経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

電機業界の名門復活へ 技術力で社会価値を創造する 森田隆之 NEC

経済界大賞 森田隆之 NEC

(雑誌『経済界』2025年2月号より「第49回経済界大賞」優秀経営者賞受賞)

経済界大賞 森田隆之 NEC
経済界大賞 森田隆之 NEC

優秀経営者賞 森田隆之 NEC社長兼CEO

 2021年に開催された東京五輪・パラリンピック。国際的なイベントの円滑な運営を支えたのは、NEC製の顔認証システムや混雑状況を可視化するシステムだった。

 かつて半導体で世界を席巻し、携帯電話やパソコンでも存在感を放つなど、日本のIT産業を支えてきたNEC。しかし、ITバブル崩壊を境に、徐々に苦戦を強いられるようになる。その後も、中期経営計画の業績目標で未達を繰り返す事態が続き、17年には18年度末までの中計を撤回。体制の立て直しを進めた。その中で、21年から5年間の中計立案を任されたのが現社長兼CEOの森田隆之氏だった。

 「中計の取りまとめを通じて感じたことは、『安全・安心・公平・効率という社会価値を創造する』NECの存在意義と、社員の力を引き出すことの重要性でした。そして、私たちの一番の強みである技術力を生かし、日本のデジタルインフラを支えるという会社の方向性を定めました」

 21年4月に森田氏が社長兼CEOに就任してから技術力を武器にした事業展開はさらに加速している。23年には、生成AIによる産業の変化を受け、顧客のニーズに合わせてカスタマイズ可能な生成AIを自社開発した。

 また、世界的に増加するデータセンターや5G以上の大容量の通信を支える技術として、グーグル社と共同で大陸間のデータ通信を担う海底ケーブルを、アジアと北米を結ぶ海域に導入する。

 こうした取り組みは市場からも高く評価され、森田氏の社長兼CEO就任時に約1兆8千億円だった時価総額は、24年11月下旬時点で3兆5千億円に迫ろうとしている 。

 「欧米で自国第一主義が強まり世界の分断がますます深刻化する国際情勢において、日本はグローバルサウスの国々に対して代替案を提示して橋渡し役を担う立場になれるはずです。そこで不可欠なのはテクノロジーとセキュリティ。それらを支えるのが、これからのNECの役割だと思っています」

 電機業界の名門復活は、日本経済の復活にもつながる。