経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

積極的な研究開発と海外戦略を軸に安心・安全な卵づくりで躍進―イセ食品

2019人材育成企業21

(『経済界』2019年11月号より転載) 

伊勢彦信氏

イセ食品会長 伊勢彦信(いせ・ひこのぶ)

1912年の創業以来、100年以上にわたって高品質な卵づくりを続けてきたイセ食品。徹底した品質管理と高い研究開発力で「機能性表示食品 伊勢の卵」や「森のたまご」など付加価値の高いブランド卵をはじめ、数々のヒット商品を生み出してきた同社は、積極的な海外戦略と商品開発でさらなる成長を目指す。

インドでの鶏卵事業を本格的にスタート

財務省の貿易統計によると、2018年の殻付き鶏卵の輸出量は5887トンで過去最高を更新した。前年比5割増と急拡大した背景には、世界的な日本食ブームによる卵の生食文化の広がりが挙げられる。加熱しなければサルモネラ菌などによる食中毒のリスクが高い海外の卵に比べ、国際的に見ても衛生基準が厳しく生で食べることができる日本の鶏卵ニーズは年々高まっている。

そんな鶏卵の販売で国内トップシェアを誇るのがイセ食品だ。親鶏や種鶏の育成から採卵、パッキング、配送まで全工程を自社で一貫して行う独自の「イセ インテグレーションシステム」で、安心・安全かつ高品質な卵を食卓に届けている。

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活動をサポートしているプレラ・ゴミチャンド・バドミントン・アカデミーの選手

アメリカや中国、ASEAN諸国などグローバル展開にも早くから取り組んできた同社は現在、インドでの鶏卵事業に注力している。伊勢彦信会長は「デリーNCRと南部のテランガーナ州でプロジェクトを進めており、農場建設の候補地が鶏卵農場として適しているかなどの調査を始めるところです。インドでの卵の消費量は日本人の6分の1程度ですが、当社の美味しい卵によって消費量が現在の倍になるだけで巨大な需要が生まれます」と語る。

国内の生産システムと同様に徹底した品質管理を行い、まずは1日当たりの生産量約50万個からスタート。軌道に乗れば、さらに生産拠点を増強する予定だ。

生鮮食品である卵は鮮度が命だが、地方の農村地帯ではインフラ整備がまだまだ十分ではなく、物流網の構築には不安が残る。そこで、自動車メーカーのスズキと合弁会社「イセ・スズキ・エッグインディア」を設立。スズキが専用の保冷車を開発し、新鮮なイセの卵をインド全土に流通させるという計画だ。

「インドでは田畑から収穫した農産物の3分の1近くが、産地からマーケットに出るまでに廃棄されています。食料自給率100%超とはいえ、餓死する人も多いなど貧富の差が極端なので、定温倉庫なども活用した食品流通の整備が必要です」

国内の人手不足に対応し海外人材を積極的に登用

一方、国内生産に目を向けると、あらゆる業界で人手不足が深刻化する中で、同社の生産現場でも労働者の高齢化が進んでいる。新入社員がイセ食品の精神「イセスピリット」を理解するための研修制度も充実しており、卵づくりにやりがいを感じる若者が毎年一定数入社するが、それでも賄えないため海外人材に活路を見いだしている。

「すでに現地での鶏卵生産がスタートしているベトナムで、ハノイ市の認可を受けた技能実習生の職業訓練校『イセヒューマンカレッジ』を10月に開設します。半年ごとに350人(年間700人)が日本語や衛生管理のカリキュラムを受講し、修了生を自社で受け入れるとともに、同じように人手不足に悩む国内企業への派遣も考えています」

また、16年開所のイセたまご研究所に続き、今年1月にはイセ食品 木更津研究所を設けるなど、鶏や卵に関する総合的な研究にも積極的だ。

「大きく儲かる業界ではないので、最近は世界的に鶏や卵の研究を行う企業が減っていますが、当社では東京大学や国立科学博物館、山階鳥類研究所と協力しながら研究を進めていきたい」と伊勢会長は意気込む。

そうした研究は着々と成果を生んでいる。7月から「機能性表示食品 伊勢の卵」を全国で発売。中性脂肪値を下げる機能があるEPAやDHAを豊富に含み「毎日の食事で無理なく健康を維持したい」「中性脂肪が気になる」といったニーズに応える商品となっている。

さらに新たなジャンルとして今春より「ISEシリーズ」を展開。1日3食の食事では不足しがちなBCAAアミノ酸やカルシウムといった栄養素を補うプリン味のエナジー飲料「Tamatein(たまテイン)」、筋肉の維持を助けるHMBや乳酸菌FK‐23が配合された卵入りゼリー飲料「EGG GYM(エッグジム)」など、イセの卵の素材を生かしながら健康な体づくりをサポートする商品だ。

「卵は加熱しすぎると固まってしまうので62度までで殺菌しています。しかし、この温度では残ってしまう雑菌もあるので、120度まで加熱しても液状を保つ技術を実用化しました。出荷時に徹底して殺菌できるのはイセの卵だけ。長持ちで食生活も便利になります。今後も卵を通じて人々の暮らしに貢献できる事業を展開していきたいですね」

会社概要
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設立 1971年6月
資本金 2,000万円
売上高 1,200億円(グループ全体)
所在地 埼玉県鴻巣市
従業員数 733人
事業内容 鶏卵・液卵の製造・販売
https://www.ise-egg.co.jp/
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