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IR実施法案を提言 カジノへの国民の不安拭えず―国土交通省

厳格な規制を設けたIR実施法案

政府の有識者会議が7月末、今秋にも開かれる臨時国会に提出の統合型リゾート(IR)実施法案の方向性を提言としてまとめ、IRの所管大臣が国土交通相に決まった。ただ約4カ月に渡った会議での議論は、国民の不安を払拭するには至らず、今後の立案過程や国会審議は一筋縄とはいかない可能性もある。

提言は、IRを世界で初めて法制度として組み込んだという先進性を前面に押し出した上で、IR整備で滞在型観光モデルの確立や財政の改善、日本の国際プレゼンス向上など「変革が達成できる」と公共性を強調。だからこそカジノを例外的に認める代わり、「世界最高水準の規制」を設けるとした。

「世界最高水準」の規制内容も、厳格な免許制度に始まり、株主規制、ギャンブル依存症対策まで、カジノが既にある米国やシンガポールといった各国の仕組みを“いいとこどり”。日本人に対する入場回数規制など海外にも例がない独自規制まで盛り込んだ。

隙のない理論武装を施した提言だが、それでも実施法案の成立がスムーズに行くかは見通せない。

IR=カジノ解禁の認識は変わらず

「カジノ解禁だけがクローズアップされている状況を変えたい」。

推進会議の事務方幹部は議論が始まった4月、会議には制度設計以外にも「IRに関する景色を変える」(推進会議幹部)という裏ミッションがあると語った。事務方に財務官僚を配置したのも“お家芸”の世論醸成を重視しての措置とみられる。

カジノ規制に多くの議論を費やし、内容を迅速に公開したのも国民目線を意識してのことだが、一連の国会紛糾もあって会議自体の注目度が高まらず、「カジノ一辺倒」の国民認識を変えるには至らなかった。同時期に実施の横浜市長選で当選した現職候補も市民感情に配慮し、IR誘致の争点化を避けたほどだ。

日本人に対するカジノ入場料の金額やIRの整備区域数など、積み残しの議論もあり、IR整備実現までに超えなければならないハードルは少なくない。

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