経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

【企画特集】コロナ禍の資産運用―富裕層が知っておくべきお金との付き合い方

 世界的な株高が続くも、新型コロナウイルスは収束に向かうのか未だ予断を許さず、米中貿易摩擦がどれだけ解消されるのか見通せない。不透明さが続く事業環境で、経営者をはじめとした富裕層は資産を運用・防衛するために一層の備えが不可欠だ。

 本企画では、識者にマーケットの展望をインタビュー。さらに、保険や収益用不動産といった富裕層がお金とうまく付き合うために最適なソリューションを紹介する。

コロナ禍で高値に沸く株価

 コロナ禍で世界経済が悪化する中、年初の東京株式市場は日経平均株価で2万8千円を突破するなど、30年振りの高値に沸いた。世界中で数多くの企業が打撃を受け、今なお不透明感が増す中で、日経平均の高値は理由が見つけにくい。ワクチン接種がようやく始まり、バイデン新大統領が就任したことで米中貿易摩擦が緩和する可能性があるが、シュリンクした経済活動が急カーブで復活する可能性は低いだろう。

 日本では緊急事態宣言が再発令され、外食産業の営業時間短縮や移動の自粛要請を通じた国民生活へのしわ寄せが一層強まっている。ただ、全産業が低迷しているのではなく、一足飛びで復活している自動車メーカーやIT企業、建設・不動産事業者は最悪期を脱したとみる向きがある。

 このような時期に経営の指揮を執る経営者は不運かもしれないが、経営にアクシデントはつきものだ。時代の流れや環境の変化に合わせてマネジメントを再構築するために、良いきっかけになるかもしれない。

有効的な資産運用が経営者の喫緊の課題に

 さて、経営者にとっては事業の維持拡大とともに、資産の有効活用や相続・事業承継対策が現在、喫緊の課題となっている。竹中平蔵・東洋大学教授は谷敦・役立つ士業協議会理事長との対談(本記事後出のリンク参照)で「資産運用では1、2%程度の利回りの差は関係ない、一番大事なのは相続税対策である」と述べている。

 これは、日本マクドナルドの創業者、故・藤田田氏の言葉だ。

 適正に納税することは当然だが、やり方を間違えれば相続人を不幸にし、ひいては会社を危うくして従業員にも迷惑を掛けることになる。悲劇を招かないために、資産家にはもしもに備えて早めに対策をすることが求められている。谷理事長も、遺言書がない状態で資産を承継すると、他の親族から法定相続分を請求されて事業基盤や個人資産が毀損してしまうリスクを指摘している。信頼できる専門家の助言を得て守りをしっかり固めた上で、資産を育てることが欠かせない。

 投資商品として経営者に人気の不動産は、コロナ禍で変調をきたしている市況を十分見極めた上で投資すべきだろう。外出自粛で商業施設への客足が鈍り、テレワークの普及でオフィスビルの空室率が上昇基調にある中で、賃料の引き下げがあちこちで起こっている。

 一方、住宅需要は引き続き堅調を維持しているが、都心に通勤しなくても良い状況が長引けば郊外住宅の取得意欲が増すだろう。とは言え、アクセス性が高い都心の賃貸需要は引き続き堅調だ。三光ソフランホールディングスの高橋誠一社長が提唱するように、都心の駅近物件など中長期的に安定した賃料収入を見込める優良物件を確保する努力は欠かせない(本記事後出のリンク参照)。

 また、若い経営者であれば、時間を味方につけて、資産の半分以上をリスク商品に投じるのも一つの考えだ。数多くの富裕層の資産運用をサポートしているフィナンシャルリンクサービスの伊月貴博社長は米国株の有用性を解く。

 「米国株はITバブルやリーマンショックでの大幅調整を乗り越え、長期上昇トレンドが続いています。例えば、私が4年程前から注目してきた電気自動車メーカー、テスラの時価総額は、今やトヨタ自動車の3倍以上です。株式投資では、米国株をウォッチしておけば十分と言っても過言ではないでしょう」

フィナンシャルリンクサービス
フィナンシャルリンクサービス社長の伊月貴博氏

 伊月氏はリターンを狙いたい投資初心者向けに、米国の代表的な株価指数「S&P 500」に連動したインデックスファンドの購入を勧めている。「S&P 500」は定期的に銘柄入れ替えがあり、10年間で半分程度が刷新されるという。

 「昨年末にテスラがS&P 500に採用されるなど新陳代謝を繰り返すことで、ファンドを購入した投資家が成長の果実を得られるように設計されています。低金利時代ですから、若い方なら思い切ってリスク商品の運用比率を上げても良いと思います。オーナー経営者の場合は相続や事業承継を見据えて、安定した資産運用が必要になります。ご自身の年齢や資産総額、リスクを見極めることが肝要です」と指摘している。

 「昨年末にテスラがS&P 500に採用されるなど新陳代謝を繰り返すことで、ファンドを購入した投資家が成長の果実を得られるように設計されています。低金利時代ですから、若い方なら思い切ってリスク商品の運用比率を上げても良いと思います。オーナー経営者の場合は相続や事業承継を見据えて、安定した資産運用が必要になります。ご自身の年齢や資産総額、リスクを見極めることが肝要です」と指摘している。