内閣府が昨年12月8日に発表した2015年7〜9月期の実質国内総生産(GDP)改定値は年率換算で前期比1・0%増となり、11月に発表された速報値の0・8%減から、大幅に上方修正された。最新の統計結果を反映し、設備投資を引き上げたのが大きな理由だ。ただ、設備投資の推計方法の精度の問題も大きく、速報値と改定値の振れの大きさは、政策決定の判断に悪影響を及ぼしかねないとの懸念も上がっている。
「(上方修正は)良い意味で市場にはサプライズとなった。(設備投資については、企業が)ようやくその気になってくれた」。甘利明経済再生担当相は改定値発表後の会見で、こう述べた。
GDP改定値を押し上げたのは設備投資の上方修正で、速報値の1・3%減から0・6%増へと大きく上ぶれした。速報値後に発表された7〜9月期の機械受注統計で、自動車など関連の設備投資額が伸びたことを反映した。
ただ、この設備投資の推計方法は、速報値と改定値で精度にズレがある。
速報値の場合、工作機械や発電機といった、機械を作る企業を対象にした調査などにもとづき、設備を供給する側の動向から設備投資額を推計している。このため、誰が設備を購入したかという特定がしにくく、民間が購入したものが、誤って公共投資に区分される可能性もある。
これに対し、GDP改定値に使う法人企業統計は、設備を導入する需要側の企業約2万7千社に実際の設備投資額を聞いており、より精度が高い。業種もより幅広い範囲で調査している。ただ、資本金1千万円を下回る企業は調査対象外で、中小企業の実態をよく表していないとの批判もある。
問題は、統計手法の違いによってGDPの速報値と改定値が大きく変わり、政府による政策決定に一貫性が出なくなる恐れがあることだ。海外投資家の日本に対する信認も大きく損なわれる恐れがある。政府は今一度、統計の調査手法の在り方を、本格的に見直す必要があるといえそうだ。
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