自動車産業・産業機械の世界的サプライヤー、シェフラーグループの日本法人で2006年イナベアリングとエフ・エー・ジー・ジャパンが合併して設立。国内4拠点で自動車エンジン、トランスミッション、シャーシなど精密部品、産業機械事業を展開する。文=榎本正義

 

四元伸三・シェフラージャパン代表取締役・マネージング・ディレクタープロフィール

四元伸三氏

よつもと・しんぞう 1954年岡山県生まれ。77年早稲田大学理工学部卒業。同年神戸製鋼所入社、85~89年までドイツ駐在。94年日本ミシュランタイヤ入社。2006年TRWオートモーティブジャパン社長。12年4月現職に就任。

 

シェフラー創業以来のモノづくり精神とは

 

グローバル展開する欧州のファミリー企業

 INA、LuK、FAGという3つのブランドを全世界で展開するシェフラーグループ。約9万2千人の従業員を擁し、ヨーロッパ最大の同族所有の工業メーカーのひとつで、2017年のグループ売上高は140億ユーロにのぼる。

 その日本法人として1987年に設立されたシェフラージャパン(旧イナベアリング)は、自動車産業をはじめ各種産業機械メーカーに数多くの製品を供給している。

 主力の自動車事業では、エンジン、トランスミッション、シャーシなどを構成する精密部品を開発製造。主要製品は、クラッチシステム、トランスミッション部品、トーションダンパー、電気駆動装置などで、内燃エンジン搭載車のドライブトレインだけでなく、ハイブリッドカーや電気自動車にも適合する部品やシステム・ソリューションを取り揃えている。

 産業機械事業では、転がり軸受やすべり軸受、リニアテクノロジー、メンテナンス製品など、高精度・高耐久ベアリングなどの製品を、さまざまな産業分野に供給している。

 この日本法人を2012年から率いているのが四元伸三代表取締役・マネージング・ディレクターだ。

 「シェフラーグループは、約25%の株式を公開していますが、議決権があるのは残りの株式を保有しているシェフラー家だけなので、グローバルに展開するファミリー企業と言えます。顧客は約1万2千社で、年平均で約5%成長を続けています。未来のモビリティ社会のために、環境に優しい運転、都市交通、都市間交通、エネルギー循環の4分野に取り組んでいます。世界に工場が75、R&Dセンターが17あり、日本法人はそのR&Dセンターのひとつです。世界に従業員は約9万人いますが、日本には約300人、うち約10%は外国籍人材です。シェフラーは特定の自動車メーカーに依存していないので、新規の技術を出さないとビジネスになりません。このためドイツでの特許出願件数は年間約2300件で、常にドイツでの特許登録件数でベスト5に入っています」

創意工夫を重ねるイノベーション重視の伝統

 第二次世界大戦後の46年、ドイツでシェフラー兄弟がINA社を創業。連合国から金属加工は禁じられていたため、当初は木製のトロッコを製造し、敗戦で焼け野原となった祖国復興のために雇用を生み出す事業を興したのが始まりだ。

 89年に金属加工が許可され、針状ころ軸受の作成に着手。それまでの軸受はボールを使ったものだったが、これは多くの金属を使わなければならず、少ない材料で同じ荷重を支えられる構造として、この形状が考えられた。

 既存のものよりコンパクトで軽いため、フォルクスワーゲン社ビートルにも採用されるなど高い評価を受けている。製作には非常に手間がかかるが、効率良く作るための技術を開発し、創意工夫を重ねるイノベーションを大切にしたモノづくり精神は、創業以来の伝統だという。

 

シェフラーの日本における今後の取り組み

 

日本発の技術開発を拡充へ

 「外資系企業というと、景気が悪くなるとリストラといったイメージがあるかもしれませんが、シェフラーは創業の目的自体が雇用を生み出すところから始まっているように、人をとても大事にしています。ドイツ企業は世界市場でトップ3に入る“隠れチャンピオン”が結構あります。ドイツが行っている産業クラスター政策による産学連携の仕組みと、研究機関が非常に充実しているためです。また世界5大メッセと呼ばれる専門展示会のうち4つがドイツで行われているなど、優れた技術が企業に蓄積される背景があります」

 「日本法人は、これからも引き続き販売計画を拡大できる見込みで、今後日本拠点は研究開発の中核になることが予想されます。近年日本主導のプロジェクト件数は年々増加。12年は0%だったものが、17年には69%まで伸びています。世界的に加速している自動車の電動化を大きなビジネスチャンスととらえ、提案活動を積極化するとともに、日本発の技術を増やすため、開発体制を拡充しています。燃費と同様に電費、少ない電気で効率良く走るために摩擦抵抗を少なくするなど新開発と同時に、エネルギーのできるところから車が走るところまでをトータルで考える環境負荷低減にも取り組んでいます。また電気自動車のF1といわれるフォーミュラEに最初から参戦し、昨年は初優勝の栄誉に輝きました」

シェフラージャパン

環境に優しい運転、都市交通、都市間の交通、エネルギー循環のイメージ

四元社長が導くシェフラージャパンの方向性とは

 四元氏は神戸製鋼所を振り出しに、ミシュランの日本法人である日本ミシュランタイヤに転じ、日系自動車メーカーとのグローバルなビジネスの開発を担当。その後、米国の自動車部品メーカー大手TRWの日本法人であるTRWオートモーティブジャパンの代表取締役に就任。日本の自動車メーカーに対する革新的な技術や製品の開発体制の強化を推進した後、12年からシェフラージャパンの代表取締役を務めている。

 「神戸製鋼所時代の上司は、私の人生観やその後の生き方に大きな影響を与えてくれました。その影響を受けてドイツ駐在員になった4年半の経験で学んだのは、意見が違うときは、新しいことを発見できるチャンスであり、異質なものが組み合わされて新しいものが生まれるということです。私が今、強く意識しているのは、日本と欧州の懸け橋になること。両者の良いところを掛け合わせ、新しい技術を開発することこそがやりがいと考えています。責任ある決断と、メンタル面のバランス保持のため、引きずることのない気持ちの切り替え・持ち方を心掛けています。加えて、自分への戒めとして、人の話を最後まで聞く、いろんな人の意見を聞くことを心掛けています」

 シェフラーはユーザーイベント「シェフラーシンポジウム」を78年から開催しており、日本でも昨年2回目を行っている。将来に向けた課題を議論する場と位置付け、人と車の未来を見据えた取り組みの一環だ。

 グローバルな企業で足跡を残してきた四元氏。シェフラー製のベアリングのように、世界を円滑に回す取り組みに拍車を掛ける意気込みだ。

 

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