経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

小さな雑貨店勉強堂を地域No.1店へと導いた人事評価制度改革とは

業績を伸ばしたい経営者が真っ先に思いつくのは、商品力や営業力の強化、優秀な人材の確保といったことだろう。だが、後回しにされがちな「人事評価制度」こそが、企業の成長のカギを握るとしたらどうだろうか。特に中小企業においては、継続的に社員を育成させる仕組みとして、人事評価制度の担う役割は極めて重要だ。本連載では、人事評価制度改革によって業績を伸ばした中小企業の事例を紹介しながら、社員が育ち、かつ業績アップに貢献する人事評価制度の仕組み化と設計について分析していく。

売上げ3.8倍を実現させた勉強堂の人事評価制度改革とは

PURA VIDA(プーラ・ビーダ) 今回紹介する勉強堂は、宮崎県宮崎市近郊に女性向け雑貨店「PURA VIDA(プーラ・ビーダ)」を4店舗展開している。扱う商品は、化粧品やキッチン雑貨、子供服、ステーショナリーなど。顧客の99%が女性だ。宮崎市近郊に住む女性の3人にひとりがPURA VIDAの顧客だという、圧倒的地域No.1企業である。

インターネットを利用すれば安く商品が手に入る時代にもかかわらず、PURA VIDAはどの店舗も連日多くの買い物客で賑わいを見せている。多くの顧客の支持を集める勉強堂の成長を支えているのが、10年以上前から取り組んでいる経営計画書の実践と人事評価制度の運用だ。

改革に取り組む前の勉強堂は、3期連続で赤字が続き、財政状況は最悪の状態だった。歯止めがかからない顧客減少により、売上げはピーク時の6割程度にまで落ち込んでいた。

そんなどん底の状態から、V字回復を果たし、売上げは3.8倍を実現。このV字回復のキーとなったのが、経営計画書策定から始まる人事評価制度改革だった。

勉強堂のトップダウン体質からの脱却

勉強堂 現在は「地域に密着した細やかな顧客対応」が強みの勉強堂だが、改革を行う前は、トップダウンの体質が強く、社員を巻き込んだ店舗運営を進めていけるような環境にはなかった。

この体質を変えたきっかけが、経営計画書の策定・社内発表だった。

勉強堂は、社長を中心に約半年かけて経営計画書を策定。将来のビジョンと方向性を明確にした上で、全社員参加の経営ビジョン発表会を行い、企業としてのビジョンを全社員で共有した。次に行ったのは、店長クラスの社員を交えて、現場に落とし込んでいくための具体的なアクションプラン(実行計画)の作成だ。トップダウンで社長が決めて指示をするのではなく、リーダー社員が自ら参加することで、計画が他人事ではなくなり、ビジョン実現のために自ら動く社員を育てることができた。

評価制度の社員満足度が7割越えの理由とは

勉強堂 さらなる人事評価制度改革のひとつとして、勉強堂が実施した評価制度は、社員のPDCAの質を確実に高めていった。

評価結果を社員本人に通知し、その結果を受けて、次の3カ月の目標を3項目決める。目標を進捗管理するためのチャレンジシートに目標を書き、社内の掲示板に貼り出す。社員一人ひとりの目標を社内で共有することで、目標に対して継続的に取り組む仕組みができた。

評価制度に対する社員満足度を高めるため、勉強堂では、リーダー同士が社員の評価結果について議論する「評価決定会議」のレポートを社員に共有している。評価基準の可視化、リーダーが社員一人ひとりの成長のために人事評価を実施していること、そのために時間と労力を惜しんでいないことを社員へ伝えるのが目的だ。

こうした取組みの結果、「評価結果に十分納得した」と答えた社員が71.4%(通常、この数値の平均値は40%前後)にもなったという。

評価基準の明確化、会社全体で社員の成長を後押ししていること、そのための評価制度だという認識が社内で共有されていることが社員の納得度の高い評価制度の実現には欠かせない要素だといえそうだ。

人材育成による長期的な企業の成長と人事評価制度

人事評価制度を見直すことによって、赤字経営からの脱却を果たし、オンリーワンのポジションを確立した勉強堂。「地域に密着した細やかな顧客対応」という大手には真似のできない勉強堂独自のカルチャーが根付いた背景には、社員のPDCAサイクルを回し続け、企業の推進力を高める人事評価制度改革があった。

成長し続ける企業の条件として重要なのは、やるべきことの徹底的した「継続」だといえる。そして、その「継続」が人材育成による長期的な企業の成長に結び付く。人事評価制度は継続させるための仕組みだといえるのだ。

現在では、宮崎市内で知らない人はいないというくらい知名度を誇るPURA VIDA。地域に愛され、顧客に愛され、社員に愛され、オンリーワンの存在の会社へと成長をとげた。

成長を支えたキーポイントは、「経営計画書の作成と実行」と「人事評価制度の継続運用」だったといえるだろう。

(やまもと・こうじ)日本人事経営研究室代表。1966年、福岡県飯塚市生まれ。日本で随一の人事評価制度運用支援コンサルタント。日本社会を疲弊させた成果主義、結果主義的な人事制度に異論を唱え、10年間を費やし、1000社以上の人事制度を研究。会社のビジョンを実現する人材育成を可能にした「ビジョン実現型人事評価制度®」を日本で初めて開発、独自の運用理論を確立した。 導入先では経営者と社員双方の満足度が極めて高いコンサルティングを実現。その圧倒的な運用実績を頼りに、人材育成 や組織づくりに失敗した企業からオファーが殺到するようになる。福岡で2001年に創業、2013年には東京に本社を移転し、全国的にもめずらしい人事評価制度専門コンサルタントとしてオンリーワンの地位を築く。 業界平均3倍超の生産性を誇る自社組織は、創業以来、増収を果たす。 著書に「図解3ステップできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方」(あさ出版)など人事評価制度に関する本が4作あり、同分野では異例の発行累計8万部を突破。多くの経営者から注目を集めている。

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