マネジメント

経営理念は、社員一人ひとりに浸透し、理念に基づいた行動を取ることができるようになって初めて組織全体の成長へと結び付く。「すべてはありがとうという笑顔のために」を企業マインドに掲げる第一電建株式会社の社長髙山幸治氏は、理念を会社経営の中心に据えた「理念経営」を行い、理念を社内に浸透させるべく取り組みを続けてきた。第一電建は、理念経営のためどのような取り組みを行ったのか、その取り組みによって組織はどのように変わったのだろうか。本連載では、人事評価制度改革によって業績を伸ばした中小企業の事例を紹介しながら、社員が育つ人事評価制度の仕組み化、設計について分析していく。

理念の浸透によって業績は右肩上がり

1_髙山幸治社長

髙山幸治社長

 今回紹介する第一電建株式会社は、福岡県を中心に電気工事事業を展開する会社だ。昭和46年6月に「電気の修理屋」として創業し、現在の社員数は34名、売上高は10億8000万円にのぼる。小学校、商業施設、道路照明、公園照明、交通信号機などの官公庁の案件を中心に豊富な施工実績があり、「電気工事業」ではなく、「電気工事もできるサービス業」をモットーに、「喜びと安心」をもたらすサービスの提供を目指している。

 髙山社長は、2008年に代表取締役に就任以降、理念の実現を経営の中心に据えた経営を目指し、理念を社内に浸透させる取り組みを継続的に実施してきた。その結果、取り組みを始めてから数年が過ぎた頃には、社員の言動にも変化が見られ、社員のベクトルが揃い、業績は右肩上がりに成長。しかし、社員の成果を給与に反映させる仕組みがなかったため、人事評価制度の刷新へと乗り出した。

社員から上がり始めた「役職者になりたい」の声

 経営理念やビジョンを社内に定着させるには、理念を主張するだけではなく、定着のための仕組み作りが必要だ。そういった理念定着のための仕組みとして、人事評価制度を刷新した。2015年5月から約半年かけて評価基準を策定し、12月にトライアル評価を開始。経営基本方針の策定、経営計画書に基づいた受注目標、アクションプランの設定、上司との面談など、理念を社員の行動にまで落とし込む仕組みを作り上げた。

2_社員研修の様子

社員研修の様子

 新たな人事評価制度の導入によって、幹部社員たちの意識にも変化が見られた。社員一人ひとりの自己評価に関するコメントを読むことにより、社員が日頃どのようなことを考えているのかを理解するようになったという。社員からも「ベクトルが揃っていることを実感した」という声が多数挙がるようになった。髙山社長も「人事評価制度の導入をきっかけに、社員達が私の決めたことに何の迷いもなく付いてきており、組織として1つの目標に向かって団結する力がさらに強くなった」と語り、理念を社員と共有できていることを実感したという。

 その他にも、社員から「役職者になりたい」「幹部として会社に貢献したい」などの声が挙がるほど、モチベーションが向上。現在では、主体性のある社員を育成するため、自らの宣言がなければ昇格ができない制度となっている。

売上げよりも「行動」を評価する仕組み

 新制度の運用が社員の成長につながると確信した髙山社長は、半期に一度だった評価を年4回に増やした。売上げ目標に基づく評価は年に1回のみの実施にし、売上げよりも、行動規範に基づいた行動を取ることができたか、与えられたミッションに対してどのような行動を取ったかという「行動」についての評価を重要視する制度とした。

 役職によって「行動」を評価するウェイトを変えており、役職が付いていない社員については、行動についての評価の割合を85%とし、主任クラスで70%、リーダークラスで50%としている。評価回数を増やし、「行動」についての評価を重要視することで、社員が自分自身と向き合う時間が増え、さらなる成長、モチベーションのアップにつながっている。

3_地域貢献活動の一つ「第一電建フェスタ」の様子

地域貢献活動の一つ「第一電建フェスタ」の様子

 第一電建は、人事評価制度を刷新したことで、より理想的な理念実現型の経営へと変わり、社員の成長支援の仕組み化に成功した。人事評価制度の運用によって、会社と社員が共通の目的を持ち、双方が共に成長できる理想的な状態を実現している。社員教育や採用にも力を入れ、4年ほど前から経営理念への共感を重要視した採用活動を行うようになった。毎月第一土曜日には社員研修を実施し、経営理念や行動規範を社員へ伝え続けている。

 こうした理念からの一貫した取り組みは、社員の自信につながり、自信が「会社が好き」という気持ちにつながる。そして、その「会社が好き」という気持ちが成長し続ける強い組織を作り上げる。それが、社員一人ひとりと丁寧に向き合い、地域に愛される企業を目指す第一電建の理念実現の先にある経営哲学だ。

(やまもと・こうじ)日本人事経営研究室代表。1966年、福岡県飯塚市生まれ。日本で随一の人事評価制度運用支援コンサルタント。日本社会を疲弊させた成果主義、結果主義的な人事制度に異論を唱え、10年間を費やし、1000社以上の人事制度を研究。会社のビジョンを実現する人材育成を可能にした「ビジョン実現型人事評価制度®」を日本で初めて開発、独自の運用理論を確立した。 導入先では経営者と社員双方の満足度が極めて高いコンサルティングを実現。その圧倒的な運用実績を頼りに、人材育成 や組織づくりに失敗した企業からオファーが殺到するようになる。福岡で2001年に創業、2013年には東京に本社を移転し、全国的にもめずらしい人事評価制度専門コンサルタントとしてオンリーワンの地位を築く。 業界平均3倍超の生産性を誇る自社組織は、創業以来、増収を果たす。 著書に「図解3ステップできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方」(あさ出版)など人事評価制度に関する本が4作あり、同分野では異例の発行累計8万部を突破。多くの経営者から注目を集めている。

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