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「夢はその時々で変わる」意外な顔を持つ経営者たち 平野岳史 フルキャストホールディングス

平野岳史 Dリーグ

平野岳史 Dリーグ

フルキャストホールディングス創業者の平野岳史氏

文=小林千華(雑誌『経済界』2024年3月号「夢やぶれて経営者」特集より)

 日本トップリーグ連携機構の川淵三郎会長は、「夢というのはその時々で変わる」と語った。本稿ではその言葉を体現するように、企業経営者でありながらも、それとは別の顔を持つ人々を紹介したい。

 まず挙げたいのが、LINEヤフー会長の川邊健太郎氏だ。

 2023年12月現在、川邊氏のXアカウントのプロフィール欄には、「経営者と猟師と漁師の3足の草鞋で働いてます」とある。もともと幼い頃から釣りやキノコ狩りを趣味にしていたというが、GYAOで社長を務めていた頃、現代の日本で里山の管理が課題になっていることを知り、狩猟免許、銃所持許可証を取得した。さらには、房総半島で廃墟となりかけていた保養所を改修し、そこで暮らしながら21年に漁業権を取得。 

 川邊氏はメディア取材で、「自然から何かを得て食べる」というサイクルそのものに長く関心を持っていたと話している。経営をしながらも、それとは別の方向で自身のやりたいことを追求してきた結果だ。

 『失格社員』『リベンジ・ホテル』などを執筆した経済小説家の江上剛氏も、04〜11年まで日本振興銀行社長を務めていた。49歳で現役をリタイアして小説家デビューした江上氏だが、執行役3人が逮捕されるという危機的状況を乗り越えるため、同行取締役から社長に就いた。その後同行は日本初のペイオフ銀行となり、江上氏も11年に社長職を解任される。しかしその後も江上氏は、自身の経験を執筆に生かしている。

 共同購入型クーポンサイト「グルーポン」、広告掲示板「ジモティー」などの立ち上げに携わってきた小野裕史氏もまた、ベンチャー投資やアドバイザリー、企業経営をしながらも、冒険家としての顔を持っていた。これまで、南極、北極、ゴビ砂漠、サハラ砂漠などで過酷なマラソンに参加している。さらには、ライブ配信サービス「17ライブ」を運営する17LIVE inc.のグローバルCEOを退任して、約1カ月後にはインドで出家。現在も僧侶としての修行を積んでいるのだという。

 4人目は、総合人材サービス会社フルキャストホールディングスの創業者、平野岳史氏だ。現在、世界初のプロダンスリーグ「Dリーグ」の運営会社を立ち上げ、CEOを務めている。中学生でダンスを始めた娘の影響で、自身も50歳を過ぎて同じスクールに通い始めたことが、ダンスに熱中し、Dリーグを創設するきっかけになったのだという。平野氏自身、ファッションイベントのステージで郷ひろみさんのバックダンサーを務めたこともある実力者だ。

 平野氏のように、本業以外で取り組んでいることが新しいキャリアを開く例もある。多忙ながらも活動を外へ広げる経営者たちに、今後も注目したい。