福岡から主要都市へ存在感増すマンション１棟経営パートナー　田中貴広　モダンプロジェ

投資用賃貸マンション企画・販売のモダンプロジェは、福岡、長崎を中心に設立10年余りで累計１４０棟超を手掛けた急成長企業だ。大阪や沖縄でも実績を上げつつある。２０２４年からはＨＤ体制に移行し、グループ経営を強化する。（雑誌『経済界』「半導体特需に沸く九州特集」2024年1月号より）

福岡、長崎中心に１４０棟超。大阪や沖縄でも供給

　「創業当時は１台の車に３人が同乗してオーナーさまの元を回っていました。その時は会社がここまで大きくなるとは思ってもいませんでした」

　そう振り返るのは、投資用賃貸マンション等の企画・販売を手掛けるモダンプロジェの田中貴広社長。２０２３年３月、創業者の別府大力社長に代わって就任し、別府社長は代表権のある会長となった。前述の３人とは別府会長、田中社長、石原一智専務のことだ。その３人で創業した同社は、10年余りでグループ従業員数が１００人を超えるまでに成長した。

　12年３月設立の同社の強みは、マンション１棟経営をオーナーの要望に合わせた無理のないプラン立てから融資先確保、建築、管理までワンストップで提供すること。福岡、長崎を中心に供給実績を積み重ね、今では累計１４０棟を数えるまでとなった。そのうち７割がＲＣ造マンション、３割は長崎でのみ展開する木造アパートだ。

　売上高は22年２月期が35億円、23年２月期は約４割増の50億円まで拡大した。

　事業エリアも拡大している。現在は長崎、熊本、大阪、沖縄、東京に出先事務所を配置。大阪ではこれまで３棟を供給した。沖縄でも拠点開設から４年で初めて土地の仕入れに成功し、第１号物件の建設を計画中だ。今後は他のエリアへの進出も検討しているという。

好立地物件揃え入居率95％のデザイナーズマンション

　右肩上がりの供給を後押しする要因は複数ある。

　１つ目は福岡市内の人気エリアで土地を着実に仕入れている点だ。特に近年は天神エリアや博多エリアをはじめとした市内中心部、そこから地下鉄が直結する西新エリア、姪浜エリアといった住宅地など、好立地での物件供給が目立つ。加えて、土地購入の際の同社のレスポンスの速さについても評判が広がっているという。それらの実績・要因が、優良な土地情報を再び同社に呼び込んでいる。

　２つ目として、物件自体の強さがある。

　自社企画による主力の「モダンパラッツォシリーズ」はローコストで建てることができるデザイナーズマンション。スタイリッシュな外観と白を基調にした内装が人気だ。また、23年からは、バスユニットにマイクロバブルバスを採用するなど設備をグレードアップした高級志向の「モダンアスピラシオンシリーズ」の供給も開始した。

　これら特色ある建物と併せて、物件が好立地に建っていることも相まって入居率が極めて高い。

　購入するオーナーは企業経営者や開業医などで、複数棟を所有するオーナーもいる。田中社長は「在庫のバランスを見ながらではあるが、引き続き仕入れは積極化していく」と語る。

24年から新しくＨＤ体制に。社会貢献事業も推進

　会社の成長に併せて、人材育成にも力を入れている。

　「不動産ビジネスはすぐに身に付くものではありません。人材は大切に育てています」と語る。同社では、別府会長自らが１～３年目の若手社員を出張先に同行させるなどしている。

　また、人材育成はグループ全体にも及ぶ。その一環がホールディングス化だ。同社は設立以来、Ｍ＆Ａ等でグループ会社を増やしてきた。現在は不動産仲介会社、ビルメンテナンス会社、清掃会社、消防設備点検会社、リフォーム会社など計10社からなる。

　23年７月に設立した株式会社morgen ponteホールディングスの傘下にグループ会社を置き、将来的には社員にグループ各社の社長を経験させ、人材強化につなげたい考え。同時に、モダンプロジェ内の一部業務を分社化し、持株会社傘下に置く計画もある。24年の年明け早々から、新しいホールディングス体制を稼働させていくという。

　一方、社業とは別に社会貢献事業も推し進める。福岡市内で子ども食堂を定期的に開いているほか、全九州学童軟式野球大会のスポンサーにもなっている。田中社長はそれらの理由を一言、「地域にお世話になったから」と語る。

　同社が掲げるモットーは、「仕事は楽しく」「オーナーさま、取引先企業など関わった皆がハッピーになれること」。そのハッピーを地域に届けている。