経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

組織・チームに伴走しながら変革を支援するアジャイル集団 レッドジャーニー 市谷聡啓

レッドジャーニー 市谷聡啓

大企業や国、地方企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援に取り組むレッドジャーニー。市谷聡啓代表率いる同社は、多岐にわたる業界で既存のビジネスの枠にとらわれることなく、新たな価値提供に重きを置いた事業を展開。新規事業創出や組織変革などに伴走し、共に実践し、課題を乗り越え続けている。文=榎本正義 写真=西畑孝則(雑誌『経済界』2022年12月号より)

レッドジャーニー 市谷聡啓
レッドジャーニー 代表取締役 市谷聡啓 いちたに・としひろ

ミッションは「社会の分断をつなぎ直す」

 DXの名の下に組織変革を掲げ、乗り出していく企業が増えている。大企業だけでなく、中堅企業や地方の企業に至るまで、日本中の組織が程度の差はあれ、一様に取り組もうとしているこの潮流を正面から受け止め、メーンの事業にしているレッドジャーニー。2017年の設立から大企業や国、地方の企業のDX支援に取り組み、40以上の組織、80以上のチームの組織変革の推進・新規事業の開発に関わってきた。

 「私たちは事業の積み重ねを通じて、社会における分断、組織内における分断、人々の暮らしの中に潜む分断をつないでいくことをミッションとして活動しています。DXや組織変革の支援に力を入れているのはこのミッションに直接的につながるためです」と市谷聡啓代表は言う。

 同氏は大学卒業後、プログラマーとしてキャリアをスタートし、国内大手 SIerでのプロジェクトマネジメント、大規模インターネットサービスのプロデューサーやアジャイル開発の実践を経て独立した。元政府CIO補佐官で、著書に『カイゼン・ジャーニー』『デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー』『組織を芯からアジャイルにする』などがある。

 アジャイルとは、もともとは素早い、機敏な、頭の回転が速いという意味の英語で、システムやソフトウェア開発の手法の一つ。ビジネス領域では、環境や状況の変化に機敏かつ柔軟に適応して、効率良く理想の状態に近づいていくことを指す。

 「DXを進めるに当たって入り口には業務のデジタル化、効率化といった話も多いですが、そもそもたどり着きたいのは、それまでやってきた事業やビジネスを変え、新しい事業や価値創出を行うことです。私たちはそうした期待に対して、アジャイルを組織として取り入れることを支援しています。当社はまだ歴史が浅いですが、私自身は2000年初頭からアジャイルに携わっており、アジャイルやDXについては成功体験だけでなく、山ほど失敗体験があります。このためアジャイルを始めようとした時にぶつかる壁、落とし穴は一通り経験しているので、先回りができるところが信頼につながっているのだと思います」

それぞれの企業に見るDX支援の取り組み 

 同社が手掛けたDXの事例を見てみよう。

 「私たちが関わっている業界は、製造、小売、金融など多岐にわたります。いずれの業界においても、既存の事業ドメインの中で閉じることなく、新たな価値創出への踏み出しを果敢に行っています。これまでにはない顧客体験を生み出すために、デジタルやデータを利活用することを前提に置く。そうした価値提供の柱となるデジタルサービスをいかにして生み出し、顧客や社会の期待に応えていくかが、業界問わず、また企業の規模も問わず、求められているところが、今日本が直面しているDXの状況と言えます」

 そのためには、と市谷氏は続ける。

 「何が価値となるかは、顧客自身も答えられるわけではありません。何を作るべきか、誰も正解を持っていない中でプロダクトや事業作りを進めていくために必要となるのが仮説検証とアジャイルです。そうした仮説検証型のアジャイルを組織がごく普通に取り組めるようになるまで持っていかなければなりません。ですから、組織自身がその考え方から日々の運営に至るまでアジャイルになっていくことが期待されます。DXの芯はデジタルを身に付けていくというところから、アジャイルな組織になっていくということに移り変わってきています」

 ちなみに市谷氏は、リコーのCDIO(チーフ・デジタル・イノベーション・オフィサー)付きDXエグゼクティブの肩書も持っている。同社の中に入り込み、DXの取り組みを一体となって進めている。同社のDXの取り組みは、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「DX銘柄2022」に選定されており、「トナー生産工程のDX化」では、「生産現場でのAI活用など既存分野のデジタル化で、既に成果を上げている」との評価を得ている。

 「DXをやってきて見えてきたのは、フロム・トゥ(From‐To)で考えるということ。どこからどこへ行くのかという意味です。どうしてもトゥ、つまりどこへ行くのかという理想の方がクローズアップされがちです。例えば、他社でやっているからうちでもやってみよう、海外ではこのような事例があるからうちもやってみよう、というように、トゥの方を思い描く。一見取り入れやすいからだと思います」

 続けて、「しかしDXが失敗するのは、フロムは何だったのか見落としているところに原因がある。デジタル化が全く進んでいない企業と、ある程度進んでいる企業とでは、フロムとトゥの間のギャップに大きな違いがある。ただ外から企業を見ていても的を射た施策は提供できないし、いきなり外の人間が中に入って一緒に仕事をしようとしても、すぐに受け入れられるものではない。やはり徐々に信頼を勝ち得ていき、最終的に組織変革の芯に近いところに立って、フロム・トゥを一緒に描いていくことが大切です」

 市谷氏は、それをやってきたとの自負があると言い切る。組織・チームに伴走し、変革を支援するその歩みに期待したい。 

会社概要
設  立 2017年6月
資 本 金 130万円
本  社 神奈川県鎌倉市
事業内容 DX支援、新規事業、新規プロダクト開発支援、内製チームの立ち上げ、アジャイルなチーム育成、業務部門のカイゼン、研修・ワークショップ
https://redjourney.jp