新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、全国に先駆けて緊急事態宣言が出された北海道。北洋銀行は企業・個人の資金繰り支援をはじめ、質の高いサービス提供に向けて連携・協業に力を入れてきた。ウィズコロナ時代の取り組みを安田光春頭取に聞いた。
安田光春・北洋銀行頭取プロフィール
事業継続のための資金繰り支援に全力
―― 北海道経済の現状と新型コロナに対する北洋銀行の取り組みをお聞かせください。
安田 北海道は2020年2月に全国に先駆けて独自の緊急事態宣言が発せられました。経済活動の停滞が長期化し、また海外からの入国規制などもあり、インバウンドが消滅したことで、ホテル・旅館業や食関連サービス業など道内景気をけん引してきた観光関連産業が影響を受けました。他都府県に比べて景気の下押し圧力は強かったと認識しています。
当行が実施した道内企業の業況調査では、20年4~6月期はリーマンショック時を下回り、01年の調査開始以来、最低水準となりました。足元では「GoTo事業」など国の施策を背景に、徐々に改善が見られるものの、新型コロナの第3波により警戒ステージが引き上げられるなど、依然として道内の景況は厳しい状況にあります。
このコロナ禍を受け、当行ではまず事業継続のための資金繰り支援を中心に、融資取引がない先も含めたほぼ全事業先となる3万6千先と対話し、9月末までに約1万5千先へ3800億円を超える融資を実行しています。このほか個人のお客さまも含め、借入返済条件見直しのご相談対応にも取り組んできました。
今後は経営改善支援、事業再生支援に軸足を移していく必要があります。官民連携による資本性ローンなど、お客さまへのサポートを通じて北海道経済の持続性にも貢献していきます。
加えて本業支援として、安全対策のためのサーモグラフィーの利活用やテレワーク・業務効率化の促進、ECモール出店や自社サイト制作といった、ウィズ・アフターコロナを見据えたビジネスモデルの変革ニーズに対し、外部提携企業とのビジネスマッチングによるサポートを提案していきます。
連携・協業を強化し質の高いサービス提供を
―― 経営戦略については?
安田 人口減少や超低金利環境の長期化などの経営環境下で生き抜くために、3月に経営理念を改定しました。「お客さま本位を徹底し、多様な課題の解決に取り組み、北海道の明日あ すをきりひらく」。改定はコロナ前から検討していましたが、経営環境の変化や職員の声も踏まえ、未来に継いでいくために伝わりやすい指針として見直しました。理念を実現するための行動規範も見直し、これらに整合した経営戦略・施策として新たな中期経営計画「共創の深化」を今年度スタートしています。
主な個別戦略として、「お客さまに寄り添ったコンサルティング営業の徹底」「デジタル化を中心とした取引の間口拡大と効率化」「深度あるコンサルティングの実現に向けた人財育成」「生産性向上とコスト削減へ向けた取組みの加速」の4点を掲げ、取り組みを進めています。
特に注力したいのがコンサルティング営業です。20年度上期は、コロナ禍で対面活動の制約を余儀なくされました。現在ではリモート面談の導入も含め、お客さまとの距離を縮め、ライフコンサルティングや事業性理解の取り組みによる潜在的なニーズ・課題の顕在化、それらに応じた商品・サービスの提案などを行っています。
また4月に完全子会社化した北海道共創パートナーズとの連携による事業承継やM&Aといった法人コンサル・ソリューションの提供など、グループの総力を挙げて取り組んでいます。
このほか全国を網羅する地銀最大規模の「TSUBASAアライアンス」による協業の強化を進めています。千葉銀行、第四銀行、中国銀行、伊予銀行、東邦銀行、北越銀行、武蔵野銀行、滋賀銀行、琉球銀行、群馬銀行、当行の11行が参加する地銀広域連携の枠組みです。
デジタル分野では、共同開発した「TSUBASA FinTech共通基盤」を活用し、お客さまの利便性や安全性を踏まえつつ、スマートフォンによるサービス提供などにつなげています。9月末時点では、「ほくようスマート通帳」は14万2千件の申し込みがありました。
また将来のシステムコスト削減や事務効率化に向けた基幹系システムの共同化を進めているほか、7月には共同出資会社を設立し、アンチマネーロンダリング(犯罪等によって不正に得た資金の出所などを隠蔽いん ぺいして正当な手段で得た資金と見せかける行為を防止する対策)に関する業務や機能の集約・高度化を図っています。今後も連携・協業を広げ、付加価値の高い金融サービスを提供していきます。
―― SDGs関連の取り組みはいかがですか?
安田 北海道の持続可能な未来を見据えて組成された、SDGsの課題解決に取り組む道内企業のための「北洋SDGs推進ファンド」の支援は、農業、食、観光関連企業などを中心に、11月末までの約2年間で、26件、3億7400万円の実績となりました。これまで顔認証により広告表示を自動で変更できるデジタルサイネージの製造・販売企業等への支援を行っています。
10月には北海道後志しり べし管内で離農が進む農地の受け皿として醸造用ブドウの安定生産を目指す農業法人に対し、日本政策金融公庫と組成した「ほくよう農業地域活性化ファンド」による出資を通じて、仁木町、農林中央金庫、JA新おたるといったステークホルダーの皆さまと、農業・食産業の持続的発展と地域活性化を支援しています。
厳しい経営環境の下、当行は新たな経営理念の下、持続可能な未来に貢献してまいります。