福岡県を中心に注文住宅から自社企画の住宅、さらにマンションや商業施設などの建築まで手広く手掛けるOZ工務店。同社の最大の売りは、創業以来着実に積み上げてきた技術力と提案力だ。
小川和敏・OZ工務店社長プロフィール
不況を乗り越えた提案力
柔和な笑顔が印象的なOZ工務店の小川和敏社長。もともと大工から身を起こし、総合建設会社にまで成長させた苦労人でもある。難しい案件でも積極的に受注することで、会社の実力を高めてきた。
父親が大工だった関係で、子供の頃から現場に通っていたという小川氏は、高校を卒業していったん就職した後、自らも同じ道に進んだ。親方に就いて修行を続けていたある日、高校時代の友人からの頼みで住宅建築を請け負ったのが、独立したキッカケだ。
「家一軒建てるのは、それまでとは全然違って面白かったですね。もともと独立志向はあったのですが、下請けではなくプロデュースから全部自分でやりたいと思ったんです」
と、小川氏は言う。
自らの力で家を一軒建てたことに自信を持った小川氏は、元請け業者となるべく福岡市に指名願(入札参加資格審査申請)を提出。最初は数千円程度の小さな仕事ばかりだったが、役所から仕事をもらえることが嬉しかったという。
そうして実績を積み重ね、売り上げは一期目から右肩上がりで成長を続けてきた。毎年売上高を1億円、2億円ずつ積み上げる形で、コツコツと堅実経営することを心掛けているとのことだ。
リーマンショック後の不況は、企画力を発揮して乗り越えた。福岡でアパート建築の発注が減ったため、隣の佐賀県に手を広げて個人向けのアパート事業に参入。同県では珍しかった2LDKでロフト付きの部屋を備えたアパートを複数棟建てて好評を得た。
「ここにロフトをつけらたら面白いなとか、大工のカンでアイデアを出していきました。それを土地のオーナーさんに提案したら気に入られて何棟か建てさせてもらったり、別のオーナーさんからも建ててほしいとお願いが来たり、といった状況になりました」
厳しい案件を手掛けて木造のイメージから脱却
家づくりに対するこだわりとして力を入れているのが、「健康の家」と称する免疫住宅だ。カビや感染菌などの発生を抑えるFFCという工法を、自社の建売商品にはすべて導入している。2018年に移転した本社社屋にも、この技術を採用しているという。
また、今後はできるだけ木造ではなく、RCや鉄骨などを用いるビル建設や大型施設の案件比率を増やしていく方針だ。その理由について小川氏はこう説明する。
「ビルを建てる場合、安全管理や品質管理を木造住宅以上にしっかりしないといけないので、職人たちのレベルが自然と上がっていきます。木造だけだと現場監督任せになってしまうこともあるのですが、厳しい工事の経験を積むことで人材のレベルも上がっていくんです。大きなビルを建てている会社が住宅を建てるということなら、お客さんからもより信頼していただけます」
地道に実績を積み重ねることで、RC・鉄骨を手掛ける会社というイメージも徐々に広まってきた。最近では、医療・福祉関連施設の建築も受注するようになっている。
会社として最大のピンチだったのは、現場監督2人と設計担当1人が同時辞めたときだと小川氏は語る。その経験から、自分ですべてを背負い込むことへの限界も感じたようだ。現在、社員は22人ほどだが、「社員に任せる経営」にシフトを進めているという。
「以前はすべて自分で指示を出していましたが、任せることによって部門ごとの売り上げ目標や販管費などを社員が自主的に出してくるようになってきました。そうしたほうが、今後も会社を大きくできる気がしています。若手が働きたくなるような会社にする一方で、所長を張れるぐらいの人材もほしいですね」
コストよりクオリティで勝負する
今後の建築業界の見通しについて、小川氏はこう話す。
「今はアパートへの融資も減ってきていますし、住宅販売のペースもあまり伸びていません。非木造の案件を取りに行くのはそういう事情もあるからです。
九州では福岡とその他地域の格差が開いていて、福岡での競合がますます増えてきている感覚がありますが、技術力と提案力があれば相応に伸びていけると思っています。特に提案力は重要で、設計部門の力量が問われますね」
コスト面で勝負することは避け、あくまでクオリティの高さと提案力を武器にしていく考えだ。当面は、福岡を中心とした展開が続くが、若手社員から他県に出ていきたいという声も上がっているとのことで、さらなる飛躍が期待できそうだ。
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