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SBIが「新産業クリエーター」として ベンチャーに投資する意義(川島克哉・SBIインベストメント社長)

SBIインベストメント社長 川島克哉氏

年間1,500 〜2,000社のベンチャー企業にアクセスするSBIインベストメント。その中から将来性のある5%前後の企業に投資をしている。ベンチャーキャピタル事業を通じて得られた知見はSBIインベストメントだけではなくSBIグループ全体の財産になっている。今後はCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)ファンドの設立にも注力していく。〔聞き手/大橋博之、撮影/市川文雄〕

川島克哉・SBIインベストメント社長プロフィール

川島克哉・SBIインベストメント社長

(かわしま・かつや)SBIインベストメント 代表取締役執行役員社長。1963年島根県生まれ。85年山口大学経済学部卒業後、野村證券入社。ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)へ転職、モーニングスター社長、イー・トレード証券(現SBI証券)取締役執行役員副社長、住信SBIネット銀行社長、SBIマネープラザ社長などを経て、2015年より現職。14年6月からSBIホールディングス代表取締役副社長も務める。

SBIグループのベンチャーキャピタル事業

年間1500~2000社のベンチャー企業にアクセスし投資先を決める

── SBIグループにおけるSBIインベストメントの位置づけを教えてください。

川島 SBIグループでは経営理念の一つに掲げる「新産業クリエーター」を目指し、創業間もない2000年よりIT、バイオ等の21世紀の成長産業をメインターゲットとしたベンチャーキャピタル事業を展開してきました。SBIインベストメントではこれまでに、累計約5000億円以上のファンドを組成し、投資を行ってきました。

 単純に資金を集めて、将来性のあるベンチャー企業に投資をし、なんらかの形でエグジットして果実だけを受け取ろうとするベンチャーキャピタルは数多く存在しますが、私たちは違います。SBIグループのベンチャーキャピタル事業は、より高い付加価値を提供できると考えています。

── 具体的にどのような違いがあるのでしょうか?

川島 現在、我々が注力して投資をしている分野は、フィンテックやAI、ブロックチェーンなどの領域です。ここ数年、我々では創造できない新しいテクノロジーや、新しいサービスを産み出すベンチャー企業がいくつも誕生しています。例えばフィンテックベンチャー企業をSBIグループの金融サービス事業のライバルと見なすか、仲間と見なすかといえば、後者です。

 ベンチャー企業は我々が持っていない優れた技術を持つ一方、彼らは大手金融機関とのパイプも細く、資金面での悩みも抱えています。さらにSBIグループにはただ投資をするだけではなく、グループ内の各社で投資先企業の技術を積極的に導入するなど彼らが伸びていくための支援ができる体制や仕組みがあります。

 その意味で、投資先のベンチャー企業の成長よりも損益を重視し、結果だけ見て儲かった、損をしたというベンチャーキャピタルとは存在意義がまったく違う、ということです。

── 投資先のベンチャー企業の数はどれくらいなのでしょうか?

川島 15年に設立した300億円規模の「フィンテックファンド」で投資したベンチャー企業は60社あり、SBIホールディングスからの直接投資も合わせると約425億円、計67社ものフィンテック関連のベンチャー企業に投資しています。今年1月に設立した、その後継ファンド「SBI AI&ブロックチェーンファンド」は約600億円規模。投資先はフィンテックファンドを大幅に超える社数になると見込んでいます。

── どのベンチャー企業がどのような特徴を持ち、何が強みかを把握する必要がありますね。

川島 SBIインベストメントに在籍するベンチャーキャピタリストは年間1500~2000社ものベンチャー企業と接触しています。そして、最終的にそのうちの5%前後の企業に投資します。効率は決してよくありませんが、幅広い情報収集によって知見やノウハウが貯まります。また、「このテクノロジーはここで生かせるだろう」、逆に「このテクノロジーはお客さまのニーズにマッチしていない」といった判断が担当者レベルでできるようになります。

 もちろん、最終決定に至るまでに、いくつもの投資委員会を経て判断されます。

── ベンチャー企業をグループで支援できる仕組みとは?

川島 我々は投資先の技術やサービスをSBIグループ内で実際に使ってみることができる、つまり実証実験ができます。グループには証券や銀行、保険など、ありとあらゆる金融サービスやその他の関連事業があります。

 「顧客獲得のためにこの技術が使えるのではないか」「顧客満足の向上のためにこのサービスが使えるのではないか」と考え、導入を進めていく。さらに、そこで効果を確認できれば、投資家に対しても「この投資先ベンチャー企業の技術は良いですよ、実際に試してみて実証しました」とファンドに出資してくださっている企業への導入も提案できる。今はそこに注力しています。

川島克哉・SBIインベストメント社長

「投資先の技術やサービスをSBIグループ内で実際に使ってみることができるのが強み」と語る川島克哉・SBIインベストメント社長

ベンチャー企業投資の意義は金銭的リターンだけではない

── どのようなところに出資の提案をしているのでしょうか?

川島 一つが地域金融機関です。地域金融機関はベンチャー企業との接点がつくりづらい。一方、ベンチャー企業からアプローチしても、決定権のある立場の人にそう簡単には会えません。

 その中で、我々が設立したフィンテックファンドやSBIAI&ブロックチェーンファンドは数多くの地域金融機関から出資を頂いています。実際に出資いただいている地域金融機関には、SBIグループにおける投資先ベンチャー企業の技術やサービスの活用事例を多数フィードバックしています。将来のパフォーマンスを楽しみにしながら、投資先の技術やサービスを自分たちの事業に生かすことが可能となっています。

── 出資先はリターンだけでなく、新しい技術やサービスを求めているところも多いのでしょうか?

川島 そうです。多くの地域金融機関が、厳しい経営環境の下、様々な競争相手がいる中で勝ち残るには、新しい技術やサービスをいち早く導入することが重要です。

 私はファンドへの出資に際しては「単なる資金運用の一環として見ないでください。ベンチャー企業投資はすぐに結果が出るものではありません」と説明し、短期的なリターンを重視する先には積極的にはお勧めしていません。

 興味をお持ちの企業や地域金融機関が単独ではリーチしづらい新技術やサービスに対し、ファンド経由でいち早くリーチして良いものを取り込んでいこうとする、ソーシングの重要なツールとして捉えていただいているところが多いです。

── 情報収集でもあるのですね。

川島 フィンテックという言葉を耳にするようになった2015年に我々はいち早くフィンテックファンドを設立しました。その当時、フィンテックに対する反応は3通りありました。

 「どういうものかわからないからしばらく様子を見る」「とりあえず中に踏み込み情報を得たい」「自分たちで探す」といった反応です。

 現在は様子を見るという反応はなくなりました。時代の流れに乗り遅れたくない、新しい技術やサービスがわかるポジションを維持したい、という反応が増えました。

── 3年で注目度が高まった。

川島 地域金融機関が今後事業を展開していく中で、他行の動きも見ながら、他行よりもお客さまに価値あるサービスを提供したいというご要望は強いと思います。非対面のチャネルのスマートフォン、モバイルの世界で特に若い世代としっかりとアクセスしておくことが重要です。

ベンチャー投資におけるSBIの今後の展開

川島克哉・SBIインベストメント

AI、ブロックチェーン、ビッグデータ、IоT、5Gの世界などが注目するテクノロジーだという

SBIがテクノロジー面で注目しているベンチャー企業とは

── アセットマネジメント事業の今後の課題は?

川島 フィンテックファンドやSBI AI&ブロックチェーンファンドで投資をするベンチャー企業の中には、地域金融機関が必要としている新しいテクノロジーを持つ会社も多い。それをどれだけ多くの地域金融機関に活用いただけるかを考え、推進していくかが我々の課題です。

 地域金融機関と取引されている地方の中小企業や個人のニーズに対しても的確なソリューションを提案していく。投資・導入・拡散のプロセスを推進していきたいですね。

── 注目しているテクノロジーはありますか?

川島 AI、ブロックチェーン、ビッグデータ、IоT、それと5Gの世界でしょうか。それ以外にも我々が想像もつかない新しいテクノロジーは出てくるでしょう。

── 会社名で言えば?

川島 M&Aのマッチングサービスをオンラインで提供しているTRANBI(トランビ)という会社があります。事業承継が問題になる中小企業が多いなか、地方創生に役立つサービスであるのは間違いないと思っています。

 また、無料で簡単にネットショップを作成できるサービスを展開するBASE(ベイス)も魅力的な会社です。他にも日本の畜産農家の抱える問題をIоTソリューションで解決しようとしているデザミスなど、成長が楽しみな会社ばかりです。

 名前を挙げた会社はどこも地方でも力を発揮するサービスを展開しています。我々は東京にいるのでどうしても地方のセールスがしにくい。しかし、地元とのつながりが強い地域金融機関なら「こんなサービスがあるなら、あの会社に話を持って行こう」となります。

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンドのメリットとは

── 今後の事業戦略について教えてください。

川島 最近のトレンドとしてはCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が活発です。ベンチャー投資のノウハウが少ない事業会社が我々に運用・管理を委託するケースが増えています。SBIインベストメントでは2年間で7社、運用規模は500億円を超えるCVCファンドを設立しました。

 例えば自動車メーカーのSUBARUと共同で設立した「SUBARU-SBI Innovation Fund」の場合は、SUBARUの既存事業分野および新規分野において事業シナジーが見込まれる国内外のベンチャー企業を投資対象としています。

 他にも三井金属鉱業やハウス食品グループ本社ともCVCファンドを設立しています。当社のベンチャーキャピタリストも金融機関出身者だけでなく、自動車メーカーや化学メーカー出身者など多様なバックグラウンドを持ったメンバーがジョインしてきています。

 そうすることで非金融領域の知見やノウハウも増えていく。CVCが増えるにつれ、我々の投資領域も広がっていきます。

── それは面白いですね。

川島 面白さはありますが、1社で50億円、100億円という貴重な資金をお預かりするわけですから責任も重大です。このCVC事業を今後1年以内に1000億円まで増やしたいと思っています。

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