電気設備工事、リニューアル工事、総合ビル管理、プロパティマネジメントの「四位一体」の事業で、建物のあらゆるフェーズに対応するアキテム。建設コストの高騰や技術者不足が業界全体の課題となる中で、既存の建物を大切に生かす同社には追い風が吹いている。文=垣内 栄 写真=西畑孝則(雑誌『経済界』2025年7月号より)

こいぶち・けんたろう
電気工事会社を祖業とし、創業73年を迎えたアキテム。リニューアル工事、総合ビル管理部門に加え、2019年からは新たにPM(プロパティマネジメント)部門を立ち上げ、独自のポジションを築いている。
「PM部門は建物というハードを扱う3つの部門とは異なり、不動産経営というソフトを扱うので、できることの幅が広がりました。四位一体でお客さまの悩みにワンストップで応えることができます。当社単独で責任をもって対応でき、コストが削減できることも強みになっています」(鯉渕社長)
顧客との関係も従来の発注者と受注者という立ち位置ではなく、一歩踏み込んで提案できるパートナーという形に変えていきたいと鯉渕社長は語る。そのためにも商談の場面で4つの部門がスムーズに連携できるよう、社内で新たな指標を導入した。
「部門ごとの採算を優先するのではなく、他部門と協調した結果、生み出した価値を定量化できる評価制度を整えました。どの部門もフラットな位置付けで、社員の働きがいを高めていくことも重視しています」
同社は3期連続で最高売上を更新。目下はPM部門を成長させ、四位一体の案件を増やすことを目標に掲げる。
一方、昨今は建設コストの高騰により、業界全体で開発プロジェクトが中止するケースも相次いでいる。「建物を使い続けたい」という相談も増え、リニューアルの需要は高まり続けている。
「30年ごとに建て替えするのではなく、40年使うことで、10年間の環境負荷低減につながります。建物を大切にする人に対して価値を提供していくという当社の理念が、世の中のトレンドと合致してきているのではないかと感じています」
次代を見据えればこそ、環境資源の浪費を抑えることは急務だ。建物を通して環境を守る取り組みに鯉渕社長は矜持を持つ。
「不動産は単なる金融資産として見られる向きもありますが、建物は町の景色をつくる大切な作品です。人々が建物で豊かに過ごすことでより価値が発揮されます。テナントが入り、儲かりさえすれば建物は老朽化しても構わないという価値観が変わる未来を期待しています。建物に関わる全ての人々の豊かさと、素晴らしい町の景色に貢献する会社として、お客さまに共感していただけるとうれしいです」
会社概要 株式会社アキテム 設 立:1952年11月 資本金:8,100万円 売上高:36億2,158万円 所在地:東京都目黒区 従業員:247人 事業内容:電気設備工事、 リニューアル工事、総合ビル管理、プロパティマネジメント https://www.akitem.co.jp/ |