1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善から病院全体の経営までサポートする。聞き手=金本景介

保木潤一氏プロフィール

ほき・じゅんいち 1984年ホギメディカル入社。営業、生産・経営企画の経験を経て、2005年に社長就任。手術室から病院の経営改善を図るシステム「オペラマスター」の立ち上げを行い、医療の現場に役立つ製品をコンセプトに営業を展開。

 

ホギメディカルの製品展開の歴史

 

―― ホギメディカルの製品展開について。

保木 当社は心電図や脳波計の記録紙を販売することから創業しました。数年後には院内感染を防止する滅菌用包装材である「メッキンバッグ」を発売。当時は「滅菌」という考えが今ほど重要視されておらず、手術による感染率が高かったのです。

 その後、1972年に医療用不織布を発売しました。当時、手術中に用いられていたリネン素材のガウンやドレープは、洗濯して繰り返し使用されていたのです。血みどろになったリネンを洗濯することは安全面での懸念もあり、現場にも少なからず抵抗がありました。

 そこで当社は使い切りで使用する不織布の製品を提案したのです。リネンからトータルで交換することにより、衛生面での効果は当然として、経済的な効果も大きいのです。そこから徐々に売り上げも伸ばし、現在でもメッキンバッグとともに国内でトップのシェアを占めています。

 不織布製品が市場に認知されたこともあり、91年には東証2部に上場しました。市場に出回っていない優れた製品を広めて定着させていくことが当社の役割だと考えております。

 

「オペラマスター」で医療業務の効率化を図る

 

―― 医療業務の効率化を図るシステムとは。

保木 2004年からスタートした「オペラマスター」は、一度の手術に必要となる医療機器をワンセットにしたキット製品と、情報と物流におけるサービスをまとめパッケージにした製品です。手術までの準備の手間と時間を大幅に短縮することを可能にし、さらに単品ごとの材料管理の手間も削減できます。物流の観点でも手術の前日までにまとめて納入するので、病院の在庫負担の軽減にも役立ちますし、削減された時間で手術数を増やすことが可能になるので、患者の早期退院にもつながります。

 当社は自社の製品においても徹底した原価管理と、工場の自動化による経費削減に注力してきました。当社独自の原価管理のノウハウがこの「オペラマスター」でも生かされています。

 また、今年から本格的なASEAN地域への進出を考えています。流通面での万全を期すために三菱商事とアライアンスを組み、今年8月にシンガポールに合弁会社を設立しました。やみくもに海外に進出するのではなく、他社にはまねのできない優位性を持った製品を外国で打ち出していきます。

 そのために「プレミアムキット」を生産するための新工場をつくりました。この「プレミアムキット」により手術で使う医療材料のほぼすべてを封入することが可能となりました。従来のキット製品に比べ手術準備の大幅な短縮が見込めます。

 経営的観点から見てASEANにおける医療機関のレベルは非常に高く、日本が見習うべき点が多くあります。今回はASEANへの進出ですが、最終的には「日本以外のすべての国」への販売が目標です。

 医療現場の合理化という点で日本よりも優れており、市場が大きい米国にも、いずれ進出したいですね。アメリカは材料が安いので、現地に工場を建てて販売できればと考えています。

 海外の病院経営と日本の医療現場を比較することで、多くの改善点も見えてきます。現地での気づきを日本にもフィードバックします。

 

少子高齢化に向けて病院経営全体の効率化を目指す

 

―― 日本とアメリカの病院の違いは。

保木 アメリカの病院は病床数が日本全体の半分にもかかわらず、非常に無駄なく回転し、成立しています。ASEANでもそうですが、アメリカは24時間手術している病院も多いのです。時間の使い方がシビアなアメリカだからこそ、当社の製品とは非常に相性が良いとも言えます。

 ただ、日本の医療が優れている面は多くあります。アメリカが必要以上に外科的処置を施すのに対し、臓器を大きく傷つけず内視鏡治療やカテーテルを用いて患者の身体的負担を和らげる「低侵襲医療」もその一つです。

 当社も時代とともにキット製品の手術道具の組み合わせをリアルタイムで更新していますから、この低侵襲への取り組みはしっかりとサポートしていきます。また、日本の医療現場のニーズと向き合うという点で言えば、使い捨てされる高額デバイスのR-SUD(単回使用医療機器再製造)事業に注力しています。これに薬や鋼製器具、キット製品の封入も実現すれば、キットとしての完成度も向上し、さらなる利便性につながります。

―― 厚労省は出来高払いでない、定額診断群分類別包括評価(DPC制度)を進めながら、さらに慢性期(回復期)病院の数を増やし、手術を専門とする急性期病院の数を減らす医療制度改革を掲げています。

保木 DPCを導入している病院が当社のメーンの顧客です。医療費や診療報酬が改訂されるごとに赤字幅が増えてしまうことは否めません。

 だからこそ当社のシステムを活用しながら病院全体を経営的観点から見直し、コスト削減を進めていくことが重要です。特定の部署だけで利益を出すのではなく、院内全体をくまなく動かせる仕組み自体を構築していきます。

 日本は売り上げを重視して急性期病院ばかり建てられてきた経緯がありますが、慢性期病院が利益を生み出せないということでは決してありません。また、売り上げをいかに増やすかということだけが経営ではないのです。増え過ぎた急性期病院を統合し、院内全体で合理化を進めていかなくてはいけません。

 効率的に運営を行うことで、医師不足の問題もクリアできるはずです。当社は順天堂病院と共に効率的な病院経営システムの共同研究を進めています。

 人材不足と加速する医療費の増大とが懸念される医療業界に対して効率的な経営による打開策を提案していきます。

 

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