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豊田章男・自工会会長が挑む東京モーターショー100万人

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「アジアの自動車の祭典」と呼ばれ、ピークには200万人を集めた東京モーターショー。しかし昨今は人気が低迷、アジアの主役の座も上海に奪われた。そこで再び活気を取り戻そうとしているのが、自工会会長の豊田章男氏(トヨタ自動車社長)。そのもくろみはうまくいくのか。文=ジャーナリスト/立町次男(『経済界』2019年12月号より転載

前回より20万人増の高過ぎるハードル

 2年に1度の東京モーターショーが10月下旬、東京都江東区の東京ビッグサイトやその周辺で開幕する。今回は、10年ぶりに輸入車の有力ブランドのほとんどが出展を取りやめるほか、来年の東京五輪・パラリンピックの開催の影響で会場が分散する。逆風の中、豊田章男・自工会会長は、車にとどまらず、幅広い関心の受け皿をつくって来場者を前回比3割増となる「100万人」とする目標をぶち上げた。

 10月24日から11月4日までの12日間開催される今回の東京モーターショーについて、自工会は「OPEN FUTURE」をテーマに設定した。

 9月26日、東京都内で定例の記者会見を開いた豊田会長は、「新たなモーターショーの形を提案し、100万人を達成したい」と話したが、これは驚きの数字だ。若者のクルマ離れが進んだほか、インターネットなどで手軽に新車の情報が入手できる時代となり、東京モーターショーの入場者数は減少傾向。前回の2017年まで5回連続で100万人を割り込んでいるからだ。前回は77万1200人で、達成には20万人以上増やさなければならない。

 豊田会長は、100万人を目指す背景に関して、「甲子園(高校野球の全国大会)や箱根駅伝、高知のよさこい祭り、徳島の阿波踊りなど、誰もが知っているイベントは100万人を動員している。自動車をはじめとする日本のさまざまな産業が集まり、楽しい未来を創ろうというのが今回のお祭りだからだ」と強調。綿密に積み上げた数字とは言えないが、東京モーターショーを再び、メジャーな見本市に“復権”させたいという強い思いを示した。

モーターショーの目玉は電動車

 今回のモーターショーは、公表された出展内容をみるとやはり、電動車を目玉とする会社が多いようだ。

 電気自動車(EV)で他社をリードする日産自動車は、小型EVの試作車「ニッサン IMk」を出展する。軽自動車規格のサイズだが、低重心で力強い走りを実現したという。

 内燃機関の改善を重視する一方、これまでEVに積極的ではなかったマツダも、ついに同社初のEVの量産モデルを世界初公開するという。来年に世界で販売する予定だ。

 スズキも、軽自動車サイズのプラグインハイブリッド車(PHEV)の試作車「WAKUスポ(ワクスポ)」を出展する予定。また、三菱自動車もスポーツタイプ多目的車(SUV)のEVの試作車「MI-TECH CONCEPT(マイテックコンセプト)」を世界初公開するという。

 ホンダは、9月にフランクフルトモーターショーで量産モデルを公開した「ホンダe」を出展する。ドアミラーに代わるカメラミラーシステムや、AI(人工知能)を用いた音声認識機能「ホンダ パーソナル アシスタント」を搭載する。

海外有名ブランドは日本市場より中国市場

 しかし、今回の東京モーターショーには、前回と比べても集客に不利な要素が多い。

 その一つが、多くの輸入車メーカーが、主要海外ブランドの出展を揃って取りやめたことだ。

 アウディやBMW、ミニ、ポルシェ、フォルクスワーゲン(VW)、プジョーなど、国内でも多くのファンがいるブランドだけに、自工会にとっては痛手だ。ポルシェやプジョーは、同時期に東京都内で独自のイベントを開催する予定。自工会は日本の自動車メーカーでつくる組織だけに、「輸入車メーカーにとってはあまり居心地がよくない」(関係者)という声もある。

 自動車各社は、電動化や自動運転などの次世代技術に巨額の投資がかかる。モーターショーによる訴求効果も小さくなっているため、出展する見本市を絞り込むのは当然の方向性とも言える。

 既に米国のメーカーは欧州で開かれるモーターショーに、欧州のメーカーは米国でのモーターショーには出席しない傾向が強まっているという。

 日本は市場が大きくないうえ、近くに中国という世界最大の市場がある。米国メーカーは既に出展をやめていたが今回、欧州メーカーからもそっぽを向かれることになった。海外の主要ブランドのほとんどが不参加となるのは、前年のリーマン・ショックの影響で輸入車の不参加が相次いだ2009年の東京モーターショー以来だ。

東京モーターショー

これまで参加してきた多くの輸入車メーカーが今回は出展を見送った(写真は2年前の東京モーターショー)

モーターショーの会場分散は吉か凶か

 もう一つは、会場の分散だ。来年の東京五輪・パラリンピック開催の影響で、これまでの会場だった東京ビッグサイトの使用が一部制限される。

 このため、自工会は会場をビッグサイトがある有明エリアだけでなく、1.5キロほど西側の青海エリアにも広げた。ここにあるトヨタの体験型展示場「MEGA WEB(メガウェブ)」も会場として利用する。両エリアを結ぶセンタープロムナード公園を「オープンロード」として、「近未来を感じていただけるモビリティを多数用意する」(自工会)という。

 豊田会長は、「分散開催を逆に生かす。エリア全体がテーマパークだ」と強調。広いエリアを回遊してもらう新しいスタイルの東京モーターショーを提案するが、会場をまわる面倒さが敬遠される懸念もある。

 東京モーターショーの復権に向けて、自工会はさまざまな手を打っている。無料で入れる場所も東京モーターショーとして初めて設定する。その“目玉”が、「フューチャーエキスポ」だ。自動車メーカーだけでなく、NTTやパナソニック、NEC、富士通など約60の企業・団体による最新技術を紹介する“未来体験ゾーン”。

 お笑い芸人が扮する「バーチャルキャラクター」が、入場者とリアルタイムで会話しながら会場を案内。トヨタやホンダの小型モビリティやNTTの超高臨場感通信技術、NECの顔認証技術を活用した店舗などが置かれる予定だ。電機メーカーやIT・通信会社の技術に関心を持つ人やその関係者らの来場で、前回までは取り込めなかった層の入場がある程度、見込めるのは確かだ。

 また、今回からは高校生以下は入場無料とした。職業体験テーマパーク「キッザニア」とのコラボでは、自動車メーカーをはじめとする10社の職業体験ができるという。コンピューターゲームの競技「eスポーツ」で、ソニーのレーシングゲーム「グランツーリスモSPORT」の大会を開くなど、子どもや若者に人気のイベントを実施する。

モーターショーの成否が業界再編にも影響か

 豊田会長は、「メーカーの目線で考えれば、デジタルが発達しお客さまに直に情報をお届けできるようになった今、車を展示して見に来ていただくというスタイルがどこまで効率的なのか。販売促進の手段としてモーターショーの意味合いはかなり薄れてきたのだと思う」と、モーターショーの意義がこれまで通りではなくなっているという認識を示した。

 また、米ラスベガスで毎年1月に開催されている家電見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」を引き合いに出し、「生活全体の未来が示される場で、一緒に未来を創ろうというさまざまな産業とともに伝えていくというやり方に変わってきている。東京モーターショーもそういった場にモデルチェンジしていかなければならず、そうでなければジリ貧のまま終わっていってしまうのではないかとさえ感じている」と強い危機感を示した。

 豊田会長は「100万人」の目標を示した会見で、自工会会長の任期を2年延長すると発表した。自工会会長はトヨタ、ホンダ、日産の3社首脳が持ち回りで1期2年ずつ務める慣例で、2期続けるのは異例だ。

 本来、東京五輪開催の直前に退任予定だったが、延長して2022年5月まで務める。豊田会長の陣頭指揮により、東京モーターショーが復権を果たせば、その求心力は一層高まる。

 ただでさえ、スズキとの資本提携やSUBARU(スバル)への出資拡大で、“1強”としてのトヨタの存在感はこれまで以上に高まっているところだ。東京モーターショーの成否は、今後の業界再編の行方にも影響を与えそうだ。

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