(雑誌『経済界』2025年2月号より「第49回経済界大賞」地方創生賞受賞)
地方創生賞 鈴木与平 鈴与会長、フジドリームエアラインズ会長
「新しいことを始める時の判断基準は、地元のお役に立つことができるかどうか」
こう語るのは、鈴与会長の鈴木与平氏だ。
鈴与は清水(現静岡市清水区)の廻船問屋として1801年に誕生した。その後、物流のみならず、エネルギーや食品、情報、教育など幅広い事業を手掛け、今ではグループ売上高が5千億円を超える、静岡県を代表する企業に成長した。
その行動基準の根底には、鈴木会長が言うように、「地元のためになるかどうか」がある。
それによって生まれたのが、静岡空港を拠点とする航空会社、フジドリームエアラインズ(FDA)だ。
静岡空港は2009年に誕生したが、企画されたのがバブル期だったこともあり、利用者がどれだけいるか危ぶまれていた。そこで手を挙げたのが鈴与だった。
そのコンセプトは地方と地方を結ぶリージョナル航空会社。
「地域を活性化させるには定住人口を増やす必要があるが、現実的には難しい。でも交流人口を増やすことは比較的簡単であり、それにはリージョナル航空が役に立つ。飛行機で地方の空港と地方の空港を直接結んで交流人口が増えれば消費も増え経済も活性化する」
こうして誕生したFDAは、順調に利用者を増やしていったが、それを襲ったのが新型コロナだった。国内の人の移動が止まり、FDAの搭乗率は4割を切るまで落ち込んだ。
コロナ禍が明け、日常生活が戻り、インバウンドも過去最高を記録した今でも、FDAの搭乗率はコロナ前には戻っていない。
「FDAには羽田発着便がない。そのため回復が遅れている」というのがその理由だ。
それでも、この前のお盆の搭乗率は8割を超え、コロナ前にあと一歩のところまで近づいてきた。
インバウンドの関心も、東京や京都などの定番のスポットから、古き良き日本の残る地方へと移りつつある。追い風は間違いなく吹いている。その風を受け、いかにしてFDAを軌道に乗せることができるのか。
ある意味、日本の地方創生の未来がかかっている。