マネジメント

富裕層専門のカリスマFP 江上治

 先日、南原竜樹氏にお会いできる機会を得た。以前、テレビの「マネーの虎」を見ていた時から、一度、お会いしたいと考えていたのだが、今度、編集部にお願いして、お時間をいただいたのである。

 現在、57歳の南原氏はLUFTホールディングスの代表取締役を務めるほか、医療系人材コンサルタント事業やレンタカー事業、中古車販売事業、出版事業、あるいは寿司店や居酒屋などの飲食店事業など、多角的に事業を展開している。年商は100億円を超え、株式の上場準備に入っているとのことだ。

 著述活動も活発で、『借金100億円からの脱出…地獄の危機を乗り越える逆転発想経営術』(河出書房新社)、『「絶対無理」なんて「絶対」ない』、『旅館再生の教科書』(共にATパブリケーション)など、書籍もたくさん執筆されていることはご存知のとおり。

 「マネーの虎」で「冷徹な虎」として人気を得た南原氏だが、去年はテレビ「しくじり先生」にも登場し、かつて部下との接し方で失敗した内容を赤裸々に語ってくれた。

 南原氏と言えば、そのずば抜けた行動力が有名だ。学生時代にドイツに行き、ドイツ車の輸入をして以来、輸入車の販売で起業。年商は100億円まで伸ばしたが、2004年にイギリスのMGローバーが破綻した余波を受け、資金繰りに行き詰まり、ホームレスにまでなったのはよく知られている話である。

 だが南原氏のすごいのは、ここから見事に再起したことだ。売り上げゼロ、社員ゼロの状態から、輸入車販売だけでなく多業種への事業展開に活路を見出す。イギリスのスポーツカーの輸入権を獲得した後、ワイン、コンテナ物流、福利厚生受託、レンタカーと、瞬く間に事業を拡大したのだ。

そのDNAに合った戦略が必要だ

 そんな南原氏の子ども時代、さぞかし活発な少年だったと想像しがちだが、「子どもの時の記憶はほとんどない」とのこと。

 「だけど、小学校5年生の時の担任が、お前は大成功するか、刑務所に入るか、どちらかだ、と言ったことだけは未だに覚えていますね。今のところ刑務所には入っていませんが、大成功しているとも思っていません」

 ところで私は、人間が成功するかどうかは15歳までの環境で決まると言って、そんな決定論では救いがないじゃないかと批判されたものだ。これについて尋ねると、南原氏はもっとラジカルだったのには驚いた。なんと「DNAで決まっている」というのだ。

 「人間は生まれつきDNAに能力が刻み込まれていて、その通りの人生になりますよ。足の速い子は、中学でも高校に行っても速い。頭のいい奴は、東大に行く。その子に逆転して勝つのは容易ではない。いや、万が一にしか逆転は起こらない。

 エジソンは、成功は99%の努力と1%のひらめき(才能)といったが、1%の才能が重要なんです。これがなければ成功はしません。世の中はそういう風にできています。だから、商売、ビジネスではその人のDNAに合った戦略が必要です」

 事業を展開する中で随所に南原流のDNA戦略が効いているらしい。

 南原氏は2012年に、愛知県知多半島の老舗旅館「呼帆荘」を買収するが、独特の経営で黒字転換させた。

ほかとは別のやり方で見事、黒字再生した旅館

 「私はほかの旅館とは違い、金、土、日、の3日間だけの営業にした。毎日、お客を呼ぼうとするから無理が出る。風呂や客室の管理もおろそかになる。週3日だけにして、そのほかの休みの日には、部屋や庭の掃除やら建物の補修を徹底して、準備に没頭した。旅館業界は右肩下がりだが、こうして営業の在り方そのものを変えれば儲かります。

 私は残存率が重要だと従業員にいうのです。つぶれた旅館は出ても、その客はいなくなるわけではない。別の旅館に行きます。生き残っていれば必ず確かな儲けが得られるのです」

 ただし、この「儲かる」という概念が事業を始めた当初はなかったという。

 「今でも、基本的に金には関心がない。儲かろうと思って事業を始めたこともない。すべて楽しいから、面白そうだからやってきたまでです。最初の車屋の時分は特にそうでしたね。28歳の時、気温50度のドバイまで車を買いに行きましたが、楽しかった。そのころは儲かろうなんて考えは、みじんも持たなかったものです」

 楽しいからやる。これが南原氏の、たぐいまれな行動エネルギーの源かもしれない。

[今号の流儀]

自分のフィルターで世の中を見、自分らしい戦略を実行せよ。

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