経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

CRM第一人者が差し出す社会課題を解決する一手 松原晋啓 アーカス・ジャパン

アーカス・ジャパン 松原晋啓

外資系コンサルティング会社を経て、日本マイクロソフトで「Dynamics CRM」の立ち上げに関わり、CRM市場の第一人者としてその成長に貢献してきたアーカス・ジャパンの松原社長。中小企業の後方支援に加え、社会課題の解決にも乗り出している。(雑誌『経済界』2024年3月号「関西経済の底力特集」」より)

アーカス・ジャパン 松原晋啓
アーカス・ジャパン 松原晋啓

暮らしに必要な第一次産業もCRMソリューションで牽引

 1年前の取材では事業の主軸であるCRMとその活用事例、今後の展開などについて語った松原社長。今回の取材で開口一番出てきた言葉は、「日本きくらげ」「健康家庭料理&雑煮バー『膳』」と予想だにしないものだった。

 「2023年は飲食事業をスタートしました」と笑う松原社長。

 「きっかけは、日本きくらげのオーナーになったことです。もともと後方支援で関わっていたクライアントの後継者問題が深刻化し、会社ごと委ねられることになりました。ブランド名はそのままに社名変更して経営を引き継ぎ、われわれの子会社として運用しています」

 日本きくらげは中国産に比べて大きく肉厚で味が良いのはもちろん、世界中で蔓延する現代病の一つ、ビタミンD欠乏症の解消が期待されるほど栄養価が高く、スーパーフードに値する。ビタミンDを食べ物で取ることは現実的でないが日本きくらげであれば可能だという。コンテナ栽培できるから土壌は不要、環境にも天候にも左右されずに生育できるうえ、栽培に欠かせないのは水だけ。農業経験も不要であり、ITに特化したアーカス・ジャパンであればフル管理が可能とのこと。

CRMであらゆる企業活動や社会活動への貢献が可能に

アーカス・ジャパン 松原晋啓
アーカス・ジャパン 松原晋啓

 もちろんアーカス・ジャパンの目論見は日本きくらげのオーナーの権利を取得して、市場を席巻することではない。栽培手法を1人でも開業可能なパッケージにして横展開することで広めていき、ゆくゆくはバーチャルマーケットでの展開も視野に入れている。先述した理由によって戦争や災害で荒れた地域でも栽培は可能なため、この技術を他の野菜にも応用できるように改良し普及させることで世界的な食料不足の解消にも貢献したい考えだ。

 「ITの視点からコンテナ栽培の仕組みに可能性を感じました。世界的な食糧危機やフードロスを何とかしたい思いがあって土壌改良にまつわる知識や情報を収集し、今では農業コンサルタントとして知見を提供できるほどになった。飲食業のノウハウもあったので、従来のシェアリングサービスの抱える課題や、人々の健康意識と逆行しかねない外食事情に切り込むため、社会実験的に健康家庭料理&雑煮バー『膳』も開業したのです。『膳』では添加物を使用せず、また健康的な食材を使うようにしており、そこに日本きくらげを使ったメニューも積極的に取り入れて裾野を広げていきたい」

CRM先端技術×おもてなし。予想外のビジネスを展開

 高いCRM技術を有する松原社長の根底にあるのは、無類の人間好きであること。顧客との関係性を効率化するCRMはビジネスへの展開の仕方によっては人間関係の希薄化を促進するが、松原社長が展開するサービスはむしろ逆で、人間愛に溢れ、活用することで両者の関係性や信頼の深化をもたらす。農業然り、町おこし然り、食や健康、人々の生活に切り込んだのもそのためだ。

 世界を視野に数々のビジネスを展開するが軸足は日本にある点も同じ理由で、その背景には松原社長なりの愛国心が見え隠れしている。日本が世界に誇れる文化の一つ「おもてなし」を高く評価し、ビジネスにもその視点を採用している。

 「アーカス・ジャパンはおもてなしの会社。世界全体におもてなしの心を浸透させたい一心でビジネスを拡大中です。その目標を実現するためには、人々の生活を守ることが大前提。つまり衣食住、生活基盤を固めることが大事なのです」

 先述の「健康家庭料理&雑煮バー『膳』」についてもこうした背景を知ると、松原社長の思いやCRMとのつながりも見えてくる。飲食業のバックオフィスで管理される顧客データは全てCRMが導入されており効率化が図られているが、おもてなし要素については効率も採算も度外視して大切にするこだわりがある。

 「ITもCRMもあくまでもツール。何でもかんでも効率化を推進して血も涙もない世界を創り上げたくはない。そんな世界では誰も成長できません。目指しているのは笑顔の溢れる世界創りです」

 この言葉には、CRMで暮らしを守り、社会を温かく先導していくという松原社長の明確な意志がある。CRMを、顧客情報を管理し購買行動を分析する、その潜在欲求を発見し理解するためだけに活用するのではなく、そこにおもてなし要素を付加することで独自色を出していく。

 アイデアマンで、ITの便利さも人の温もりも人一倍熟知している松原社長率いるアーカス・ジャパン。世界に先駆けて打つ一手に今後も目が離せない。 

会社概要
創  業 2020年7月
資 本 金 1,980万円
本  社 大阪市淀川区
従業員数 35人
事業内容 自社プロダクトやサービスの提供、CRMのコンサルティング支援など
https://www.arcuss-japan.com/