経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

【企画特集】復活する北海道~withコロナを生き抜く~


コロナショックは北海道の主要産業である観光業や第1次産業に深刻な打撃を与えた。緊急事態宣言が解除された10月以降、ようやく飲食店や観光地にも人の流れが増えはじめ、経済再生に向けて明るい兆しが見えてきた。本特集では北海道経済の現状と未来志向で動き出した各社の取り組みをレポートする。

北海道新幹線の札幌延伸と冬季五輪が大きなインパクト

 JR札幌駅の周辺地域では次々と大型の再開発事業が進行している。2030年度の北海道新幹線の札幌延伸と30年に開催される冬季五輪に札幌市が名乗りを上げていることもあり、一挙に再開発ブームが訪れている。

 中でも注目されるのが新しい札幌のランドマークとなりそうな「札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発事業」だ。札幌市やJR北海道が中核の事業組合を主体として建物は地下4階、地上46階、建て延べ床面積39万5千平方メートルである。ショッピング施設の「エスタ」と道路を挟んで隣接する駐車場の敷地をまたいで建設されるもので完成は30年の予定。商業ゾーンとホテル、バスターミナル、駐車場の他、オフィスフロアも整備される。高さは250メートルを超え、JRタワー(高さ173メートル)を越えて道内一となる見込みだ。同ビルの隣地には、北海道新幹線の札幌駅の駅舎が建設されるため、新ターミナルは東京方面から来る乗降客で大きな賑わいを見せるだろう。

 ここから南西に約100メートル離れている旧札幌西武跡地では、ヨドバシホールディングスを代表企業とする準備組合が主体となった大型再開発事業が進展している。メーンのビルは地下6階地上35階建てで延べ床面積は21万200平方メートル。こちらも商業施設の他にオフィス、ホテル施設が整備される。

 この2棟を筆頭に札幌駅周辺から大通り公園、すすきの駅に至る中心市街地では、向こう10年以内に大小10以上の再開発事業が計画されており、すべてが竣工したのちは札幌の街並みが大きく様変わりすることになる。

 地元では建築ラッシュの特需に期待感が高まっているが、オフィスの大量供給でコストに見合った賃料を稼げるのか、集客力のある商業テナントを誘致できるかどうか、懸念する声もある。ある不動産会社の幹部は「コロナ収束後のホテルの稼働率やオフィステナントの誘致は景気次第ですね。オフィスについては数年前、一部の駅近新築ビル以外、賃料は低めだったので安心はできません。加えてテレワークが普及しつつある中で需要がどうなるか不透明な要素があります」と指摘する。

 商業施設でもリアルからオンラインへの流れが一層、加速している中で、地元の小売業は苦戦を強いられており安閑としてはいられない。

北海道は体験型アドベンチャーツーリズムの目玉スポットに

 札幌市は地方中核都市の中で福岡市と並んで成長してきた地域だが、人口動態を見れば安心できない。生産年齢人口(15歳から64歳)で見れば、15年は124万人だったが、30年には112万人になるとの予測がある。「札幌が大都市といわれるようになったのは1972年の冬季五輪に合わせて道路整備や再開発事業が進んだからです。その後は国が発注する大型土木工事の恩恵もありました。でも、国の財政を考えれば将来にわたって公共工事が続くかどうか不透明です。その意味で30年の北海道新幹線の札幌延伸や冬季五輪招致が成功すれば大きなインパクトになります」(前出不動産会社幹部)

 北海道ではウィズコロナ、ポストコロナ時代の経済再活性化策として昨年12月、中小企業対策など4つの指針を示した。その中に攻めの施策として「北海道ブランドの発信力のパワーアップ」がある。北海道はすでに公式のアンテナショップを国内外で展開しているが、新たに羽田空港や大阪の「あべのハルカス」に出店。さらに札幌市と提携してASEAN各国で道産品の販路拡大を加速するオンライン商談を実施した。

 また、9月にはアジアで初めてオンラインでアドベンチャートラベル・ワールドサミットが北海道で開催された。アドベンチャーツーリズムは欧米の富裕層に人気がある長期滞在型かつ体験型の観光で、地元への経済波及効果が大きい。道内には6つの世界遺産があり、歴史を学び、アクティビティを楽しみながら周遊できるプランニングが可能だ。23年にはリアルでのワールドサミット再誘致が内定、新しいスタイルの観光スポットとして期待されている。

 ウィズコロナでは新しい働き方としてテレワークが普及し、事業所を地方に分散させる動きが顕著になり、さらにはワーケーションにも注目が集まっている。その観点でみれば、豊かな自然環境と都市機能を併せ持った北海道は最も魅力的な地域として評価が高まるだろう。

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