IT、建設機械販売と太陽光発電事業のベストミックスで、社会の持続可能な発展に貢献する事業を展開しているAbalance(エーバランス、東証二部)。龍潤生・取締役CEOが2011年に株式交換で同社をグループ化して業容を拡大。現在は海外展開も加速し、グループ全体でパリ協定、ESG、SDGs等にも積極的に取り組むなど、環境に優しい社会の実現を目指している。
太陽光発電事業が世界の貧困地域の問題を解決
Abalanceの筆頭株主でもある龍潤生氏は中国・江西省に生まれた。現在、日本国籍を所有。名古屋市立大学経済学部を1998年に卒業。一般企業に就職したがその後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科に進み、2003年にMBAを取得、06年にWWBを設立した。
WWBは東日本大震災が発生した時に一時、話題を集めた。被災した福島第一原発に、中国の大手建機メーカーの三一重工(SANY)が、世界最高水準のコンクリートポンプ車を寄付したのだが、その仲介役を果たしたのがWWBだったのだ。
社名の由来は「ウィン・ウィン・ビジネス」で、全てのステークホルダーと「ウィン・ウィン」の関係を築きたいとの願いが込められている。
建機販売から環境関連ビジネスに主軸を置くようになったきっかけは、1枚のポスターだったという。それは、ホッキョクグマが氷に乗り漂流している情景を捉えた地球温暖化問題を訴えるもので、龍氏は「人類は経済発展の中で環境を壊してきた。とてもショックでした」と語る。
早くからESGやSDGsの観点に着目し、風力やバイオマスなど、さまざまなグリーンエネルギーの中で太陽光発電を選択したのは世界的に認知度が高く、コストパフォーマンスが優れていることを評価したためだ。
「世界には貧困のために電気を使えない国や地域がたくさんあります。われわれのミッションはそんな場所に住む人々に電気を提供し、光で明るく照らすことです。地球の環境破壊を止めるのが私のテーマです。利益を求めるだけのビジネスをするつもりは毛頭ありません」
「明るく照らす」は照明だけの意味ではない。電気があればポンプを動かして地下水を汲むこともできる。希望という名の光を届けて、人々の心と暮らしを明るくしたいという想いが込められている。
龍氏は農業問題にも切り込んでいる。日本の農業は高齢化と耕作放棄地の増加で深刻な事態になっている。若い後継者が育たない理由の一つは収入が安定しないことだ。そのため農家が太陽光発電事業に取り組めるようなソーラーシェアリングのソリューションを提供している。具体的にはビニールハウスに取り付け可能な超軽量ソーラーパネルを開発するなど、農業の未来にも貢献しようとしている。
3事業のシナジーを武器にアジア展開を加速
Abalanceは、もともと企業向けのソフト開発・販売で設立された会社だが、それがグリーンエネルギーと建機販売のWWBと融合したことで大きな相乗効果を生んでいる。
例えばIT部門でグリーンエネルギー向けの遠隔監視システムの開発販売などを展開。建設機械事業では、単に国内外に機械を販売するだけではない。メガソーラーの広大な土地への基礎工事となる杭打ち工法では、「WWBソーラードリラー」を投入、大幅な工期短縮とコスト削減を実現した。
「われわれの建設機械で施工のコストダウンが図れるだけでなく太陽光関連の各種部材の製造、販売と施工から運用までをワンストップで行います。これらのソリューションを全て動員することで、世界で最も安いグリーンエネルギーを作ることが可能です。今、気候変動による自然災害が世界的に増えています。われわれが取り組むべきことに国境はありません。ESG、SDGsが世界的トレンドになっていますが、人類が地球を守るためにグリーンエネルギーは必要不可欠です」
海外では東南アジアを中心に太陽光事業を広げていく。ベトナムでソーラーパネルの製造、加工、組み立て事業を行う現地企業を買収、アジア戦略の中核と位置付けている。
現在、同社の売上高は80億円を超え、ベトナムでの上場も準備している。「地球環境問題は世界規模で取り組むことが大切」と龍氏は力強く語る。
主力の太陽光発電事業では、30年までに国内外合わせて自社保有発電所で1千MWを生産する計画。これは原発1基分に相当する。
18年6月期の連結売上高は73億円であるが、30年には1千億円達成、また株式時価総額では3千億円突破の目標を掲げている。
会社概要
設立 2000年4月
資本金 7億63万円
グループ売上高 73億円
所在地 東京都品川区
グループ従業員数 106人
事業内容 ソフトウエアライセンス販売、システム構築、IT事業。WWB株式会社の建機・リース販売、太陽光・風力発電事業
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