を高めて、強いチームづくりができています」
室伏社長がコミュニケーションに徹底的にこだわる理由は、自身のエンジニア時代の経験から来ている。
「自分一人ではなく、チームで仕事を成し遂げる達成感に幸せを感じていました。今はそれを会社レベルで実現したいと考えています」
評価制度もオープンにしており、成果は給与に反映しているため、社員の満足度は高い。
「クラスごとのジョブ定義が規定されており、それらを満たすことで年収1千万円を超える社員もいます。一方で給与は現状でいいので仕事量を増やしたくないという社員もいます。多様性を重視して、社員の働き方を尊重しています」
社員が集まるイベントも開催。リアルな交流の場も設ける
フルリモート勤務だが、1年に1度、USJやディズニーランドなどで社員と家族が一堂に会するイベントを催し、リアルな交流も図っている。また、リフレッシュのためチームメンバーと対面で活動する制度もあり、交通費や宿泊費は会社負担だ。
「メンバーが住んでいる場所に集まったり、合宿をしたりと活用方法はさまざまです。リアルで顔を合わせることで、より円滑なコミュニケーションに役立ちます」
同社は30年に目指す姿として「プログレスサーティ」という経営計画を策定。社員を150人まで増やし、システム開発から一歩進んで、デジタルパートナーとして顧客の伴走者になることが目標だ。
「日本一のリモート開発会社を目指してスタートしましたが、これからはより広いIT領域のパートナーになるため、従業員、家族、顧客、ビジネスパートナーの関係で、全ての人の満足度が日本一高い会社を目指しています」
会社概要 設立●2020年12月 資本金●1,000万円 売上高⃝10億円 本社●東京都千代田区 従業員数●109人 事業内容●自社サービス「acomo」「シスモリ」の企画開発、システム開発、プロジェクト管理、DX支援、運用・保守サービス、サブスクリプション型サービスなど https://www.progress-all.co.jp/ |