デジタルマーケティングで急成長を遂げたリブワーク。売り上げは5年で60億円から160億円へと約100億円増を達成した。次なる柱は3Dプリンター住宅だ。職人不足を解決し、誰もが家を持てる未来を目指す。(雑誌『経済界』2026年1月号より)
Lib Work 瀬口 力のプロフィール

好調を支えるプラットフォーム事業
戸建住宅の企画・販売を手掛けるリブワークは、自らを「ハウステックカンパニー」と称する。背景にあるのは、テクノロジーを活用して住宅業界に変革を起こすという使命感だ。
インターネットが普及し始めた1999年から、従来の住宅メーカーがチラシやテレビCMでモデルハウスに集客するのに対し、同社はネットを活用してモデルハウスの来場につなげる方式を採用。2020年に開設したYouTubeチャンネルの登録者数は、25年10月現在で14万人を超え、集客コストの大幅な削減を実現している。
業界のDX化にも積極的だ。22年には、AIを活用した工務店向け営業支援ツール「マイホームロボ」をリリースした。施主の要望の聞き込みや設計プラン作成など、初期提案の準備を5分で済ませることができるため、素早い提案と人件費削減が可能となる。
現在はカナダの企業と共同で、顧客の要望をテキスト入力するだけでゼロからプランを生成できる次世代AI機能の開発を進めている。「約1万プランを学習させることで、日本初の自由設計AIが誕生する見込みだ」と瀬口社長は語る。全国には3万社を超える工務店があり、今後この市場への導入拡大を進めていく考えだ。
売り上げは20年6月期の60億3600万円から25年6月期には160億400万円へと成長し、わずか5年で約100億円増を達成。営業利益も好調で、25年6月期は8億3300万円と前年比68・1%の増益となった。
増益の要因は3つある。1つめが内製化の推進。幸の国木材工業(プレカット工場)を2年前に買収し、家づくりの前工程を内製化したことで、粗利率が3・3ポイント上昇した。2つめが価格転嫁の完了。原材料費の上昇分を販売価格に反映させる取り組みが定着した。3つめにマイホームロボとIPライセンス事業を行うプラットフォーム事業の収益化。マイホームロボは既に全国約200社の工務店に導入されている。
また、スタイルエディトリアルブランド「niko and …」と共同開発した「niko and … EDIT HOUSE」のIPライセンス事業も展開し、数十社が加盟している。
「今後も独自の世界観を持つ企業と組んで商品化し、自社で成功したモデルを横展開していきたい」と瀬口社長は話す。
職人不足解消へ 3Dプリンター住宅に注力
24年6月期から始まった3カ年の中期経営計画では、最終年度の26年6月期に営業利益30億円を目標としていたが、25年8月に10億円へ下方修正した。瀬口社長は外部環境の変化に加え、3Dプリンター住宅への先行投資を理由に挙げる。
同社が3Dプリンター住宅の開発に着手した背景には、16年の熊本地震の経験がある。当時、家を建てたい人はたくさんいたが、職人不足で2〜3年待ちの状態だった。目の前に家を必要とする人がいても提供できない。今後も同様の事態が起こり得るとの危機感から、職人不足を解消し、手頃な価格で住宅を提供するための技術開発を進めている。
3Dプリンター住宅のコンセプトは「自然素材とIoTを活用した地球にやさしい未来の家」。太陽光発電とテスラ社の家庭用蓄電池を組み合わせ、電力の自給自足を実現する。将来的には工期を一般住宅の半分程度まで短縮していく計画だ。価格は2千万円台からを想定し、26年1月から一般販売を開始する予定。
「住宅業界は技術革新が進んでいない。家づくりにもイノベーションを起こさなければ、欲しいという人がいなくなるのではないかと危惧している。今こそ投資すべき時期だ」と瀬口社長は力を込める。
工務店と協業し業界全体の底上げへ
今後、同社が注力するのは3Dプリンター住宅のシェア拡大だ。工務店向けにプリンター導入支援や操作指導などを行うFC事業を計画している。併せて「マイホームロボ」やIPライセンス事業の拡販にも取り組む。
「直接家をつくるだけが私たちの役割ではない。工務店と協業して、より良い住宅を提供することも役割だ。工務店が弱点としているAI・DX・集客・ブランディングといった分野を支援し、優れた工務店が世の中に残っていける仕組みを整えたい」と瀬口社長。
顧客ファーストを核に据え、テクノロジーで住宅業界に変革を起こす。その姿勢が、リブワークの成長を支えている。

| 設立 | 1997年8月 |
|---|---|
| 資本金 | 13億2,150万円 |
| 売上高 | 160億400万円 |
| 本社 | 熊本県山鹿市 |
| 従業員数 | 355人 |
| 事業内容 | 戸建住宅事業、3Dプリンター住宅事業、プラットフォーム事業 https://www.libwork.co.jp/ |

