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「現場主義を進化させ、もっと強い会社に」――西澤敬二(損害保険ジャパン日本興亜社長)

損害保険ジャパン日本興亜社長 西澤敬二氏

4月1日より、前任の二宮雅也氏に代わり損害保険ジャパン日本興亜の社長に就任した西澤敬二氏。2014年の損害保険ジャパンと日本興亜損保の2社統合の際には、現場の責任者として指揮を執った実績を持つ。持ち株会社である損保ジャパン日本興亜ホールディングス(SOMPOホールディングス)が介護や住宅リフォームなど異業種への参入を加速し、巨大な事業体へと進化を遂げる中、グループ中核企業のトップとしてどんな手腕を発揮するのか。 聞き手=本誌編集長/吉田浩 写真=佐藤元樹

損害保険ジャパン日本興亜の社長に就任した西澤敬二氏

―― トップとしてまず着手したいことは。

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(にしざわ・けいじ)1958年生まれ、東京都出身。慶応義塾大学経済学部卒業後、80年安田火災海上保険入社。損害保険ジャパン執行役員営業企画部長、常務執行役員等を経て、2010年取締役常務執行役員。13年取締役専務執行役員、14年代表取締役専務執行役員、15年損害保険ジャパン日本興亜代表取締役副社長執行役員を経て、16年4月より現職。

西澤 当社は損害保険ジャパンと日本興亜損害保険の合併で誕生しましたが、過去を振り返ると7社が統合してできた会社ということもあり、器が大きくなるにしたがって、いわゆる大企業病のリスクが出てきています。意思決定のスピードが以前より遅くなっている気がするので、もっと現場中心の体制にしていきたいですね。本社でデータを分析し、さまざまな指示を与えるというフレームワーク自体は悪いことではないのですが、さらに成長するために、もう一度現場中心の会社にしていく必要があります。

―― 前任の二宮社長も現場への権限移譲を強調していましたが、まだ不十分だと。

西澤 地区本部に権限を委譲する連邦経営を進めていますが、それだけでは不十分です。地区本部の本部長が権限を行使するだけでは、現場にしてみれば単にミニ本社がたくさんできたのと変わりません。もっと現場に降りて、最小単位の組織が一定の権限移譲を受けて機能しないと会社は強くなっていきません。二宮さんもそれを目指していましたが、今後は連邦経営をもっと進化させることが課題です。

―― 具体的にはどんなことを。

西澤 制度面と従業員個々のメンタル面の双方が大事です。例えば、会議のやり方や意思決定プロセスなど仕組みの面をシンプルにすると同時に、従業員ともとことん議論したいと思っています。私が経営企画部門の担当役員だった時代にも、経営の基本である業務コンプライアンスやリスク管理の委員会を残して、それ以外の委員会はすべて廃止しました。

―― 経営企画部門の責任者として、2社統合では相当苦労したのではないですか。

西澤 分岐点はたくさんありましたが、商品、事務、システムすべてを損保ジャパンに片寄せしたことが一番の英断でした。2010年から始まった統合プロセスで、両社のより良いものを合わせて商品や体制を追求してきましたが、システム統合のリスクはそのままお客さまのリスクになるので、安心・安全を最優先しました。合理的な判断として、多くの顧客を持つ会社のほうにいったん片寄せした上で品質を磨いた方が経済合理性も高く、混乱も少ないと考えたのです。日本興亜出身の二宮さんにとっては苦渋の選択だったかもしれませんが、かなり早い段階で決断されました。その決断の早さによって、ほとんどお客さまに迷惑をかけずにシステム統合をやり遂げられたと思います。

―― 日本興亜側から不満は出ませんでしたか。

西澤 当初は、従業員の間に不安や不満はあったと思います。損保ジャパンの従業員も、合併前に自分の仕事を抱えつつ日本興亜の人たちに教えなければという点で負担感があったと思います。お互いに不安はありましたが、実質的な合併を行う中で融和していきました。

現場主義の進化と損害保険ジャパン日本興亜の今後の展開

―― 最近ではコールセンターにAI(人工知能)を導入するなど新たな試みも行っていますが、今後の展開は。

西澤 基本はやはり現場主義です。そこを経営の本質に据えることは変わりません。ただ一方でデジタルの世界においては、最先端の研究をどんどんやらないとグローバル競争で置いていかれます。重要なのは、まず生産性を上げること。ものすごい量のビジネスインテリジェンスツールが世の中に出てきているので、すべての業務プロセスを見直し、最先端技術をどんどん現場に取り込むように本社内の各部署に指示を出していきます。これは現場というよりは本社の役割ですね。

 もうひとつ重要なのは品質で、中でも一番大事にするのは「お客さま接点品質」です。こちらはリアルとデジタルの双方で取り組む必要があります。当社には代理店チャネルがあり、営業職員や保険金支払サービス部門の社員がいて、24時間365日コールセンターを稼働させて、ウェブも活用してというふうにお客さま対応をマルチチャネル化してきましたが、それだけでは足りません。例えばお客さまが事故を起こして代理店に電話しても、いったん電話を切って数時間後にかけ直したら出てくれず、コールセンターに連絡してまた一から説明しなければいけないといった状況が多々見られます。瞬時に各部門で情報が連携されなければ、品質の高いサービスは提供できません。環境変化が激しいので、いかにお客さまの立場でものを考えられるかが企業の優劣を決すると思います。

 そして、お客さまの価値創造。今はテレマティクス技術を活用した商品なども提供していますが、こうした商品・サービスを徹底的に磨いていきます。そして、私自身まだハッキリとした解はないのですが、デジタルの力を使って全く新しいビジネスモデルができる可能性があると考えています。仮に、グーグルやアマゾンがこの業界に乗りこんで来るとしたら、どういうビジネスを彼らはやるのかと思いをめぐらせないといけません。

 われわれは相当なビッグデータを社内に持っていますが、まだデータベースを十分に解析できる状況になっていません。そういうことにしっかり取り組んで、これからお客さまが何を望み、どんなビジネスが求められるのかを探求していきたいと思います。

―― 場合によっては、グーグルやアマゾンと組んでしまうほうが早いかもしれません。

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西澤 もちろん、そういうケースも考えなければいけませんが、われわれにしかないリソースがあるのも事実です。何日入院したらいくら医療保険が下りるといった話はすべてAIが手掛けるようになるかもしれませんが、事故の査定やフェーストゥフェースの示談交渉などの部分はロボットでは難しいですし、全国津々浦々にネットワークを持っていないと充実したサービスは築けません。その点で、われわれには非常に大きな優位性があります。その優位性を保ったままデジタルの研究を進めることによって、グーグルやアマゾンよりも良いものを提供できると考えています。

―― グループとして介護など異業種に参入していますが、損保事業とはどのようなシナジーが考えられますか。

西澤 介護事業の買収については、私自身が新事業開発の役員として交渉に当たってきました。後任には、2〜3年は特にシナジーは考えなくてよいと言っています。当社が目指す「安心・安全・健康のテーマパーク」を作るための最低条件は、それぞれの事業がお客さまに自信を持って紹介できる品質を持っていることです。介護業界はいまだにレピュテーションリスクをはらんでいる未成熟な業界ですので、もっと安心・安全の部分を拡充していかなければいけません。デジタルを活用できる部分もあるでしょう。たくさんの現場を見てきた結果、われわれができることがあると確信しています。

 既存の損保事業には2千万人のお客さまがいるので、その中には介護を必要とされている方がたくさんいます。ただ、介護だけで2万人以上が働く事業体になっていくわけですから、従業員のためにも入居者のためにも、生産性や品質を高めることに注力するのが先決です。シナジーはその後で考えればよいと思っています。

 
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