間もなくリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックが始まる。日本の真裏で開かれる大会なだけに、しばらくは眠れない日々が続くことになる。そしてリオが終われば、次は東京オリンピック・パラリンピックだ。リオの閉会式では、リオから東京へとバトンを引き継ぐセレモニーが行われる。この瞬間から、いよいよ東京2020へのカウントダウンが始まる。これから4年間、日本中が五輪一色に染まっていく。文=本誌/関 慎夫
五輪スポンサーはワールドワイド3社とリージョナル39社
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開幕まで4年を切った。13年9月に日本招致が決まり、その後、新国立競技場の設計見直しなどの問題はあったものの、まずは順調に進んでいっているといっていい。
「中でも一番うまくいっているのがスポンサー集めです。募集を始めるまでは1500億円が目標だったものが、既に倍以上を集めることに成功した。しかも今後さらに増えていく」(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会関係者)
次頁の表にあるのが、現在までに決まった五輪スポンサーだ。
五輪スポンサーには、ワールドワイドスポンサーとリージョナルスポンサーの2種類がある。ワールドワイドスポンサーはTOPパートナーと呼ばれるもので、全世界で五輪マークを使ってのCMやキャンペーンを展開できる。TOPパートナーは世界に12社。そのうち日本企業はパナソニック、ブリヂストン、トヨタ自動車の3社(残る9社はコカ・コーラ、ATOS、ダウ・ケミカル、マクドナルド、GE、オメガ、P&G、サムスン、VISA)。
中でも歴史の古いのがパナソニックで、TOP制度は1985年にスタートした時からのメンバーだ。同様の歴史を持つのはコカ・コーラとVISAの計3社のみだ。ブリヂストンはリオ五輪から、トヨタはピョンチャン冬季五輪からTOPの仲間となる。
ワールドワイドスポンサーの展開地域が全世界であるのに対し、リージョナルスポンサーの場合は、日本国内に限られる。またリージョナルスポンサーはゴールドパートナー(ティア1)、オフィシャルパートナー(ティア2)、オフィシャルサプライヤー(ティア3)の3段階に分かれている。
オリンピックのロゴマークといえば、誰もが思い浮かべるのが五輪マークだ。しかしこのロゴを商標目的で使うことができるのはTOPパートナーだけ。リージョナルスポンサーは五輪マーク単独での使用は許されなず、市松模様の東京大会のエンブレムしか使えない。
このほかリージョナルスポンサーには、「東京2020オリンピック」という呼称の使用権、商品・サービスのサプライ権、大会グッズのプレミアム使用権、大会会場におけるプロモーション、五輪関連の映像・写真の使用権、大会チケットの割り当てなどがある。
そしてスポンサーレベルによって、チケット割り当てや映像使用権などの範囲が変わってくる。現在、リージョナルスポンサーは39社にのぼる。
スポンサー料金は、ティア1で150億円、ティア2で60億円、ティア3で15億円が目安といわれている。現在までにティア1とティア2が決まったが、ティア1が15社、ティア2が24社。単純計算で3690億円を集めることに成功した。ティア2は今後まだ増える可能性があるし、ティア3はこれからが本番だから、総額では推計4千億円に迫ることになりそうだ。
1業種1社の五輪スポンサーの原則も相次ぐ「相乗り」
これほどのスポンサーが集まったのは、東京五輪に関してIOCが特例を認めたためだ。
五輪スポンサーは1業種1社が原則。TOP12社はそれぞれカテゴリーが異なるし、ティア1はTOP以外のカテゴリー、ティア2はさらにそれ以外というように決まっていく。
ところがティア1にはみずほフィナンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループが、揃って銀行カテゴリーのスポンサーとなっている。ティア2ではセコムと総合警備保障(ALSOK)が、日本航空と全日空、JR東日本と東京メトロが相乗りしている。このほかKNT-CTホールディングス、JTB、東武トップツアーズの3社、読売、朝日、毎日、日経の4社も相乗りだ。
またティア1のリクシルは住宅設備および水回り備品のカテゴリーだが、ティア2のTOTOも水回り備品のカテゴリーで完全にバッティングしている。
「56年ぶりの東京オリンピックをスポンサードできるのは企業にとっても栄誉なことです。そこで自分たちを是非、ということで手を挙げた企業が多く、絞り切れなかった。それに、五輪後の日本のスポーツ界のことを考えてもここで関係を強化しておいたほうがいい。その思いがIOCを動かした」(前出・組織委関係者)
気になるのはTOPのスポンサー料金だが、一説には300億~500億円。ただし、リオ五輪後にTOPに加わるトヨタのスポンサー料は2千億円といわれている。他のスポンサーとはけた違いの金額だ。
これまでTOPに自動車メーカーが入ったことはなかった。その代わりに各国のオリンピック委員会(NOC)がそれぞれメーカーと契約していた。しかしTOPにトヨタが入ると、1業種1社の原則のため各NOCにスポンサー収入が入ってこない。それを補償するために高くなったというのが真相のようだ。
以上見てきたように、東京オリンピックのスポンサーになるには、最低でも15億円、最高で2千億円のコストが掛かる。問題は、それに見合った経済効果が上げられるかどうか。
五輪スポンサーの中で異彩を放つパナソニック
スポンサーになった目的として、多くの企業が口にするのが、「ブランド価値の向上」だ。世界最大のイベントであり、世界中の人たちが東京に集まる。そこでスポンサー活動を行うことで、企業と商品・サービス・技術を世界に向け発信する、というもの。
その中で異彩を放っているのがパナソニックだ。次頁にもあるように、東京五輪を「ビジネスの場」ととらえ、技術の集大成を世界に見せようとパナソニックでは目論んでいる。それも1社単独ではなく日本連合で臨む。例えばセキュリティー対策は重要な課題だが、パナソニックの映像技術と、世界最高水準にあるNECの画像認証技術、さらにはセコム、ALSOKと連携し選手や観客の安全を守る。こうした問題解決のショーケースとなるのがオリンピックという位置付けだ。
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