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健康寿命の延伸に「体と心の栄養」で貢献する「宅配クック 123」―シニアライフクリエイト

2019注目企業画像

在宅の高齢者向け弁当の宅配事業「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」をフランチャイズ(FC)展開するシニアライフクリエイト。提供する弁当は「体と心」の両方の健康を保つことを目標としており、配達時に手渡しして世間話をし、「安否確認」と「認知症対応」をしているところが特長だ。

高橋 洋氏

シニアライフクリエイト 代表取締役 高橋 洋(たかはし・ひろし)

在宅高齢者に毎日8万食を全国約350店舗で展開

 ファミリーマートの子会社で、「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」をFC展開するシニアライフクリエイトが順調に業績を伸ばしている。現在、在宅の高齢者を中心に全国約350店舗で毎日8万食を届けている。

 生まれ育った家で1日でも長く過ごしてほしいという願いから、離島や限界集落などの過疎地域で積極的に加盟店の出店を進めているほか、地域のケアマネジャーや消費者に対して栄養の重要性に関する勉強会の開催により地域の信頼を高めている。

 「健康な体を維持するためには筋肉量を保つことが欠かせません。そこでこの冬から筋肉の元になるタンパク質をしっかり摂っていただける内容に進化させた弁当の提供に踏み切りました。このため売り上げは前年比10%弱の増収でしたが、減益になっています」

 高橋洋社長は塾の講師をしながら弁当店でアルバイトをしていた時、店が閉店することになり、高齢者に食事の提供ができなくなってしまった。別の店に注文してくださいと断ることができず、高齢者向け宅配弁当のFC本部を立ち上げたのが1999年。それが「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」のスタートだ。

 弁当の値段は1食594円(ご飯付き、税込み)で、1カ月間、昼夜頼んでも年金生活者が利用しやすい3万円台に収まる。一般の弁当とは違い、おかずとご飯を同じ容器に盛らないのも、ご飯を手に持ち姿勢良く食事してもらうための配慮だ。

 「タンパク質を増やすといっても、食が細くなっている高齢者が食べきらなければ意味がない。肉の部位を変えたり、漬物の代わりにシラスにしたりと工夫しています。筋肉量を保つことで寝たきりや誤嚥性肺炎を少しでも予防するための取り組みです。私たちは、単に弁当を配達する仕事ではなく、お客さまに会いに行く仕事であることにこだわりを持っています。配達時に世間話しながら、季節に合った服装をしているか、冷暖房の切り替えができているかなどのチェックもできます。会話の中で認知症の傾向が見られたら、ご家族やケアマネジャーなどに報告します」

向こう三軒両隣の意味を込め「ワン・ツゥ・スリー」が屋号

 屋号の「ワン・ツゥ・スリー」には向こう三軒両隣の意味が込められている。高齢者に毎日接している宅配員が、真っ先に異変に気付ける存在、隣人のような存在でありたいという。

 提供する弁当のテーマの一つがこうした「体の栄養」だが、もう一つのテーマが「心の栄養」。「ごちそうの日」として月に1回いつもの食事よりも特別に豪華な弁当を、価格を変えずに提供している。黒毛和牛のハンバーグ、金目鯛の煮つけや車エビの天ぷらといったメニューだ。

 「この日は完全な原価割れですが、こうした食材を届けるときに『おばあちゃん、子どもの運動会や遠足のときに手ごねで作ってあげたんじゃない?』と一言添えるのです。これがフックとなってお年寄りから昔話や自慢話が出たら、右脳が活性化しているサイン」という。宅配員の腕の見せ所であり、この独特な仕事の励みにもなっているようだ。

宅配クック ワン・ツゥ・スリー

「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」のお弁当

 

 2006年から始めた老人ホームやデイサービスなどの施設に食材を供給するサービス「特助(とく すけ)くん」は、調理済み食材のため、調理時間の短縮による人件費削減、水道光熱費の削減などコスト削減や作業効率化のニーズを捉えて前年売り上げの20%増という。

 また、高齢者が集うサロンを青森でモデル事業として試験的に委託運営。健康寿命を延ばすだけでなく、将来は稽古事や学習塾といった文化教養などの要素も盛り込み、地域の学校のような存在になることを目指しているとか。

 これらの取り組みで、19年2月期におけるFC加盟店数は前期比10店増の347店舗、FC合計売上高は同10%増の156億6400万円を見込む。

 「私がずっと続けているのは、地域や高齢者宅を直接お訪ねすること。おかずとご飯を同じ容器に盛らないのも、ごちそうの日のアイデアも、現場から得ました。1日のうちで当社の宅配員としか会話しない高齢者も多い。だからこそ高齢者に寄り添い、これからも元気で生きて行こうという気持ちを増してもらいたい。生きてきた足音を聞き、それを生きて行く勇気に変えてほしい。そして健康である期間を延ばしたい。その想いや取り組みを地域のケアマネジャーや高齢者のご家族に理解してもらえれば、地域での当社支持率が上がり、その地域に必ず必要とされる事業者となり、国への貢献と未来の企業価値向上に必ずつながると執着心を持って取り組んでいます」         

 

会社概要

設立 1999年12月

資本金 2億8,000万円

売上高 93億2,347万円(2018年2月期)

所在地 東京都港区

従業員数 87人

事業内容 高齢者専門宅配弁当「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」フランチャイズ本部の運営、高齢者施設向け食材卸事業「特助くん」の運営、健康管理食宅配通販事業「彩ダイニング」の運営

http://www.slc-123.co.jp/

 

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